Monthly Archives: 10月 2012

解雇83(国(在日米軍従業員)事件)

おはようございます。

さて、今日は、傷病休暇期間満了による解雇に関する裁判例を見てみましょう。

国(在日米軍従業員)事件(東京地裁平成23年3月9日・労判1052号89頁)

【事案の概要】

Xは、傷病休暇を取得したが、休職期間満了時、職場復帰可能と判断しなかったYは、Xを解雇した。

Xは、本件解雇は無効であると主張し争った。

【裁判所の判断】

解雇は有効

【判例のポイント】

1 本件基本労務契約によれば、有給休暇を消費した後に、労働者の業務外の傷病による傷病休暇(無給)は1年6か月間認められ、X・Y間の労働契約は、Yによる解雇予告の手続を経ることにより、原則としてその最終日に終了するが、労働者が回復すれば、解雇予告の撤回を要求することができ、Yは、Xを勤務に戻すと定められている。そうすると、労働者が業務外の傷病により、1年6か月間の傷病休暇(無給)を取得した場合は、Yがその最終日に有効となる解雇予告をして、労働契約の終了を主張・立証するのが抗弁となり、労働者が、再抗弁として、復職を申し入れ、回復して就労が可能になったことを立証したときは、労働契約の終了という法的効果が妨げられるという攻撃防御方法の構造であると解すべきである。これは、労働契約上の傷病休暇の制度が、業務外の傷病による長期間に及ぶ労務の提供を受けられない状況に対する解雇猶予を目的とする制度であるから、労働契約上の猶予期間が終了することで、労働を終了とし得ることが原則となると考えるのが相当であること、Xは、本件訴訟の段階でカルテの証拠化を拒否しており、個人情報保護の観点からしても、労働者個人の健康状態に関する情報は、原則として当該労働者個人の支配領域にある情報であることという事情を考慮すれば、労働者に回復して就労可能であることの立証責任を負わせるのが合理的であるということができる。

2 そうすると、Xは、労働契約上猶予されている傷病休暇(無給)の終了日までに、復職することをYに申し入れ、回復して就労が可能になったことを客観的証拠を示す等して立証することになる。そして、・・・本件争点は、Xが、無給の傷病休暇の最終日までに自らが回復して就労可能な状態になったことを立証しているかという点に尽きることになる。

3 ・・・以上によれば、Xは、その立証責任を負う傷病休暇の休職理由が解消していることの立証を尽くしていないといわざるを得ず、そうすると、休職期間満了時に解雇するという内容の本件解雇は有効である

休職期間満了時のトラブルは、少なくありません。

会社側も、正直なところ、どのように対応してよいのかわからないのではないでしょうか。

この問題は、弁護士にとっても、簡単な問題ではありません。

本件裁判例では、健康状態が回復し、就労可能となったことについて、労働者側に立証責任を負わせるのが合理的であると判断しています。

参考にすべき点ですね。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介133 それでもあきらめない ハーバードが私に教えてくれたこと(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます
写真 2012-10-14 12 14 53←先日、「すがい」に行ってきました。

両替町から移転してから、はじめて行きました。

いつ行っても混んでいます。すごいですね!

「すがい」といえば、とんこつラーメンとまぐろ丼ですが、今回は、新メニューのしょうゆラーメンを食べました。

正直、驚きました。めちゃくちゃうまいです!!

しょうゆラーメンランキングで、間違いなくベスト3に入ります。 

一度、とんこつではなく、しょうゆラーメンを注文してください。 かなりおすすめですよ!

今日は、午前中、裁判が1件と打合せが1件入っています。

午後は、名古屋で社団法人の理事会です

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は本の紹介です。
それでもあきらめない ハーバードが私に教えてくれたこと
それでもあきらめない ハーバードが私に教えてくれたこと

著者は、私と同世代の方で、ハーバード大学の大学院を卒業された方です。

大学院での様子、そこで学んだことがまとめられており、非常に参考になります。

本の1頁目には、アメリカの詩人・思想家であるエマーソンの言葉が紹介されています。

“Do not go where the path may lead, go instead where there is no path and leave a trail.”
(すでに道があるところを歩むな、道なきところに足跡を残して進め)

