おはようございます。
さて、今日は、誠実交渉義務に関する命令を見てみましょう。
国立大学法人大阪大学事件(中労委平成24年6月6日・労判1053号95頁)
【事案の概要】
X組合は、団交申入れに対して、開催時間を昼休み時間帯、開催場所をB地区に限定したY大学の対応が不当労働行為であると主張した。
これに対し、Y大学は、時間帯を昼休み時間、場所をB地区とする大学の対応は原則を示したもので、それに限定するものでなく、この方針が特段不合理なものともいえず、不当労働行為に当たらないと主張した。
【労働委員会の判断】
Y大学の対応は不当労働行為にあたる
【命令のポイント】
1 本件にあっては、教員の定年年齢に関連しての労働条件の不利益変更や期末手当、非常勤職員の雇止めといった重要な労働条件に関わる事柄について団交が申し入れられており、X組合らは、2時間から3時間程度の団交を要求し、議論を尽くすためには、少なくとも1回2時間程度は必要であると訴えていたことからすると、昼休みの時間帯に限定した団交の設定は時間の長さにおいて問題を孕んでいたものといえる。さらに、労働時間の途中における45分又は1時間の休憩時間の付与を義務づける労働基準法(34条)の趣旨及び昼食時間の確保の必要性を考え合わせると、労働組合の側が積極的に容認していたというのであれば格別、本件のようにX組合らがそれに異を唱えていたのを押し切って団交の時間帯を昼休みにこだわり続けることに合理性があったとは言えない。
2 X組合に対し、団交の開催場所をB地区に限定することは、団交開催場所への移動の負担を一方的に労働組合側に負わせるものである。しかも、Y大学は、併せて、団交の開催時間を昼休みの時間帯に限定していたのであるから、かかる団交時間帯に限定していたのであるから、かかる団交場所の限定により、一層、実質的な交渉を妨げることになるのは明らかである。Y大学は、交渉に必要な場合、昼休みの1時間を過ぎても対応しており交渉に支障はないと主張するが、延長した場合であっても数分から十数分程度であって、これらにより実質的な交渉時間が十分確保されていたことを認めるに足りる証拠はない。
3 以上みてきたとおり、X組合らによる21年7月以降本件申立てまでの間の団交申入れに対するY大学の対応は、団交の開催時間及び場所につき、正当な理由なくそれらを昼休みの時間帯及びB地区に限定したものであって、かかる対応は、X組合らの団交申入れに対する不誠実な対応として、労組法7条2号の不当労働行為にあたる。
団交の開催時間及び場所について、合理的な理由なく、組合や組合員に不利益に制限すると、不当労働行為になります。
また、今回のように、休憩時間に限り、団体交渉を認めるとすると、労基法との関係でも問題となりうるという視点を持つことが大切です。
組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。