Monthly Archives: 6月 2012

解雇70(日本基礎技術事件)

おはようございます。

さて、今日は、適格性不足等を理由とする試用期間中の解雇の成否に関する裁判例を見てみましょう。

日本基礎技術事件(大阪高裁平成24年2月10日・労判1045号5頁)

【事案の概要】

Y社は、建築コンサルタント、地盤調査、地盤改良・環境保全工事などを業とする会社である。

Xは、Y社に平成20年4月から新卒者(試用期間6か月)として勤務したが、試用期間中である同年7月29日、Y社で勤務する技術社員としての資質や能力等の適格性に問題があるとして、解雇の意思表示を受けた。

Xは、本件解雇は無効であると主張し、争った。

【裁判所の判断】

解雇は有効

【判例のポイント】

1 Xは、試用期間中の解雇であっても普通解雇の場合と同様に厳格な要件の下に判断されるべきであると主張するが、解約権の留保は、採否決定の当初においては、その者の資質、性格、能力その他適格性の有無に関連する事項について必要な調査を行い、適切な判定資料を十分に蒐集することができないため、後日における調査や観察に基づく最終的決定を留保する趣旨でされるものと解されるのであって、今日における雇用の実情にかんがみるときは、一定の合理的期間の限定の下にこのような留保約款を設けることも、合理性を有するものとしてその効力を肯定することができるというべきである。それゆえ、留保解約権に基づく解雇は、これを通常の解雇と全く同一に論ずることはできず、前者については、後者の場合よりも広い範囲における解雇の自由が認められてしかるべきものといわなければならない(最高裁昭和48年12月12日大法廷判決)。

2 6か月の試用期間のうち、4か月弱が経過したところではあるものの、繰り返し行われた指導による改善の程度が期待を下回るというだけでなく、睡眠不足については4か月目に入ってようやく少し改められたところがあったという程度で改善とまではいかない状況であるなど研修に臨む姿勢について疑問を抱かせるものであり、今後指導を継続しても、能力を飛躍的に向上させ、技術社員として必要な程度の能力を身につける見込みも立たなかったと評価されてもやむを得ない状態であったといえる

3 Xとしても改善の必要性は十分認識でき、改善するために必要な努力をする機会も十分に与えられていたというべきであるし、Y社としても本採用すべく十分な指導、教育を行っていたといえるから、Y社が解雇回避の努力を怠っていたとはいえないし、改めて告知・聴聞の機会を与える必要もない

試用期間中の解雇が有効と判断されたケースです。

適格性不足による解雇なので、解雇をためらうところですが、判例のポイント2のような事情がある場合、裁判所は解雇を有効と判断してくれることもあるわけですね。

また、当該従業員に対する弁明の機会についての判断も参考になります。

なお、このケースでも、会社は、Xに対して繰り返し指導を行っています。

たいした指導もせずに解雇すると、無効になりますので、ご注意ください。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介92 1000人の経営者から教わった一流の人の考え方(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます
写真 12-06-08 19 43 39先日、七間町の「こはく」に夜ごはんを食べに行きました

←駿河軍鶏のたたき。引き締まりまくりで、とってもおいしかったです。

「こはく」、レベル高いですね。

今日は、午後は、外部の法律相談があり、夜は、清水の会社で社内セミナーを行います。

100名以上参加されるということで、今からわくわくしています。

今日のセミナーのテーマは、

身近に潜む労務リスク~職場で知っておきたい最新労務知識~

です。

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は本の紹介です。
1000人の経営者から教わった 一流の人の考え方
1000人の経営者から教わった 一流の人の考え方

著者がこれまでに会ってきた数々の経営者から学んだことや気づいたことがまとめられています。

勝間さんに対しては辛口なところがおもしろいです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・ビジネスも同じである。とくに最近は技術も変化が激しいので、風向きもしょっちゅう変わる。時流に乗って一躍時の人となり、ビジネス誌に出まくっていた人が、翌年には忽然と消えてしまったというケースは珍しくない。一方、ずっと第一人者でいるというのは、その間に状況や環境が変わってもそれを乗り越えてきた、あるいは変化に適応してきたということだ。これはかなり力がないとできることではない。・・・いくら驚異的な潜在能力の持ち主であっても、環境が整わないとその力をアウトプットできないというのでは、いかにも脆弱だ。これでは本当に実力があるとはいえない。」(50頁)

確かに。

そもそもの前提として、何十年も風向きや環境が変わらないほうがおかしいです。

最初から、「いつの日か、今までの常識が通用しなくなる日がくる」と思っていれば、慌てふためくこともないと思います。

今、当然の前提としていることが当然の前提にならなくなったとき、その事実をありのまま受け入れて、柔軟に対応できる人が本当に実力のある人なんでしょうね。

そのときそのときの環境をうまく活かして、よりよいサービスを提供する。

結局、それしかないんじゃないかな。

どんな変化も味方につけられるように、日々、意識して準備をしています。

若手弁護士のみなさん、お互い、最高のサービスを提供できるよう、がんばりましょう!!

