Monthly Archives: 2月 2013

本の紹介172 「大発見」の思考法(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます
__←先日、新しいスタッフの採用面接のためスタッフ全員に休日出勤をしてもらいました。

そのため、お昼は、みんなでホテルセンチュリー内の「ラ フルール」にごはんを食べにいきました

ビュッフェのため、食べ過ぎてしまいます。午後は仕事になりません

静岡では、ここのカレーが一番おいしいと思います。カレーだけ食べてもいいくらいです。

今日は、午前中は、建物明渡の裁判が1件と顧問先会社との打合せが入っています。

午後は、外部での法律相談、裁判の打合せが2件入っています。

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は本の紹介です。
「大発見」の思考法 (文春新書)
「大発見」の思考法 (文春新書)

山中教授と益川教授の対談形式の本です。

ノーベル賞受賞者がどのようなことを考えているのか、というのはとても興味をそそられます。

お二人の考え方がばんばん出ていて、とてもおもしろいです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

はたから見たら、僕の人生は、遠回りで非効率に見えるかもしれませんし、無駄なことばかりやっているように思えるかもしれません。もっと合理的な生き方が出来たんじゃないの?と思われるかもしれませんが、そうやって回り道したからこそ今の自分があるんじゃないかと思います。」(78頁)

もちろん、一つのことにずっと取り組むことも美徳だと思います。でも、無駄を省いて全てを合理性で突き詰めた生き方をしていると、いつか壁にぶつかるんじゃないかな。僕の研究室を見てもらえればわかるけど、物理の本なんてほんの少ししかないの。・・・いつも僕は目の前にある面白いことで遊んでいるだけなんです。」(81頁)

最初の発言は、山中教授のもので、次の発言は、益川教授のものです。

周りの人は、成功した結果しか見えないため、その結果が出るまでの過程がいかに遠回りであったか、いかに非効率的であったかはわかりません。

だからこそ、成功者を見ると、「この人は、もともと天才だったんだ」「僕は天才ではないから無理だ」と思ってしまいがちです。

でも、多くの成功者は、何の失敗もなく、一直線にゴールにたどり着いてはいません。

何度も失敗を繰り返し、その都度、何かを学び、軌道修正をしながら、少しずつ、ゴールにたどり着いています。

課題を克服できる人は、天才ではなく、課題を克服する方法を知っている人なんだと思います。

常に課題は一直線には克服することはできないこと、何の失敗もせずに克服することはできないことを知っている人は、失敗しても、そう簡単にはあきらめません。

そもそも課題を克服する過程は常にそのようなものだとわかっているからです。

たいていのことは、自分からあきらめなければ、克服できることを知っているからです。

解雇95(コアズ事件)

おはようございます。

さて、今日は、営業開発部長の降給・降格処分と解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

コアズ事件(東京地裁平成24年7月17日・労判1057号38頁)

【事案の概要】

Y社は、警備業務等を業とする会社である。

Xは、平成20年2月頃、Y社に採用された後、営業開発部長として就労してきたが、降給処分を受け、営業開発部長から降格された後、解雇された。

Xは、上記降給、降格の各処分および解雇がいずれも無効であると主張して、Y社を相手として提訴した。

なお、Xは、本件訴訟係属中に、破産手続開始の申立をしたため、途中から破産管財人が訴訟手続を受継した。

【裁判所の判断】

給与の減額は無効

第一営業部長から「独任官」と称する地位への降格は無効

解雇は無効

【判例のポイント】

1 賃金が、労働者にとって最も重要な権利ないし労働条件の1つであることからすれば、上記給与規程の定めが存するとはいえ、その変更を、使用者の自由裁量で行うことが許容されていると解することはできず、そのような賃金の減額が許容されるのは、労働者側に生じる不利益を正当化するだけの合理的な事情が必要であり、そのような事情が認められない以上、同賃金減額は無効になると解するのが相当である。そして、そのような賃金減額の合理性の判断に当たっては、減額によって労働者が被る不利益の程度、労働者の勤務状況等その帰責性の有無及び程度、人事評価が適切になされているかという点など、その他両当事者の折衝の事情を総合考慮して判断されるべきであると解される。