いい言葉ですね。

こういう言葉、大好きです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

選考の結果がどうなるかは、書類を見た瞬間に直感的にわかる。そして、その予想は、後で覆されることがほとんどない。・・・選ばれる書類と選ばれない書類は、どこが違うのか?
選ばれる書類は、ひと言で言うと、『魂が細部に宿っている』のだという。
誤字・脱字がないのはもちろん、書体やインデント(書き出しの頭のライン)がきちんと統一されており、レイアウトそのものが美しい。細部までこだわってつくられた書類は、表紙を見ただけでわかるという。
『細部へのこだわり』とは、要するに読み手に対する気遣いであり、自分がいかにその案件を大事に思っているかを示す証拠でもある
」(137~138頁)

文字の大きさがひと回り大きくなったからといって、それが何かが劇的に変わるわけではない。きっと、本質は別のところにあるのだ。
『細部にこだわり続ける情熱があるか』
『読み手の負担を少しでも減らそうとする気遣いや余裕があるか』
書類が選ばれるか否かの差は、きっとそんなところにあるのだと思う。
」(140頁)

大変参考になる発言です。

これらは、すべて私の仕事でも同じことが言えます。

「細部へのこだわり」というキーワードを常に意識しながら、仕事ができる人が「一流」なんでしょうね。

また、仕事に信念や情熱を持っている人と持っていない人の差というのが、こういった細部に表れるのだと思います。

一緒に仕事をするのであれば、信念や情熱を持った人とやりたいものです。

労働時間30(ジェイアール総研サービス事件)

おはようございます。

今日は、守衛の休憩・仮眠時間中の割増賃金等に関する最高裁判決を見てみましょう。

ジェイアール総研サービス事件(最高裁平成24年9月6日・労判1052号97頁)

【事案の概要】

Y社は、財団法人Aのビル管理等を目的等する会社であって、AからAの研究所における守衛業務を受託していた。

Xは、平成15年3月、Y社に嘱託社員として雇用され、同年4月には社員として総務部守衛室勤務を命じられた。

A研究所における守衛の業務は、守衛室において、受付、鍵の保管、火災報知器への対応、巡回、異常の有無の確認、門扉の施錠等のほか、地震や火災報知器の発報などに臨機に対応するものであった。

守衛の勤務は、一昼夜交代勤務で、休憩時間合計4時間、仮眠時間4時間であり、2人の守衛が交代で休憩・仮眠をとっていた。

Xは、平成17年1月18年12月までの間の休憩時間および仮眠時間が労働時間に当たると主張して、労働時間または労働基準法37条に基づき割増賃金等の支払を求めた。

これに対し、東京高裁は、休憩時間及び仮眠時間は、労基法上の労働時間に当たると判断した。

Y社は、これを不服として、上告・上告受理申立てをした。

【裁判所の判断】

上告棄却、上告受理申立て不受理

【判例のポイント】

労働時間24(ジェイアール総研サービス事件)参照。

以前、紹介した高裁判決が、最高裁でも維持されました。

会社側は、この判例に不満を言っても始まりません。

裁判になれば、このような判断が出ることを前提とした労務管理を行う必要があります。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

本の紹介132 競争に勝つ条件(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます もう一週間も終わりですね。
写真 2012-10-06 19 15 33
←先日、事務所の近くの焼き鳥屋「日乃出」に久しぶりに行ってきました

いつ行っても混んでいます。安くておいしいから、当然ですね。

勉強になります。

今日は、午前中は、裁判が2件と打合せが1件入っています。

午後は、浜松の裁判所で裁判が1件と新規相談が1件入っています

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は本の紹介です。
競争に勝つ条件
競争に勝つ条件

過去50年のICT(情報通信技術)活用による経営イノベーションについて書かれています。

ライフネット生命の岩瀬さん、ローソンの新浪さんなどが研究会のメンバーとなっています。

法律事務所経営にあたり、今のところ、直接的には関係しませんが、なにかのヒントが得られるだろうと思い、読んでみました。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・本当に必要であり、高い収益を生み出せるという確信があるなら、決して諦めてはいけない。周囲の反対を押してでもやり抜くことが、熾烈な競争に勝ち抜くことにつながる。
今の時代、その会社にしかできない、その会社でないと成し遂げることができない役割を見いだせるかどうかが、競争に勝つための最大のポイントだろう。
競争に勝ち抜くには、カリスマ性のある経営者は必要ないが、明確なビジョンを示して最後までやり抜ける胆力のある、気概のある経営者が欠かせない。・・・
」(335~336頁)

