Daily Archives: 2012年12月3日

不当労働行為57(京都府医師会事件)

おはようございます。 今年もラスト1か月ですね。 気合いを入れてがんばりましょう!!

さて、今日は、新会館への移転を機とする組合事務所・組合掲示板の貸与拒否と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

京都府医師会事件(京都府労委平成24年8月26日・労判1055号92頁)

【事案の概要】

Y社は、X組合と組合事務所および組合掲示板を貸与する旨の協定を締結し、旧会館内に事務所および掲示板を無償で貸与した。

平成18年頃、Y社は、新会館移転の方針を示し、X組合が新会館に組合事務所等を確保するよう要求した。

しかし、Y社は、20年12月、本件協定を21年6月末をもって解約すると予告した。

平成22年10月、新会館に移転したY社は、X組合に対して組合事務所の確保は困難であると通告し、組合掲示板を設置したが、X組合は、設置場所および大きさが要求と異なっているとして掲示板を使用しなかった。

【労働委員会の判断】

組合事務所を貸与しなかったことは不当労働行為にあたる

要求とおりの組合掲示板を貸与しなかったことは不当労働行為にはあたらない

【命令のポイント】

1 Y社によるこのような便宜供与の廃止の目的、態様について検討すると、Y社は、組合事務所を貸与できない理由は、スペースが確保できなかったためであり、組合弱体化の意図によるものではないと主張する。確かに、Y社は設計担当の一級建築士に組合事務所の要望を伝えたが、延床面積が1割減少する中で全体から考えて設置は無理であると回答されたこと、Y社は、物品を新会館に収容しきれないため、賃料を支払って新会館外の倉庫に保管していることが認められる。
しかしながら、Xは設計前の段階から組合事務所の確保を申し入れてきたことが認められ、その意図さえあれば、単に要望として伝えるにとどまらず何らかの調整を行う余地はあったのではないかと考えられるにもかかわらず、設計担当の一級建築士に具体的に検討するよう指示をした形跡もうかがわれないこと、新会館移転後も空室はあり他の団体に対して新たに部屋の貸与を行った経過が認められること、また、Xは、書類等の収納スペースの貸与で足りる旨譲歩していたことが認められ、その程度のスペースの確保については、工夫の余地があるとあると考えられることからすれば、この主張は採用できない

2 そして、十分な説明も行わず、新会館においてXのためのスペースは一切認められないとの態度をとり続けていることに加えて、XとY社間においては平成7年から14年までの長期にわたる係争をはじめとする複数の救済申立て等の経過があったことや、団体交渉の中でY社側の出席者である理事らが「正直医師会と組合との関係が良好であるとはいいがたいよね」等と発言していたことが認められることも併せ考えると、Y社が組合事務所を貸与していないことは、Xを弱体化することも意図した法第7条第3号の支配介入に該当するものと判断される。

3 使用者が長期間継続した便宜供与を廃止した場合には不当労働行為に該当する可能性が生じるといえるが、Y社はXに対し、新会館においても、組合掲示板を貸与していることが認められ、Y社は便宜供与を廃止したとは認められないから、Y社の組合掲示板に係る対応は、法第7条第3号の支配介入に該当しないものと判断される。

組合事務所の貸与については、不当労働行為とされましたが、医師会とすれば納得がいかないところではないでしょうか。

単にスペースの問題ととらえると、当然、納得がいかないと思います。

理屈の上では、設計段階で、他のスペースを犠牲にしてでも、組合事務所を確保することを優先させるべきということになるのでしょうが、実際には、難しいところです。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。