2 ・・・以上を総合するに、まず、本件給与減額1については、その減額幅は30万円を超えるもので著しく大きく、これによりXの受ける不利益には甚大なものがあるといわざるを得ない。他方、Xの帰責性という点に関し、Y社主張にかかる10名の営業部長の採用という業務については、それが実現されなかった場合に給与減額等につながることが合意されていたとはいえない上、実質的にも、Y社において、給与減額の理由とすることは明らかに不合理である。また、Xの勤務状況、勤務態度等についてみても、Y社主張の客観性が担保されているとはいえない状況であるのみならず、恣意的な人事が行われている状況も窺われることからすれば、いずれも、かような多額の給与減額の根拠とはなり得ないものである。
なお、Y社は、Xが本件給与減額1の後、約1年以上も明確な異議を申し立てていないことを挙げて、同Xが同給与減額に同意していた旨主張する。仮に、かようなXの態度をもって同意と評価することができるにしても、同給与減額が大幅な減額である以上、それなりの合理的な事情に基づくのでなければ、真意に基づく同意があるとは推認し難いところ、前記のとおり、そのような合理的な事情は認められないのであるから、これを真意に基づく同意であると認めることはできない
これらの事情によれば、本件給与減額1は無効と認めるのが相当である。

3 職位の引下げとしての降格については、使用者は、人事権の行使として、広範な裁量権を有するが、その人事権行使も、裁量権の逸脱、濫用に当たる場合には無効になると解される。
これを本件についてみるに、Xは、平成22年4月に、D本部長が「独任官」と称する部下のいない地位に降格されているが、Y社が特命事項と称する10名の営業部長の採用を実現できなかったことが降格の理由となり得ないことは明らかであるし、Xの勤務状況は、Y社が主張するほどに劣悪であったとは認められず、降格に値するような確たる非違行為があったわけでもないこと、Y社において恣意的な人事が行われている実態が窺われることなどに照らすと、Xに対する本件降格処分については裁量権の濫用があるというべきであって、これを無効と認めるのが相当である

4 以上にみたとおり、Xの本件特命事項の不履行、同Xの勤務成績、勤務状況の低劣さといった主張により、降給処分及び降格処分の有効性を基礎付けることはできないことからすれば、いわんやそれよりも重い処分である解雇の有効性を基礎付けることはできないのは明らかである。したがって、本件解雇は無効である。

給与減額については、それを使用者の裁量で行うことができる規定があったとしても、相当な合理性がなければ認められません。

また、この裁判例は、Y社において恣意的な人事が行われている実態が窺われることを間接事実として評価しています。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介171 突破する力(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます 3連休も終わり、また一週間が始まりましたね。今週もがんばっていきましょう!
__←先日、いつもお世話になっている社長と一緒に「博」に行ってきました

写真は、とらふぐの白子です。 絶品としか言いようがありません。

いつもきんきの煮付けの写真になってしまうので、今回は別の写真ということで。

親方、おいしゅうございました。

今日は、午前中は、裁判の打合せが1件と顧問先会社でのセミナーが入っています。

午後は、交通事故の裁判が1件、顧問先会社の打合せ、臨時株主総会が入っています。

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は本の紹介です。
突破する力 (青春新書インテリジェンス)
突破する力 (青春新書インテリジェンス)

現東京都知事の猪瀬さんの本です。

サブタイトル「希望は、つくるものである

いいですね。 その通りだと思います。

なんとなく買ってみた本ですが、内容は、すばらしいです。 

猪瀬さんの20代の話などが書かれています。

みんな一緒なんだなと感じます。結果を出そうともがいている様子が伝わってきます。

おすすめです!