特別なことは1つも書かれていません。

結局、「明確なビジョン」を持って、「最後まであきらめないでやり続ける」ことが大切なんだということがわかります。

なんだかんだいって、基本は、これです。

私は、この文章を読んだとき、「自分の事務所でないと成し遂げることができない役割」とは何かについて考えてみました。

すぐには頭に浮かびませんでした。

まだまだそのレベルにはないわけです。

ここから3年間で、事務所の役割を明確にしたいと思います。

解雇82(学校法人V大学事件)

おはようございます。

さて、今日は、准教授からの必須科目等の講義を行う地位確認等請求に関する裁判例を見てみましょう。

学校法人V大学事件(東京地裁平成24年5月31日・労判1051号5頁)

【事案の概要】

Xは、Y大学の准教授である。

Y大学は、Xに対し、必須科目の講義の担当を外し、研究室に卒業研究生・大学院生を配属せず、学部の学科会議および大学院の専攻会議に出席させないとの措置をとった。

Xは、Y大学の各措置が、懲戒権を濫用し、または人事権の裁量を逸脱するものであり、Xの講義を担当する権利、研究室を持ち卒研生等の配属を受ける権利、学科会議等に出席する権利を侵害し、違法・無効であると主張し、争った。

【裁判所の判断】

XがY大学に対し、講義目録記載の講義を行う地位にあることの確認を求める部分を却下する。

XがY大学に対し、研究室を持ち、卒業研究生・大学院生の配属を受ける地位にあることの確認を求める部分を却下する。

【判例のポイント】

1 大学教員が講義を担当して学生に教授することは、自らの研究成果を発表し、学生との意見交換をすることなどによって、学問研究を深め、発展させることを意味するから、大学教員が講義を担当することは、労働契約上の単なる義務の側面のみならず、権利としての側面を有するものと解するのが相当である

2 ・・・学部及び大学院における学生に対する講義の課目、時間数及び時間割等の編成については、年度ごとに、学部においては各学科主任又はこれを補佐する担当幹事が、大学院においては研究科長を助ける研究科幹事が、それぞれ原案を作成し、教授会及び研究科会議の審議・議決を経て、最終的には、学長がこれを決定していると認めるのが相当である。
・・・そうすると、学長は、大学及び大学院における教育目的の効果的かつ円滑な実施のため、あらゆる事情を総合考慮の上、講義編成を決定することができると解するのが相当であるし、平成22年度以降の講義の担当につき、Xに講義目録記載の講義を担当させる旨の手続が履践されていない事情の下では、大学教員に講義を担当する権利が抽象的に認められるからといって、Xには、Y大学に対して具体的な講義の担当を求める権利ないし法律上の地位はおよそ認められないというほかない
したがって、本件訴えのうち、Xが講義目録記載の講義を行う地位にあることの確認の求める訴えは不適法であるから却下を免れないし、当該地位を前提とする上記講義を行なうことの妨害排除請求は理由がない。

3 大学設置基準36条2項は、「研究室は、専任の教員に対しては必ず備えるものとする。」と規程しており、大学教員の教育研究の拠点としての研究室を持つことは、専任の教員の権利であるということができるところ、Y大学も、少なくとも3階居室をXの研究室として設置し、Xが同居室を利用することを認めているのであるから、XがY大学に対して物理的施設としての研究室の設置を求める利益はないというべきである。
・・・以上によれば、XがY大学に対して研究室を持ち卒業生等の配属を受ける地位にあることの確認を求める訴えは、不適法であるから却下すべきであるし、当該地位を前提とする研究室の設置及び卒業生等の配属の義務付請求は理由がないというべきである。

本件は、大学教員の講義担当等に関する就労請求権が問題となった事案です。

労働者の就労請求権は、一般的には認められていません。

本件でも、教授という職業の特殊性を考慮しつつも、就労請求権を具体的な権利として認められていません。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介131 勝つための状況判断学(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます 今日もいい天気ですね。
写真 2012-09-30 12 12 03
←先日、丸子にある「Pizzeria IL Brolo」に行ってきました。

このお店、日本庭園を眺めながらイタリアンを楽しむというコンセプトです。

写真は、イタリア産パンチェッタのカルボナーラ。 やさしいお味でした

この他、水牛のモッツァレラチーズは秀逸でした。

今日は、午前中に裁判1件と裁判の打合せが入っています。

午後は、裁判3件と顧問先の社長との打合せが入っています。

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は本の紹介です。
勝つための状況判断学―軍隊に学ぶ戦略ノート (PHP新書)
勝つための状況判断学―軍隊に学ぶ戦略ノート (PHP新書)

