おはようございます。
さて、今日は、約20年勤務の高校非常勤講師2名の雇止めに関する裁判例を見てみましょう。
学校法人加茂暁星学園事件(東京高裁平成24年2月22日・労判1049号27頁)
【事案の概要】
Xらは、Y学校との間で年度ごとに雇用契約を締結し、Y社が経営するY高校に非常勤講師としてそれぞれ25年間と17年間にわたって勤務していた。
Xらは、いわゆる雇止めにより、雇用を継続されなかったのは不当であると主張し、訴訟を提起した。
【裁判所の判断】
雇止めは有効
【判例のポイント】
1 Xは、昭和57年から平成18年度まで25年間にわたって、Y社との間で年度ごとに締結した雇用契約に基づき、Y高校において理科の非常勤講師として勤務していたものであるが、非常勤講師は、クラス担任及び生活指導等は行わず、校務分掌にも入っておらず、兼職も禁止されておらず(現にXらは、いずれもY高校の非常勤講師在勤中に新潟県立高等学校の非常勤講師を兼務していた。)、給与体系や適用される就業規則が専任教員と異なり、勤務時間数も各年度の各学科のクラス編成数や生徒の科目選択によって変動するものであった(これに対し、専任教員は基本的に1週40時間以内と決まっていた。)。
これらの点からすれば、XらとY社との間の雇用契約が、実質において専任教員の場合と同じく期間の定めのない雇用契約と異ならない状態にあったものといえないことは明らかである。
2 非常勤講師は、専任教員の持ち時数を超える授業時数が発生した場合に採用されるものであり、非常勤講師に担当させるべき授業時数がないにもかかわらず、これを捻出して非常勤講師を採用しなければならないものではない。そして、非常勤講師が担当する授業時数があるか否か、あるとしてどの程度の時数となるかは、どのようなカリキュラムが編成されるかによって変動するものであることも自明である。
3 したがって、次の年度のカリキュラム編成がされておらず、非常勤講師に担当させるべき授業時数が生ずるか否かが明らかではないにもかかわらず、Xらが次年度もY高校に非常勤講師として採用されるものと期待したとしても、その期待が合理性のあるものとはいえない(このことは、Y高校における非常勤講師の採用が従来から人件費削減のために本来専任教員を充てるべきところを賄うという面があったとしても、同様である。)。
その他、Xらが挙げる事情も、雇用契約の継続の期待が合理的なものとする根拠とはならない。
4 平成16年度分以降は手続が厳格化され、しかも辞令書及び平成16年度分以降の雇入通知書には、採用期間又は雇用期間は1年である旨が、また、平成18年度分の雇入通知書には、契約は更新する場合があり得るにすぎず、更新の有無については期間満了の1箇月前までに通知する旨が、さらに、平成17年12月22日付け及び平成18年12月27日付けで送付された「来年度の雇用に関して(通知)」と題する文書には、次年度の雇用については学級数や生徒数が不透明であるため確約できる状況ではない旨がそれぞれ明記されていたのであって、それにもかかわらず平成19年度以降にも雇用契約が更新されるものと期待するのは、到底合理的なものとはいえない。
5 以上のとおり、Xらが本件雇用契約の継続を期待することに合理性があるとはいえないから、本件雇止めにつき、解雇に関する法理を適用又は類推適用すべき余地はない。
一審は、Xらの請求を全部認容しています。
これに対して、東京高裁は、雇止めを有効と判断しました。 Xらの逆転敗訴となっています。
当然、Xらは、上告しています。 最高裁の判断はどうなるでしょうか。
控訴審は、本件雇止めに解雇権濫用法理が類推適用されるかという争点のみについて判断しています。
専任教員と非常勤講師との職務内容の違い、契約更新時の対応等から判断されています。
会社側としては、十分参考にすべき内容です。
有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。
事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。