おはようございます。
さて、今日は、整理解雇に関する裁判例を見てみましょう。
日本ユニ・デバイス事件(さいたま地裁平成24年4月26日)
【事案の概要】
Xは、平成18年8月、Y社と雇用契約を締結し、A社の工場内で製造業に従事していた。
Xは、形式的な6か月の更新を繰り返していたが、ある時更新をしなくなった。しかし、Xは、そのまま何ら変わることなく、労働に従事していた。
その後、Y社は、平成20年12月、Xら従業員に対し、平成21年3月末をもって辞めてもらう旨を口頭で通知した。
Xを含む従業員は、Y社と面接を行ったが、Xを含めて半数以上が不採用となり、Xは、平成21年1月末に整理解雇された。
【裁判所の判断】
整理解雇は無効
【判例のポイント】
1 民法629条1項は、更新後の契約につき、民法627条による解約の申し入れが出来る旨を規定していることに加えて、賃貸借契約についても民法629条1項と同様の規定(民法619条1項)があるが、黙示の更新後の賃貸借契約は期間の定めのない契約になるものと解されていることからすると、条文の文言及び他の規定との整合性という観点からは、雇用契約が黙示に更新された場合においても、更新後の契約は期間の定めのない契約になるというのが自然の解釈といえる。さらに、当事者の意思についてみても、雇用契約において黙示の更新がなされるときとは、労働者は雇用期間が満了したにもかかわらず労務を継続する一方で、使用者は期間雇用という契約形態の基礎をなし、かつ通常容易になし得る更新手続きをしないまま労働者による労務の継続を黙認しているという点において、当事者間で期間の定めが重視されているとは言い難い。したがって、雇用契約につき黙示の更新がなされた場合における、更新後の契約は、期間の定めがない契約になると解するのが相当である。
これに対してY社は、更新後の契約は期間の定めを含めて従前と同一の条件になると主張する。しかしながら、このような解釈は更新後の契約につき民法627条による解約の申し入れが出来るとされていることと整合しないし、賃貸借と雇用とで同様の規定について異なる解釈をすることを合理的に説明することも困難である。また、解雇権濫用法理等が雇用契約の拘束力に一定の変化をもたらしたことは否定できないにしても、そのことが直ちに民法の規定の解釈にまで影響を及ぼすものとは考え難い。
2 整理解雇は、Xの責めに帰すべき理由によるものではないことに鑑み、本件解雇の有効性は、人員削減の必要性、解雇回避努力の履行の有無、被解雇者選定基準の妥当性、解雇手続の妥当性等を総合的に考慮した上で、本件解雇がY社の経営上の措置として社会通念上相当であるといえるか否かという観点から判断すべきである。
3 解雇回避努力については、確定的ではなかったにしろ、将来的に受注増加により、雇用を確保し得る可能性は否定されていなかったのであり、解雇をすることなくXら従業員の雇用を継続することができた可能性もあるにもかかわらず、解雇に先だってこのような可能性について具体的な検討がなされた事実は認められない。
その他に、Y社の経営上必要な人員削減の内容について、経営の見通しに関する数値等を根拠とした具体的な検討がなされた形跡は証拠上認められない。
また、Y社は、解雇通告と同時に、Xら従業員に対して何ら具体的取り決めのないワークシェアリングの提示をしたが、ワークシェアリングの内容に関する具体的な検討や交渉が行われたものとは認められない。また、ワークシェアリングの提示は、解雇通告と同時ないしその後に行われており、本件解雇に先だって検討されたものとは認められない。
4 被解雇者選定基準の妥当性については、Y社が重視したとする協調性や体力という点について、基本的には面接におけるやり取りに基づいて評価されているが、これらの資質は面接における短時間のやり取りの中で容易に判断し得るものではなく、その他客観的な資料が用いられたことを認めるに足りる証拠はない。そうすると、恣意的な判断が介在する余地があったものといわざるを得ず、その判断が客観的な基準に基づいて適正になされたものとは認められない。
5 手続の妥当性については、経営状況等について説明会を開催したり、書面を示して説明するなどして人員削減の必要性等につきXら従業員の理解を得ようとした事実は認められない。
6 ・・・Xが一貫してY社への復帰を求めていたのは当裁判所に顕著な事実であるところ、その間の生活を維持するためにXに一定の収入が必要であったことは明らかであるから、Xが新就労先に就職することは、XがY社への復帰を求めることと直ちに矛盾するものではない。
非常に参考になる裁判例です。
6か月の期間の定めのある契約が黙示の更新により、期間の定めのない雇用契約となるかについて、裁判所は、肯定しています。
整理解雇の有効性に関する判断についても、その判断方法は参考にすべき点がとても多いですね。
解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。