著者は、元自衛隊員のようです。

戦場における状況判断の思考過程、戦局眼が示されており、仕事にも参考になる点が多数あります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

最善を求める慎重さは、最も恐ろしい敵である。おおむね良しで手荒く実行する計画は、来週までかかって作成する完璧な計画より、はるかに優れている」(203頁)

完璧な計画は、実行に移すまでの時間を遅らせます。

もっとも、計画に最善も最悪もないと思うのですが。

計画が最善か否かは、結果としてわかることであり、実行する前に、その計画が最善かどうかなんてどうやって判断するのでしょうか。

最善と思っていた計画が、いざ実行に移してみると、うまくいかないことなんてよくあることです。

そうだとすれば、実行前の計画段階をできるだけ短くし、タイミングを逸しない時点で、実行に移すべきです。

また、計画段階での時間と結果の出来不出来は、必ずしも比例しません。

日頃から、迅速に意思決定をする訓練をしている人は、なにごとにおいても、判断が速い。

判断が速いからといって、いい加減に判断しているわけではなく、訓練の結果、状況分析やリスクの有無・程度等を迅速に判断できるようになっているのです。

すべては、日頃の意識と訓練なんだと思います。

労働災害53(フォーカスシステムズ事件)

おはようございます 3連休も終わり、また1週間が始まりましたね。

今週もがんばっていきましょう!!
写真 2012-10-06 7 30 42
←3連休は、山にウォーキングに行きました

毎週末は、山登りから一日が始まります。  

今日は、午前中は事務所の内装についての打合せと弁護士会での法律相談が入っています。

午後は、裁判が2件入っています。

夜は、弁護団会議です。

今日も一日がんばります!!
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さて、今日は、長時間労働等による精神障害発症・死亡に関する裁判例を見てみましょう。

フォーカスシステムズ事件(東京高裁平成24年3月22日・労判1051号40頁)

【事案の概要】

X(死亡時25歳)は、平成15年4月にY社にシステムエンジニアとして採用され、通信ネットワーク関係のシステム設計、構築および運用試験等の業務に従事していたが、18年7月に異動となり、携帯電話端末の組み込みソフト開発チームの所属となった。

Xは当初ベテランの従業員と組み、調査検討業務等に従事していたが、改修や再試験実施に手間取った結果、当初引渡し予定であった8月中旬時点で、予定の業務の30%程度しか進行せず、その結果Xの残業時間も増加していった。

同年9月、Xは自宅から都内にある勤務地に出勤するかのように出かけたが、携帯電話の電源を切って、無断で欠勤して河川敷のベンチでビール等をラッパ飲みし、意識不明で倒れているところを発見されたが、すでに心配停止状態で死亡していることが確認された。

Xの死亡について、中央労基署長は業務災害と認定して、遺族補償年金等を支給している。

【裁判所の判断】

Y社の安全配慮義務違反を認めた
→約4400万円の支払いを命じた

【判例のポイント】

1 当裁判所も、Xは、長時間労働、配置転換に伴う業務内容の変化・業務量の増加等の業務に起因する心理的負荷等が過度に蓄積したために精神障害(うつ病及び解離性逓走)を発症し、正常な認識と行為の選択が著しく阻害された状態で過度の飲酒行為に及んだため急性アルコール中毒から心停止に至り死亡したものであり、使用者であるY社の代理監督者は、Xの従事していた業務が上記精神障害を発症するなど心身の健康を損ねるおそれのある状態にあることを認識し又は認識し得たにもかかわらず、心理的負荷等を軽減させる措置を採らなかったことから、従業員に対する安全配慮の義務に違反しているものと認められ、このような従業員の心身の健康に配慮すべき義務は、使用者として尽くすべき一般的注意義務になると解されるから、Y社は不法行為(使用者責任)に基づきこれにより発生した損害を賠償する責任があると判断する

2 ・・・これらによれば、長時間の時間外労働と精神障害との一般的関連性は認められるところ、本件では、Xの時間外労働は本件当日前2か月間においていずれも100時間を超えているのみならず、配置転換に伴う業務内容の変化・業務量の増大、単体試験業務専任となることの心理的影響などにより相当重大な心理的負荷が生じ、蓄積しており、それらのことがXの行動や表情に表れているのであって、そのような状態にあった中で本件当日の飲酒行為に及んだのである。そして、これらの一連の出来事に基づいて精神医学の知見からXの従事していた業務と精神障害の発症及び飲酒行為との間には因果関係があるとする天笠医師の意見には十分合理性がある。そして、Xが精神障害を発症する原因は他に考えられないことをも併せ考慮すると、Xの従事していた業務による心理的負荷とその精神障害の発症との間には強い関連性があると認められる