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

当時、駆け出しのライターたちは、よく新宿のゴールデン街で飲んでいた。編集者に誘われて、僕もときどき顔を出した。そこでは作家のタマゴたちがムキ出しの夢を語り、お互いを刺激し合っていた。しかし、場がどれほど盛り上がっても、夜10時には店を出た。ふたたび仕事場に戻り、自分と向き合うためだ。
みんなで群れて夢を語れば、そこになんとなく希望が存在しているように見える。しかし、それは幻にすぎず、一夜明ければ酔いとともに消えていく。希望は、バーカウンターなどにありはしない。ある種の孤独を抱え、徹底的に仕事と対峙した先に、ようやく見えてくるものなのだ。
」(4頁)

猪瀬さんは、お酒の席を適当なところで切り上げる習慣はいまも変わっていないそうです。

猪瀬さん、さすがですね。

私も、だいたい一次会で切り上げ、23時には寝ています。

ただ、猪瀬さんとは違い、ふたたび仕事場に戻り、自分と向き合うためではなく、単に眠たいからです(笑)

完全な朝型人間なので、夜はすぐに寝てしまいます。

人それぞれ違うとは思いますが、私は、朝の方が断然、仕事がはかどります。

朝は、まだ脳みそが疲れていないので、考えなければいけないいわゆる「重たい仕事」は朝やるに限ります。

というわけで、最近では、一次会のみ参加するようにしています。

不当労働行為61(東洋エージェント事件)

おはようございます。 

さて、今日は、誠実交渉義務に関する命令を見てみましょう。

東洋エージェント事件(中労委平成24年9月5日・労判1057号173頁)

【事案の概要】

Y社は、従業員約300名をもって、道路交通法に基づく放置車両の確認および標章の取り付けに関する事務等を行っている会社である。

平成22年3月、組合はY社に対して、組合事務所の貸与、組合掲示板の設置、基本日給の引き上げ等8項目を要求して団交を申し入れた。

これに対して、Y社は、十分な対応をしなかったため、組合は、救済申立てを行った。

初審は、Y社に対して、誠意をもって団交に応じることと、文書手交を命じた。

Y社はこれを不服として、中労委に再審査を申し立てた。

【労働委員会の判断】

Y社が団交において誠実に対応しなかったことは不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Y社は、組合事務所の貸与及び組合掲示板の設置に応じられない理由として、組合事務所の貸与及び組合掲示板の設置が労組法7条3号に抵触するものであって、利益供与に当たるという考えに固執し、一貫して組合事務所の貸与及び組合掲示板の設置を検討する姿勢をみせなかったものといえる。
しかしながら、最小限の広さの組合事務所の貸与が、労組法7条3号で規定する利益供与に当たらないことは同号ただし書から明らかである。また、会社の監視事業部長名の文書において同条3号を示していることからすれば、Y社は同号ただし書についても了知していたものと認められる
・・・以上のとおりであるから、組合の要求事項のうち、組合事務所の貸与及び組合掲示板の設置については、Y社は、これを設置・貸与することで生じる支障等を具体的に説明していないのであり、組合の要求に応じられないとする理由を十分に説明したとはいえず、かかるY社の対応は不誠実団交に当たる。

2 Y社が、賃金引上げができない根拠として、経費や収支の問題があることを示唆したことは認められるものの、経費や収支に関して、組合に対して一切説明していない
団交において使用者は、自らの主張の根拠を具体的に説明し、開示し得る客観的な資料を提示するなど、組合の理解を得るべく誠実に団交に応じる必要があるというべきであるところ、Y社が主張するような組合が求める資料開示による企業秘密の漏えいの懸念が、客観的にみて根拠を伴ったものであると認めるに足る証拠はない仮に当該懸念があり、確認事務の性質から経費の内訳が開示できないというのであれば、そのことについて組合の理解を得るべく、具体的に説明を行うべきであるのにもかかわらず、Y社は、経費にかかわるすべての情報が確認事務に関する守秘義務の範囲に入ることの根拠を十分に説明していない。
以上のことからすると、基本日給の引上げを議論するに当たり、Y社は、賃金体系について十分説明していない上に、正当な理由なく就業規則の提示を拒否しているのであるから、このようなY社の対応は不誠実団交に当たる。

最小限の広さの組合事務所の貸与については、不当労働行為(利益供与)にあたらないことは条文上明らかです。

使用者側がどこまでの説明をしなければならないのかは悩ましいところですが、上記命令のポイント2は、参考になるのではないでしょうか。

使用者側としてはなかなか理解しづらいかもしれませんが、法的な判断はこのような感じになります。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介170 99%無理な仕事をやり切る方法(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます
__←先日、事務所のスタッフと一緒に「リボン」に行ってきました

