おはようございます。
さて、今日は有期雇用の用務員に対する契約期間中の解雇に関する裁判例を見てみましょう。
X学園事件(東京地裁平成24年4月17日・労経速2150号20頁)
【事案の概要】
Y社は、Y学園の設置・運営を目的とする会社である。
Xは、Y社において、特別専任職員として採用され、契約期間1年とする用務員として勤務していた者である。
Y社は、Xを契約期間途中で解雇した。
Xは、Y社に対し、(1)契約期間途中でなされたY社による解雇(無断欠勤2回、欠勤届不提出、昼休憩の際の打刻の不履行、生徒用掃除道具箱の清掃、備品の確認・補充の不履行を理由とする解雇)は、労働契約法17条1項に定める「やむを得ない事由」を欠くものであって無効である等と主張した。
【裁判所の判断】
解雇は無効
【判例のポイント】
1 本件解雇理由(ア)ないし(エ)記載の事実の存在が認められ、これらは、いずれも業務命令違反行為として就業規則39条1項4号に該当するものといえる。
しかし、Xが有期雇用の用務員であって教員ではないことにかんがみれば、本件解雇理由(ア)ないし(エ)記載の事実がY社の設置・運営する学園の教育現場に与えた影響は、非常に限定的であったと推察される。また、就業規則39条は懲戒解雇の規定であるところ、Xには、本件解雇まで懲戒歴が全くない。加えて、解雇理由(イ)につき、事後的にではあるが、一応、欠勤届を提出していること、有期雇用は、雇用期間の満了によって自然に終了する反面、期間中の解雇は抑制的であるべきこと等の諸事情を総合考慮すれば、欠勤届の提出を求め、実際の昼休憩時間を把握するために打刻を指示した点は、労務管理上、合理的かつ当然の指示であること、生徒用掃除道具箱の清掃及び備品の確認・補充を指示した点も、用務員として通常予想される職務範囲内の正当な業務指示と認めることができること、平成22年12月中旬以降のXの勤怠が著しく悪いこと等のY社に有利な諸事情を考慮しても、本件解雇に、法17条の「やむを得ない事由」があるとまで認めることはできない。
2 したがって、解雇手続の相当性について検討するまでもなく、本件解雇は無効であり、XとY社との間の雇用関係は、本来の期間満了日である平成23年4月30日の経過によって終了したものと認めるのが相当である。
3 そして、本件解雇日から上記満了日までのXの不就労は、Y社の責めに帰すべきものと認められるから、民法536条2項により、Y社は、Xに対する上記期間中の賃金支払義務を免れないが、Xは、解雇予告手当を平成23年2月分に充当する前提で同年3月分及ぶ4月分のみを請求しており、Y社も、解雇予告手当が同年2月分のみに充当されることにつき異議を述べないので、Y社がXに支払うべき未払賃金額は、平成23年3月及び同年4月の各月当たり23万7850円となる(なお、通勤手当は、実際に通勤することを前提に支給される手当であるから、本件において、Y社に支払を命ずることは相当ではない。)。
懲戒解雇ですから、自ずとハードルはあがります。
普通解雇ではダメだったのでしょうか?
また、有期雇用の期間途中の解雇は、「やむを得ない事由」がなければいけませんので、普通解雇の要件よりも厳しいです。 このことも裁判所はちゃんと踏まえていますね。
とはいえ、本件でY社がXに支払うのは2か月分の賃金だけですので、それほど大きな負担ではないですね。
日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。