解雇87(クラブメッド事件)

おはようございます。

さて、今日は、勤務成績不良を理由とする解雇に関する裁判例を見てみましょう。

クラブメッド事件(東京地裁平成24年3月27日・労判1055号85頁)

【事案の概要】

Y社は、フランスのパリに本社を置く国際的なバカンスサービス会社の日本法人であり、国内および海外の系列ホテルへの送客業務およびこれに付随する一般観光等の企画、作成、販売ならびに斡旋等の各種業務を行う会社である。

Xは、平成2年、Y社に入社した。

Y社は、Xを勤務成績不良を理由として解雇した。

【裁判所の判断】

解雇は無効

【判例のポイント】

1 本件解雇は、Xの勤務成績不良を理由とする解雇であるところ、このような解雇については、当該労働者の勤務成績が単に不良であるというレベルを超えて、その程度が著しく劣悪であり、使用者側が改善を促したにもかかわらず改善の余地がないといえるかどうかや、当該勤務成績の不良が使用者の業務遂行全体にとって相当な支障となっているといえるかという点などを総合考慮して、その有効性を判断すべきと解するのが相当である。したがって、本件解雇に関する就業規則所定の解雇事由「技能、能力が極めて劣り、将来業務習得の見込みがないとき」という文言も、このような観点からその該当性が判断されるべきである。

2 ・・・以上を要するに、従前、Xの勤務成績が芳しくなかったことは否めないものの、サマー2010の期間に至って一定の向上をみたものであるから、もとよりその勤務成績が著しく劣悪であるとはいえないし、改善の余地がないということもできない。したがって、Xについて、Y社の就業規則所定の解雇事由「技能、能力が極めて劣り、将来業務習得の見込みがないとき」に該当するということはできないから、本件解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上も相当と認めることはできず、無効というべきである。

3 これに対し、Y社は、上記の成績の向上は、Xが受電回数を上げるため、特段の事情がない限り禁じられている時間外労働を連日行ったことによるものであり、X業務の能率向上によるものではなかった旨主張するところ、Y社の人事担当から各部門のマネージャーに時間外労働を禁じる内容のメールが送信されるなど、Y社において、時間外労働が禁止されていたことを裏付ける証拠も存する。
しかしながら、Xの上司は、Xの労働時間を把握し、その時間外労働の状況を認識していたと推認されるにもかかわらず、当時、それを問題視して禁止した形跡が認められないもので、このような事情に照らすと、実際、各部門において、真に時間外労働の禁止が徹底されており、他のスタッフが時間外労働を行うことなく業務を処理していたかについては、疑義があるといわざるを得ない。したがって、時間外労働を行っていたことをもって、Xの勤務能率が向上していなかったというY社の主張については、これを採用することができない。

4 Xは、Y社においては、全従業員に対し、基本給の2.5か月分の賞与が一律に支給されていたとして、本件解雇後も基本給の2.5か月分に当たる55万3750円の賞与請求権を有する旨主張する。なるほど、証拠によれば、Xに対し、2回にわたって上記金額の賞与が支給されていることが認められる。しかし、仮に、Xが主張するように、全従業員に対し2.5か月分の賞与が支給される事実が存したとしても、個別の雇用契約書や賃金規程等により、2.5か月分の賞与という点がXとY社との間の雇用契約の内容となっていたことを窺わせる証拠は存しない。したがって、Xが、本件解雇後も、Y社に対し、月例賃金のみならず賞与についても請求権を有するということはできず、他にこれを認めるに足りる的確な証拠はない。

勤務成績不良を理由とする普通解雇については、この裁判例でも示しているとおり、改善可能性が考慮されます。

一時的な成績不良をもって解雇をすると無効になる可能性が高いです。

もう1つ。

上記判例のポイント4は、参考になりますね。

賞与の請求は、実際には、なかなか認められません。

今回のケースのように、一律基本給の2.5か月分を支給されていたとしても、それをもって、契約の内容となるほど甘くはありません。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。