写真は、てんこ盛りのホタルイカです。 別に大盛りを注文したわけではありません。

いつ行っても安くておいしいです!! 超おすすめです。

今日は、午前中は、新規相談が2件入っています。

午後は、浜松の裁判所で労働事件の裁判が2件、離婚調停が1件入っています

夜は、そのまま浜松で遺言作成に関する新規相談が入っています

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は本の紹介です。
99%無理な仕事をやり切る方法 -孫正義から学んだ仕事術-
99%無理な仕事をやり切る方法 -孫正義から学んだ仕事術-

元ソフトバンク社長室長の本です。

孫さんから学んだ仕事術が書かれています。

孫さんの仕事のしかたを垣間見ることができて、とてもおもしろいです。

この本を読んで思ったのは、やはり、仕事の進め方、軌道への乗せ方を知っている人は強いということです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

孫正義が使っている手法の中に、私が名付けた『わらしべ理論』というものがあります。
わらしべ長者の話というのはご存知の方も多いと思いますが、最初はわらを交換するところからはじまって、最後は家、屋敷になるという話ですね。交換するたびに、だんだん大きなものになっていくわけですが、孫正義の経営手法もそうです。
ナンバーワンになるために、まずは土俵を小さく設定します。土俵を小さくしても、ナンバーワンであることで、さまざまな経営資源を集めてほかの企業と提携したりと、もう少し大きな事業ができるようになります。大きくなった事業で再びナンバーワンになれば、そこからもう一つ大きなものにしていけるというのが『わらしべ理論』です。
」(29頁)

私は、最初は小さく始めるというのは、ビジネスの王道だと思っています。

小さく初めて、徐々に大きくしていく、というのが健全です。

最近では、あまり大きくしすぎないということにも留意しています。

ちょうどいい動きやすさみたいなものを追求しています。

孫さんの「ナンバーワンになるために、まずは土俵を小さく設定する」というのも、まさに同じです。

風呂敷を広げすぎない。

特定の小さな分野でまずは1番を目指すことから始めるのが近道ではないでしょうか。

何をやるかというよりも、何をやらないかだと思います。

管理監督者29(ピュアルネッサンス事件)

おはようございます。

さて、今日は、退職した元部長からの時間外割増賃金・減額賃金差額請求に関する裁判例を見てみましょう。

ピュア・ルネッサンス事件(東京地裁平成24年5月16日・労判1057号96頁)

【事案の概要】

Y社は、美容サロンの経営、化粧品等の販売を目的とする会社で、ネットワークビジネスの運営、健康食品の製造販売、美容サロンの経営またはフランチャイズ、化粧品等の美容商品の製造販売を行うA社グループのグループ会社である。

Xは、平成17年11月、Y社に管理職(部長)として入社し、Y社が企画する化粧品販売イベントの運営等に従事してきた。

Xは、平成18年5月にY社の取締役、19年6月に常務取締役、20年12月に専務取締役に選任された。

Xは、21年9月に退職した後、Y社に対し、時間外割増賃金および減額賃金の差額分を請求した。

【裁判所の判断】

1 Xは管理監督者に該当する。
→深夜割増賃金部分約98万円の支払いを命じた

2 減額賃金の差額5万円の支払いを命じた

3 付加金として除斥期間が到来していない時間外手当と同額の約92万円の支払いを命じた

【判例のポイント】

1 もともとY社は、その規模に比して取締役の数が不自然に多く、Xには終始一貫して基本給と役職手当という名目で対価が支払われており、雇用保険にも継続して加入していることに加え、提出された証拠だけからはXの報酬額が変更される都度、取締役会の決議がなされたことは認められない。また、Y社の取締役会、役員会議、経営会議においては、具体的な討論がなされたような形跡がなく、実質的なオーナーとみされるB会長の指示を伝達する場にすぎなかったことが認められるし、Xが取締役に選任された前後においてその担当する業務について具体的な変更があったことは証拠上見当たらない。そうすると、Xは、基本的にB会長の指示や許可を受けて業務に従事することが多かったものといえる。また、Xが一度Y社を退社した上で取締役に選任されたような事実も認められない
したがって、Xは、Y社との関係において、取締役としての地位を有していたが、労働者であったと認めるのが相当である

