不当労働行為51(櫻間工業事件)

おはようございます。

さて、組合執行委員長の解雇等に関する命令を見てみましょう。

櫻間工業事件(北海道労委平成24年6月22日・労判1051号94頁)

【事案の概要】

Y社は、土木・建築の施工・管理ならびに請負および一般貨物自動車運送を行っている会社である。

Y社の従業員であるAは、Y社社長に、業務中に事故を起こした旨報告した。

Y社社長は、Aに出勤停止を明示、てん末書の提出を求め、Aは、これを受けて3回てん末書を提出した。しかし、Y社は、内容が不備であるとして、再提出を求めた。

Aは、Y社社長に対しててん末書の対応は労働組合に一任したいと申し出た。

その後、Y社は、Aをクレーン作業から外し、除雪のほか、資材積込み等の場内作業を命じた。

Y社は、Aを即日解雇した。

【労働委員会の判断】

解雇は不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Y社が、A組合員が組合員であることを知ったのは、22年12月に、A組合員が、てん末書の件について今後の対応は労働組合に一任したいとB社長に申し出た時点であり、A組合員は、その日を境にクレーン作業から外され、除雪、資材積込み及び清掃等の業務に従事させられている。A組合員が、てん末書の対応を労働組合に一任したいとB社長に申し出たのは、本件事故に対する認識についての回答をしたものではないから、そのことをもってA組合員の本件事故に対する認識に変わりがないとして作業内容を変更する等の処分を行う理由となり得るものではなく、Y社が、A組合員の作業内容を変更したのは、まさにA組合員に申し出たこと自体が契機になっていると考えざるを得ない

2 Y社は、A組合員が、本件事故発生から既に2か月以上経過したにもかかわらず、意識改善が全く見られないこと、及び組合の要請に応じて事実関係の調査のための時間的猶予を与えていたものの一向に回答がなされなかったことから、本件解雇に至ったと主張する。
しかしながら、A組合員が本件事故のてん末書の提示について組合に一任した後は、組合が対応の窓口となったのであるから、A組合員個人が組合を無視して直接Y社に謝罪等の意思を表明することは考えられず、Y社もてん末書の提出に係る団体交渉に応じている以上、そのことを承知していたといわざるを得ない。しかも、Y社は、本件事故についてA組合員とY社の主張が食い違っており、組合が本件事故について調査中であることを認識していたものである。それにもかかわらず、その調査結果を検討することなく、A組合員個人から調査報告書を未だ提出していない旨を聞いたのみでA組合員の意識改善が見られないとして決定した本件即時解雇には、相当な理由があったとは言えない

3 以上の事実から総合的に判断すると、A組合員をクレーン作業から外し、除雪、資材積込み及び清掃等に従事させ本件解雇に至った一連のY社の行為は、A組合員が自らを組合員であることを明かして、てん末書の件について今後の対応は労働組合に一任したいと申し出、組合の支援を受けて争う姿勢を示したことによるもので、A組合員が組合員であることの故をもってなされた不利益取扱いに当たり、労働組合法7条1号の不当労働行為に該当する

典型的な不当労働行為ですね。

即時解雇についても、裁判で争えば、無効でしょうね。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。