おはようございます。
さて、今日は、昇給差別と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。
SETソフトウェア事件(中労委平成24年8月1日・労判1055号95頁)
【事案の概要】
Xは、Y社の副社長付業務推進センター、ビジネス・人材開発室・教育担当であった。
Y社は、Xに対して、虚偽の内容のメールを他の多くの従業員に送付したことを理由に減給1割(期間3か月)の懲戒処分に付した。
平成19年6月、Y社は、同年度のXの昇給額を0円とする給与改定を行った。また、20年6月、Y社は、同年度のXの業績給を2000円昇給する給与改定を行った。
なお、Y社は、平成17年4月に新人事制度を導入し、評価期間中に職務遂行能力の伸長が良好な者などに昇給を行い、職務考課や業績考課の評価が劣る者に降給を行うこととした。
【労働委員会の判断】
Xの昇給額を0円および2000円としたことは不当労働行為にはあたらない
【命令のポイント】
1 Y社における新人事制度とそれを踏まえた賃金規程の定めからみて、Y社においては、資格等級や業績給額が毎年勤続年数に応じて上昇していくという年功序列賃金制度は採られておらず、少なくとも40歳を超えた従業員については、実際にも年功序列的な昇格、昇給は行われていないことが認められる。
2 ・・・以上によれば、Xの19年度及び20年度の職能給及び業績給総額における昇給の額が0円及び2000円であったことについては、いずれの年度においても、同人の昇給額が他の従業員に比べ殊更低く抑えられていたとはいえず、またY社の評価が不合理とは認められない。
加えて、Y社がXが組合員であること及び同人の組合活動を嫌悪していたことを認めるに足る事情もない。したがって、Y社がXの19年度及び20年度の職能給及び業績給の総額における昇給額を0円及び2000円としたことは、同人が組合の組合員であることないしは同人の組合活動を理由として不利益な取扱いをしたものとはいえない。
年功序列賃金制度が取られておらず、昇給しないことが必ずしも不合理とは言えない状況では、不当労働行為にはあたりません。
会社としては、仮に昇給を行わないのであれば、不当労働行為と誤解されないように、また、誤解されても、しっかり説明できるように準備をしておきましょう。
ほとんどの場合、不当労働行為と判断されるのは、会社の認識不足と準備不足が原因です。
組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。