3 ・・・他方において、Xの長時間労働は恒常的なものであり、必然的に睡眠時間の不足も日常的なものとなるから、就労後の時間を適切に使用し、できるだけ睡眠不足を解消するよう努めるべきであったところ、就寝前にブログやゲームに時間を費やしたのは、自ら精神障害の要因となる睡眠不足を増長させたことになり、その落ち度は軽視できないものである
・・・以上の観点のうち、Xにおいても、自らの趣味のために睡眠不足を招いたことは、それが心身の健康を損ねる大きな要因であることから、自己の意思によって健康管理に努めるべきであったと指摘することも可能であり、この点はXの落ち度として相応の考慮をせざるを得ないのであり、その他第1審原告らに生じた損害の全てについてY社にその責めを負わせるのは損害の分配における公平の観点からは相当でなく、第1審原告らに3割の過失割合を認め、上記損害を減ずるのが相当である。

時間外労働時間が100時間を超えていることのみから、会社の責任を問われてもおかしくありません。

本件は、労働者に3割の過失相殺が認められてはいますが、会社は4000万円を超える損害を賠償する責任を負うことになりました。

長時間労働については、くれぐれも注意しましょう。

本の紹介130 ホンダイノベーションの神髄(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます 今週も今日で終わりですね。明日から3連休です。 ゆっくり仕事ができます。
写真 12-09-28 19 14 13
←先日、顧問先の社長と「こはく」に行ってきました

写真は、駿河シャモのたたきです。身がしっかりいて、とてもおいしいです。

社長、ご馳走様でした!

今日は、午後に、宇都宮地裁で免責審尋があります

ついでに餃子を食べてきます。

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は本の紹介です。
ホンダ イノベーションの神髄――独創的な製品はこうつくる
ホンダ イノベーションの神髄――独創的な製品はこうつくる

元ホンダ経営企画部長の方の本です。

物づくりにおけるイノベーションのあり方が書かれています。

物づくり以外の仕事にも当然、参考になります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ホンダには、その仕事に必要な能力の40%があれば任すという伝統がある。100%の能力が備わるのを待っていたのでは時間がかかりすぎるし、その仕事での成長も期待できない。40%の能力があれば、その仕事に取り組む中で残りの60%は成長するしかない。その方が、人は早く育つのである。そのため、常に実力以上の仕事が求められる。しかもその際、上司から手取り足取りの支援はない。『よく考えて自分でやれ』という雰囲気だ。・・・ホンダには、人が持つ、特に若手が持っているポテンシャルを信じ、大きな裁量権を与える伝統がある。」(202頁)

裁量を与えることで、人は自分の頭を使うようになります。

指示を出す際も、あえて裁量を残し、任せる。

そうすることにより、部下の能力、着眼点、やる気、性格などがよくわかります。

私の事務所でも同じことがいえます。

あえて裁量を残しつつ、スタッフがどのような姿勢で仕事をするのかを見ています。

難しい課題に対して、どのようなプロセスで結果を導いたのかをよく見ています。

例えば、初めてやる仕事について、事前にあまり多くのヒントを出さず、取り組んでもらいます。

こちらとしては最初から完璧な結果なんて求めていません。

大切なのは、課題に対してどれだけくらいつけたか、なのです。

わからないながらも、文献や判例、過去の同種事例を調査、検討し、一定の結果を示すことが大切なのです。

もうはっきり言って、プロセスしか見ていません。

プロセスがしっかりしていれば、結果は自ずといいものになっています。

労働者性6(伊藤工業(外国人研修生)事件)

おはようございます。

さて、今日は、外国人研修生の研修期間中の労働者性に関する裁判例を見てみましょう。

伊藤工業(外国人研修生)事件(東京高裁平成24年2月28日・労判1051号86頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が、外国人研修・技能実習制度に基づいてXらを研修生・実習生として受け入れ、研修及び実習を行ったところ、XらがY社に対し、研修期間及び実習期間における未払賃金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

