Daily Archives: 2012年8月7日

解雇77(日本航空運航乗務員解雇事件)

おはようございます。

さて、今日は、会社更生手続中の航空会社の運航乗務員に対する整理解雇に関する裁判例を見てみましょう。

日本航空運航乗務員解雇事件(東京地裁平成24年3月29日・労経速2144号3頁)

【事案の概要】

Y社は、その子会社、関連会社とともに、航空運送事業及びこれに関連する事業を営む企業グループを形成し、国際旅客事業、国内旅客事業等の航空運送事業を展開する会社である。

Y社は、平成22年1月、会社更生手続開始の申立をした。

管財人は、更生手続開始決定後終結前に、Y社の就業規則所定の解雇事由(「企業整備等のため、やむをえず人員を整理するとき」)に該当するとして、Y社の運航乗務員である機長、副操縦士を整理解雇した。

【裁判所の判断】

整理解雇は有効

【判例のポイント】

1 会社更生法上、労働契約は双方未履行双務契約として、管財人が解除又は履行を選択し得る(同法61条1項)が、管財人は、労働契約上の使用者としての地位を承継している以上、管財人の上記解除権は、解雇と性格づけられるところ、権利濫用法理(労働契約法16条)は、管財人が行った本件解雇についても当然に適用され、本件解雇は使用者の経営上ないし経済上の理由によって行われた解雇なのであるから、上記の解雇権濫用法理の適用に当たっては、人員削減の必要性の有無及び程度、解雇回避努力の有無及び程度、解雇対象者の選定の合理性の有無及び程度、解雇手続の相当性等の当該整理解雇が信義則上許されない事情の有無及び程度という形で類型化された4つの要素を総合考慮して、解雇権濫用の有無を判断するのが相当であり、このことは当該更生手続が、いわゆる事前調整型(プレパッケージ型)の企業再建スキームとして利用されたものであるか否かにより結論を異にする根拠はないのであり、本件更生手続が機構の支援と会社更生手続を併用して事業廃止を回避した事前調整型企業再建スキームであることは結論を左右するものではない

2 Xは、平成22年12月時点で、Y社は更生計画を大きく上回る営業利益を計上している等から本件解雇は回避することは経営上十分可能であったと主張するが、本件解雇は更生計画の遂行(会社更生法209条1項)として行ったものであり、更生計画を上回る収益が発生したとしても、このような収益の発生を理由として、更生計画の内容となる人員削減の一部を行わないことはできない

3 Y社は、本件解雇に先立ち、平成20年10月に賃金の5%減額を行い、平成22年4月~同年12月の間に基準内賃金及び代表的な手当の各5%減額等を行い、これによりJALIの運航乗務員の平成22年度の賃金水準は平成17年度の75%の水準まで低下したこと、平成22年3月~8月の間、2度にわたり特別早期退職を募集して約374名の運航乗務員が応募したこと、同年9月~同年12月9日の間に、4度にわたり希望退職を募集して、稼働ベースで279名の運航乗務員が応募したこと、同月10日~同月27日の間に、希望退職を募集して、稼働ベースで12名の運航乗務員が募集したことから、Y社は本件解雇に先立ち、一定の解雇回避努力を行ったことが認められる

4 Y社は、平成22年9月29日~同年12月24日の間、運航乗務員を組合員とする日本航空乗員組合及び日本航空機長組合との間で、それぞれ13回の団体交渉・説明を行ったこと、本件解雇の対象者に対しても、所定退職金の他に、平均約350万円の特別退職金と所定解雇予告手当の趣旨も含む賃金5か月分の一時金を支給して、その不利益を緩和する措置を採ったことを併せ考慮すると、本件解雇の過程において、整理解雇が信義則上許されないとする事情は認められない

先日、紹介した日本航空(整理解雇)事件と同じ結論です。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。