2 労基法41条1項2号の管理監督者とは、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者をいうとされる。
管理監督者に該当するか否かは、(1)事業主の経営に関する決定に参画し、労務管理に関する指揮監督権限を認められているか否か、(2)自己の出退勤をはじめとする労働時間について裁量権を有しているといえるか否か、(3)一般の従業員に比しその地位と権限にふさわしい賃金上の処遇を与えられているか否かを実態に即して判断することになる。

3 Xは、経営会議等の重要な会議に参加しており、実情は、B会長が決めた方針の伝達が行われることが多かったとはいえ、取締役という地位で参加しており、サロンの開設や従業員の採用など個別的に重要な業務の担当を任されるようになっている。
Xは労務担当の取締役とされていたが、従業員の採用や人事考課の権限等、労務管理についての一般的に広範な権限が与えられていたわけではない。しかしながら、Y社は規模の小さい個人企業であるため、人事考課自体が行われていたのか疑問であり、また採用にあたってもB会長に決定権があったとしても必ずしも不自然とはいえず、その後、Y社の業務が拡大するとともに、従業員の採用について、Xに権限が与えられるようになっている。また、Xは、従業員やスタッフの勤務時間についての集計や、訂正の確認などを行っており、他の従業員などの勤務時間に関する労務管理の権限がある程度与えられていたものといえる
Xは、タイムカードによって厳格な勤怠管理が義務づけられていたとはいえず、タイムカードも本来許されていない手書きでの修正が許されたり、他の従業員とは異なる扱いがなされるなどしているし、パーティーや懇親会、麻雀などへの参加時間も労働時間としてタイムカードが打刻されている。また、Xの主張する業務量に比して、労働時間が不自然に長時間となっており、勤務時間中に業務以外のことをしていた事情もうかがえることからすると、Xについては、厳密な労働時間の管理がされていたとはいえず、労働時間について広い裁量があったといえる。
そして、Xは、基本給として月額35万円、役職手当として月額5万円から10万円の給与をもらっており、一般従業員の基本給と比べて厚遇されていたことは明らかである。
以上からすると、Xは、労基法41条2号の管理監督者に該当するとみるのが相当である。

4 Xは、労働者ではあるが、管理監督者に該当するため、その請求できる時間外手当は深夜割増賃金に限られる。

5 Xは、労働者として労基法の適用を受ける地位にあるから、Xが、管理監督者に該当するとしても、Y社において深夜割増賃金に相当する時間外手当の支払いを免れることはない。それにもかかわらず、Y社は、Xに対し、時間外手当の支払を一切していない。こうした事情に加えて、Y社が労基法の適用を免れようとして労働者を取締役 に選任するといった意図が認められる等の本件の実情を照らし合わせると、本件については、付加金として、労基法114条ただし書きの除斥期間が到来していない平成20年1月分ないし平成21年9月分の時間外手当と同額の付加金の支払を命じることが相当である。

上記判例のポイント1では、取締役の労働者性が争点となっており、これを肯定しています。

事実認定の方法について参考になります。

また、この裁判例では、珍しく管理監督者性が肯定されています。

なかなか普通の会社で、管理監督者であることを前提として、割増手当を全く支払わないという労務管理の方法は、リスクが非常に高いことは間違いありません。

それゆえ、あまり、おすすめはしません。

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。

本の紹介169 「圧倒的利益」を生み出すキュレーション・マーケティング(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます
__←先日、住宅会社の社長と両替町の「入船鮨」で新しい試みについて打合せをしました

このお店は、個室があるので、打合せをするにはいいですね。

きっとおもしろいコラボができると思います! 