研修期間中の外国人研修生は労働者には該当しない
→請求棄却

【判例のポイント】

1 本件制度において、研修生が労働基準法上の労働者でないために法的保護を受けられず、実質的な低賃金労働者として扱われる、技能実習生に対し雇用契約に明記された賃金が支給されない、時間外労働に対する割増賃金が正当に支給されない等の違法な事案や旅券や通帳を強制的に取り上げる等の不当な事案が発生していること、また、送出し国側の機関等が、出航前に多額の保証金等を研修生・技能実習生から徴収していたり、そのために研修生・技能実習生が出国前に多額の借金を強いられる例等があり、このことが、我が国入国後に研修生・技能実習生が失踪し不法就労に走る原因となっている状況が一部で生じていることが関係者等から指摘されていたところ、法務省指針は、本件制度の実施において生じていた上記のような問題事例の発生を踏まえ、本件制度の適正化を推進するために策定されたものである。

2 そして、上記のとおり本件制度における「研修」の法的位置付けは「労働」ではないことから、「実務研修」の実施に当たっては「労働」と明確に区別される必要があるが、「実務研修」については、現場における実際の作業に従事させることから、外見上はその活動が「研修」なのか、資格外活動である「労働」なのか明確に区別し難い場合が多いものと解される。そうすると、法務省指針が策定されるに至った経緯に照らし、同指針は、研修が法務省指針に沿って実施されている場合においては、当該研修における研修生の活動は「労働」ではないと評価し得る一応の基準となると解するのが相当である

3 ・・・したがって、以上の検討からは、Xらの研修は、全体的に法務省指針に概ね沿って実施されていたものということができるから、以上の点を加味して検討しても、研修期間中におけるXらは労働基準法上の労働者に該当しないという認定判断になるというべきである

4 Xらは、当審において、Y社が作成した照合済出勤簿やXら日記の記載に従っても時間外労働の事実が認められる旨主張するが、Xら日記における終業時刻の記載に信用性がないことは前記説示のとおりである。また、Xらの主張は、技能実習期間中の労働時間について、始業時間を一律に午前7時45分としたり、社員寮から各現場までの通勤時間を労働時間に加えた取扱いをするものであるが、Xらの就業時間は午前8時から午後5時までであり、技能実習期間中の午前7時45分からのXらの行為や通勤時間におけるXらの行為を時間外労働であると評価するのが相当であるとするような事実や事情は、本件全証拠によるも認められない。

高裁は、法務省指針を持ち出し、研修期間中の外国人研修生を労基法上の労働者とは認めませんでした。

上記判例のポイント1のような問題点がある中、法務省指針に概ね沿っているということを理由としています。

労働者性に関する判断は本当に難しいです。業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。

使える!「孫子の兵法」

おはようございます
写真 12-09-29 19 28 45
←先日、両替町の「つたの」に行きました

1時間1本勝負です。 だらだら飲みません。

写真は、絶品のかつおとウコン割。

かつお君には、にんにくが一番です。

これから、かつお君がますますおいしくなる時期です。 楽しみです。

今日は、午前中は、証人尋問の準備です。

午後は、裁判が2件入っており、うち1件は証人尋問です。

夜は、裁判と調停の打合せです。

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は本の紹介です。
使える! 「孫子の兵法」 (PHP新書)
使える! 「孫子の兵法」 (PHP新書)

齋藤さんの本です。

このパターンの本は、齋藤さんの得意としている切り口です。

ネタが尽きることはありません。 本当に素晴らしい。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

私の教育の基本方針は、『追い込む』ことにある。日々接している学生の中には、何かにつけて『自分にはできない』と及び腰の者が少なくない。しかし私にいわせれば、その多くは単なる思い込みだ。やらざるを得ない状況に追い込まれれば、意外とできてしまうものである。だから私は、あえて心を鬼にして無理難題を出し、『やればできる』という経験を積めるよう仕向けているのである。」(205頁)

人の経験値は、どれだけ多くの修羅場を経験したかによって測られるのだと思います。

当初、成功するなんて思えなかったことも、いざやってみると、意外といい結果が出たりするものです。

このような経験を多くしてきた人は、難しい問題にぶつかったときに、そう簡単にはあきらめないようになります。

「難しいそうに見えるけど、やってみたら、案外、うまくいくんじゃないの。この前も、そうだったし。」と考えることができるのです。

「やってみないとわからない」という発想を持てるかどうかがポイントになってくるような気がします。

ぱっと見の難しさにびびっていては、大きな成果はあげられません。

挑戦あるのみです!