Daily Archives: 2013年2月26日

賃金55(アクティリンク事件)

おはようございます。

さて、今日は、不動産会社元従業員による割増賃金等請求に関する裁判例を見てみましょう。

アクティリンク事件(東京地裁平成24年8月28日・労判1058号5頁)

【事案の概要】

Y社は、不動産売買、賃貸、管理およびこれらの仲介業を目的とする会社である。

Xらは、Y社の元従業員である。

Xらは、Y社に対し、雇用契約に基づく賃金請求として、時間外労働に対する割増賃金の支払を求めた。

【裁判所の判断】

X1につき、Y社に対し約278万の未払残業代及び275万円の付加金の支払いを命じた。

X2につき、Y社に対し、約193万円の未払残業代及び190万円の付加金の支払いを命じた。

【判例のポイント】

1 労基法37条5項及び労基法施行規則21条所定の手当は、いずれも除外賃金とされているが、除外賃金に該当するか否かは、名称に関わりなく実質的にこれを判断すべきである。住宅手当が除外賃金とされた趣旨は、労働と直接的な関係が薄い費目を基礎賃金から除外することにあると解されるから、除外されるべき住宅手当とは、その名称の如何を問わず、実質的にみて住宅に要する費用に応じて算定され、支給される手当をいうものと解するのが相当である
Y社では、住宅所有の有無や、賃貸借の事実の有無にかかわらず、年齢、地位、生活スタイル等に応じて1万円から5万円の範囲で住宅手当が支給されていたこと、Xらは、本件請求にかかる期間中、家賃等住宅にかかる費用についてY社に申告したこともないこと等の事実を認めることができる。これらの事実にかんがみれば、本件における住宅手当は、実質的にみて、住宅に要する費用に応じて支給される手当ということはできない。
よって、本件における住宅手当は、除外賃金には当たらないというべきである

2 ・・・営業手当は、本件賃金規程において、月30時間分に相当する時間外労働割増賃金として支給されることとされていることからすれば、いわゆる定額残業代の支払として認められるかのようにもみえる
しかし、このような他の手当を名目としたいわゆる定額残業代の支払が許されるためには、(1)実質的に見て、当該手当が時間外労働の対価としての性格を有していること(条件(1))は勿論、(2)支給時に支給対象の時間外労働の時間数と残業手当の額が労働者に明示され、定額残業代によってまかなわれる残業時間数を超えて残業が行われた場合には別途精算する旨の合意が存在するか、少なくともそうした取扱いが確立していること(条件(2))が必要不可欠であるというべきである
・・・これらの事実にかんがみれば、営業手当は、営業活動に伴う経費の補充または売買事業部の従業員に対する一種のインセンティブとして支給されていたとみるのが相当であり、実質的な時間外労働の対価としての性格を有していると認めることはできない

3 労基法41条2号の「監督若しくは管理の地位にある者」(管理監督者)とは、同号の趣旨にかんがみ、一般に「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」をいうものと解され、それに当たるか否かの判断は、職位等の名称にとらわれずに、職務内容、権限及び責任並びに職務態様等に関する実態を総合的に考慮して決すべきものと解される。
この点、確かにXらは、課長または班長の地位にあったことが認められるが、反面、Y社の経営に参画し、自らの部下らに対する労務管理上の決定権を有していたとまでは認めることができず、少なくとも業務開始時刻については、タイムカードによる出退勤管理を受けていたことが明らかである。
したがって、Xらが「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」ということはできず、Xらは、労基法41条2号の「監督若しくは管理の地位にある者」(管理監督者)には当たらないものというべきである。

固定(定額)残業代に関する上記判例のポイント2は参考になりますね。

あらゆる手当に固定残業代の意味であるとすることは許されないということになります。

当然といえば当然のことですね。

また、上記判例のポイント1の除外賃金についても、よく争われるところですが、しっかり理解しておかないと勘違いをしてしまいます。

ご注意ください。

残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。