今日は、裁判の打合せが5件入っています。 久しぶりに裁判がない1日です。

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は本の紹介です。
「圧倒的利益」を生み出すキュレーション・マーケティング―独自性を創出する10の視点
「圧倒的利益」を生み出すキュレーション・マーケティング―独自性を創出する10の視点

最近、よく「キュレーション」という言葉を耳にしますが、この本では「価値の再構築」という意味で使っています。

一般的には、集めた情報をつなぎ合わせて、新しい価値を作り出すみたいな意味なのでしょうか。

よくわかりません。

この本のいいところは、発想を変えることの大切さ、独自性を目立たせる方法をさまざまな成功例を通じて教えてくれているところです。

とても参考になります。

私がこの本を読んで改めて感じたのは、「切り口、角度」の重要性です。

ほんの少しの工夫で結果は大きく変わってくることがよくわかります。

大切なのは、異なる業界の「キュレーション」の例から「切り口、角度」を読み取り、自分の業界に応用することのできる力とそれを実行に移す力を持つことです。

やはりここでも「とりあえずやってみる」という精神が重要なんでしょうね。

解雇94(長崎県公立大学法人事件)

おはようございます。 また一週間が始まりましたね。今週もがんばっていきましょう!!
__
←「いいことばんく2」が完成しました!

ほしい方は事務所までお越し下さい。

さて、今日は、大学教授が勤務時間中に企業経営に当たったことを理由とする懲戒処分に関する裁判例を見てみましょう。

長崎県公立大学法人事件(福岡高裁平成24年4月24日・判タ1383号228頁)

【事案の概要】

Xは、Y大学法人が運営する県立大学に勤務する教授である。

Xは、当時、県関係者の支援により設立されたベンチャー企業の代表取締役となった。

Y大学法人は、Xが大学の勤務時間内に必要な許可等を得ずにその経営に当たったことを理由に停職6月の懲戒処分に付した。

これに対し、Xは、本件懲戒処分の付着しない労働契約上の権利を有することの確認等を求めた。

なお、第1審は、本件懲戒処分は無効と判断した。

【裁判所の判断】

控訴棄却
→懲戒処分は無効

【判例のポイント】

1 本件懲戒処分の理由は、Xの多数かつ長時間に及ぶ無断欠勤及びY大学法人理事長がXに対し兼職従事の実施状況の報告を求めたにもかかわらずXはこれに従わなかったことであるところ、前者の無断欠勤については、その回数及び時間の程度が、本件就業規則47条所定の懲戒の種類の選択及び減給あるいは停職が選択された場合の金額あるいは期間を定めるに際し重大な影響を与えることから、その認定に際しては、Y大学法人が主張する各欠勤日ごとに、その有無、時間及び理由について、証拠並びにY大学法人の反論及び反証を踏まえた慎重な検討を行うことが必要である。

2 ・・・以上認定した事実によれば、Y大学法人は、Xの欠勤を理由とした本件懲戒処分を行うに際し、上記欠勤の具体的内訳(欠勤の日数、各日の欠勤時間)及びこれを検証することのできる資料を交付していないことに加え、弁明を行う日の通知から弁明の実施までわずか3日しかないことに鑑みれば、Xが独自に資料を入手するなどして、Y大学法人が主張する欠勤状況の正確性についての検討及び反論をすることはできなかったことが認められ、これがXにおける防御活動の妨げとなることは明らかである
そして、上記のとおり、欠勤を理由とした懲戒処分においては、欠勤の日数及び時間の程度が、本件就業規則47条所定の懲戒の種類の選択及び減給あるいは停職が選択された場合の金額あるいは期間を定めるに際し重大な影響を与えることからすれば、Y大学法人がXに対して行った本件懲戒処分に至る手続のうち、Xの欠勤の認定には、重大な瑕疵があり、乙8あるいは乙38記載の欠勤日数を、そのまま本件懲戒処分の相当性の判断の基礎とすることは許されないというべきである

