おはようございます。
さて、今日は、給与規定改正等と低査定、校務分掌はずしの不当労働行為性に関する裁判例を見てみましょう。
学校法人森教育学園事件(広島高裁岡山支部平成23年3月10日・労判1028号33頁)
【事案の概要】
Y社は、A私立高校を設置する学校法人である。
XらはY社に勤務する教員である。
Xらは、教職員によって組織される組合の組合員である。
本件では、Y社がXらを校務分掌からはずしたこと、賞与の査定においてXらを低く取り扱ったことは不当労働行為として不法行為を構成するか否かが争点となった。
【裁判所の判断】
不当労働行為であったことが強く推認される
校務分掌はずし等に対する慰謝料として、100万円の支払いを命じた
【判例のポイント】
1 Y社は、労働者には就労請求権がないし、授業の持ち時間数の削減などのことで、労働の軽減になりこそすれ、負担が増加することはないから、学校側が校務分掌や授業の持ち時間を与えずとも不法行為は成立しないと主張するが、教員にとって、相当の授業持ち時間や校務分掌を与えられ、これに従事することは、自らの教育に対する技能を維持発展させ、生徒らとの交流を維持することにより、教員生活の充実発展を期することができ、それにより、今後の教員としての地位の維持発展をはかることができるのであり、これらを与えられないことによる不利益は多大なものがあると考えられるから、労働者に就労請求権がなく、労働の軽減をもたらす面があるとしても、組合活動を嫌悪し、その阻害を意図するなどして校務分掌や授業の持ち時間を与えない行為は、当該労働者に対する不利益取扱いに該当するものというべく、不当労働行為と評価されてもやむを得ない。
2 ・・・Xが他の教員と比較して多少低い評価を受ける根拠となる事情がなかったとはいえないものの、最低ランクに固定するほどの評価が相当とはいえないから、Y社の不当労働行為を正当化するものとはいえない。
一審に引き続き、控訴審でも、Y社による不法行為の成立が認められました。
労働者に就労請求権が認められていないことと、仕事を減らしたり、与えなかったりすることは、直接関係ありません。
不当労働行為に該当するか否かは、組合嫌悪の意思を客観的に判断されますので、就労請求権を持ち出したところで、一蹴されてしまいます。
組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。