3 ・・・以上を前提に本件懲戒処分の相当性について検討するに、本件懲戒処分における停職は、懲戒解雇に次ぐ重い処分であり、6か月という期間は最長期間である。そして、Xに対し停職処分が行われた場合には、処分それ自体によって同人の法的地位に一定の期間における職務の停止及び給与の全額の不支給という直接の職務上及び給与上の不利益が及び、将来の昇給等にも相応の影響が及ぶこと、同人の研究活動に重大な支障を来すことになることからすれば、その実施は慎重になされるべきものである。
すると、(1)バイオラボ事業は、長崎県及びY大学法人の並々ならぬ意向により開始されたものであり、Y大学法人における勤務時間の管理は形骸化していたことと併せると、Xにおいて勤務時間の振替申請や休暇届等の必要な手続を怠ったことについて、その全てをXの責任とするのは相当ではないこと、(2)Y大学法人主張の欠勤数をそのまま本件懲戒処分の前提とすることは許されないこと、(3)中国渡航による終日欠勤については、合計日数は59日となるものの、本件懲戒処分の対象となった平成15年10月から平成20年11月における年平均渡航日数は12日程度に過ぎないことに加え、(4)Y大学法人関係者は、本件懲戒処分後もなお、Xの欠勤による大学業務への支障は生じていなかった旨長崎県議会で答弁していること、他にXの欠勤により大学業務について相当な支障が生じたことを認めるに足る証拠はないことからすれば、文書提出についての職務命令違反を考慮しても、Xについて停職とすることは重きに失するというべきである。

本件は、解雇事案ではなく、停職処分ですが、一応解雇のグループに入れておきます。

控訴審でも、第1審同様に、懲戒処分は無効であると判断しました。

ちなみに、第1審は、大学関係者によるベンチャー企業創設に対する当時の県知事の意向、大学関係者の言動、会社におけるXの地位・役割、大学の勤務時間内に行われた会社に関する行事に大学関係者が多数回参加していたこと、Xの勤務時間内の兼業についてY大学法人は注意・警告をしなかったこと、勤務時間について、大学が実態として裁量労働制と同様の運用をしていたことを指摘して、本件時間内兼業について黙示の承認がなされていたという理由により、懲戒処分を無効と判断しました。

これに対し、第2審は、Y大学法人の黙示の承認については認めませんでした。

参考にすべきは、上記判例のポイント2の手続面に関する判断です。

懲戒処分を行う際は、手続面にも留意して慎重に行う必要があります。

是非、参考にしてください。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介168 想定外(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます 今週もあっという間に過ぎていきましたね。土日もばりばり働きますよ。
__
←先日、いつもお世話になっている社長と「南大門」に行ってきました

写真は、「特選特上ロース」です。いつもは注文しないページにのっています(笑)

並でも十分おいしいのですが、今回は、「上ロース」と「特選特上ロース」の食べくらべをしてみました。

やはり、レベルが違いました。値段の差だけのことはあります。 ご馳走様でした。

今日は、午前中は、沼津の裁判所で刑事裁判です

午後も、そのまま沼津で、労働事件の裁判が1件あり、その後、富士の顧問先会社での打合せが入っています。

夜は、新規相談が2件入っています。

今日から2月が始まりますね。 今日も一日がんばります!!

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さて、今日は本の紹介です。
想定外 なぜ物事は思わぬところでうまくいくのか
想定外 なぜ物事は思わぬところでうまくいくのか

意思決定のパラドックスについていろいろな例をあげて述べられています。

どこかを目指すなら、反対方向へ進むこともひとつの選択肢だ」と述べています。

非常におもしろい角度で物事を捉えており、納得する部分がたくさんありました。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

行動の結果は自然現象であれ、人為的なものであれ、相手の反応次第であり、予測もできない。われわれを取り巻くシステムは、複雑過ぎて人間の理解の範囲を超えているのだ。さらに、そうした問題、そしてその将来について必要な情報を手に入れることも不可能である。そんな環境下で満足のいく対応をするには、単に行動するしかない。『計画を実行する』では無理だろう。ベストな結果とは回り道によって得られるものであり、結局は同じことのくり返しや環境への適応、つまり、実験と発見の連続するプロセスの帰結である。」(244頁)

なんかここまで言ってくれると気持ちがいいですね(笑)

著者は、「ビジネスチャンスは偶然の産物なのだ」(205頁)と言い切っています。

結局のところ、大切なのは、綿密な計画を立てることでも、計画に忠実であることでも、一貫性を保つことでもないようです。

大切なのは、変化する状況に柔軟に対応すること、小さい失敗をしても、回り道をしても、めげずに前に進むことなんだと思います。

もしくは、始めから、「目標を達成するためには、必ず途中でうまくいかないことが出てくる。そのときに軌道修正をすればいい。」くらいに思っておけばいいのです。

そのくらいに思っていたほうが、物事を始めやすいのではないでしょうか。