配転・出向・転籍14(N事件)

おはようございます。

さて、今日は、京都工場から横浜所在の本社への配転命令に関する裁判例を見てみましょう。

N事件(京都地裁平成23年9月5日・労判1044号89頁)

【事案の概要】

Y社は、自動車・電気その他の部品に対するコーティング加工を行う会社である。

XとY社は、平成18年6月に労働契約を締結し、Xは、京都工場で製造課長として勤務をするようになった。

Y社は、平成21年8月、Xに対し、客先や京都工場の部下からXに対する苦情がでていると述べ、解雇すると述べた。

Xは、解雇の撤回を求めるとともに、労働組合に加入し、団体交渉を申し入れた。

Y社は、本件解雇を撤回するとともに、Xに横浜市所在の本社勤務を命じる配転命令をした。

Xは、本件配転命令の撤回を求めて本社での勤務をせず、これに対し、Y社はXが本件配転命令に反して本社で勤務をしなかったことから、給与を支払わなかった。

【裁判所の判断】

配転命令は無効

【判例のポイント】

1 労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働することを合意するものであるところ(労働契約法6条参照)、使用者は、企業目的を達するため、変化する顧客のニーズや経済情勢に合わせて、あるいは労働者の能力開発や育成などをしながら企業を効率的かつ合理的に運営することが必要となり、そのためには、従業員から提供される労働力について、その種類、態様、場所を適正に配置することが必要となるから、通常、使用者が一定の配転命令権を有することは明示あるいは黙示に労働契約において予定されており、多くの場合、就業規則にその旨の定めがされている。
他方、就業規則に配転に関する定めがない場合であっても、それをもって直ちに配転命令権がないということはできないが、配転命令の内容が多様で、労働者の社会生活上、職務上の負担やキャリア形成に与える影響も様々であることや、労働契約の内容は労働者及び使用者が対等な立場で自主的交渉において合意することにより締結し、変更されるべきであること(労働契約法1条、3条1項参照)にかんがみると、Y社が主張するように、労働契約を締結したことにより使用者が包括的な配転命令権を取得するということはできないのであり、労働契約締結の経緯・内容や人事異動の実情等に照らして、当該労働契約が客観的に予定する配転命令権の有無及び内容を決すべきである。
そして、本件配転命令は、住居の移転を伴う配転を命じるものであるところ、このような配転命令は、使用者が配慮すべき仕事と家庭の調和(労働契約法3条3項)に対する影響が一般的に大きなものであるから、その存否の認定判断は慎重にされるべきものであると考える

2 Y社の就業規則には、諸規則や上長の指示命令に従うことを定めた32条があるが、その文言に照らすと、これをもってY社の配転命令権の根拠とすることはできず、他に配転命令権に関する定めが一切ないと認められる。そして、Y社の求人広告においても、Xの採用面接においても、勤務地が京都工場であるとされていた上、転居を伴う異動の可能性があることについての説明が全くされていない。また、Xの採用は、長期人材育成を目的とした新卒者の採用ではなく、管理職としての即戦力を重視して、当初から京都工場で勤務するために行われた中途採用であって、本社で採用された後に京都工場に配置されたものではない。加えて、転居を伴う配転実績も、本件配転命令が発令されるまでに、約20年前に1件、約12年前に1件の合計2件あったのみであり、Y社の企業規模を考慮しても極めて少ないといわざるを得ない
これらのことからすると、本件労働契約において転居を伴う配転が客観的に予定されていたとはいえず、Y社に本件配転命令をする権限があったとは認められない

3 これに対し、Y社は、Y社がXの雇用維持を考慮して解雇を回避し、配転命令としたにもかかわらず、配転命令が無効であるとなれば、(1)解雇権濫用法理を前提とする日本の雇用システムにおいて矛盾となること、(2)整理解雇の4要素のうち解雇回避努力において配転の可能性の考慮が求められていることと相反することを指摘する。
・・・しかしながら、一般的な配転命令権が認められない場合であっても、使用者が個々の場面で配転に対する労働者の個別の同意を得る努力をすることで、解雇を回避することは可能なのであり、解雇権濫用法理や整理解雇における解雇回避努力の要請も、それを前提にしていると解されるから、当裁判所の考え方も、解雇権濫用法理を前提とする日本の雇用システムと矛盾したり、整理解雇の解雇回避努力において配転の可能性の考慮が認められていることと相反するものではない。かえって、上記の極限的な場面を想定することで、労働者の社会生活上、職務上の負担に影響する配転命令権を安易に認めるのは相当とは思われない

配転命令に関する裁判所の考え方がよくわかります。

京都から横浜への転居が必要となる配転ということもあり、比較的厳しい判断がされています。

上記判例のポイント3は、思考方法として参考になりますね。

解雇回避努力との関係でどのように考えたらよいかは、会社側とすれば当然悩ましい問題です。

裁判所は、「極限的な場面を想定することで・・・配転命令権を安易に認めるのは相当とは思われない」と判断しています。

会社側としては、どのような判断が妥当かを適切に判断するのはとても難しいと思います。

実際の対応については顧問弁護士に相談しながら行いましょう。

本の紹介91 マクドナルドの経済学(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

マクドナルドの経済学
マクドナルドの経済学

マックの社長原田さんとテレビでおなじみ東大教授の伊藤さんの対談形式の本です。

これまでも何冊か原田さんの本を紹介してきましたが、この本もとても勉強になります。

「他分野の顧客を取り込むこと」「他業種を競争相手として考えるビジネス戦略」の重要性が説かれています。

業界は違っても、参考になる部分は非常に多いです。

この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

伊藤 いま日本で業績不振に陥った企業をよく見ていると、原田会長のいう『らしさ』を失ったところが多いのかもしれません。では、企業の『らしさ』を保つためには、どうすればよいのでしょうか。

原田 それには『お客様の声に迎合しすぎないこと』という覚悟をもつことも大事でしょう。たとえば、マクドナルドのメニューに関するアンケートを取りますと、『オーガニックで、ヘルシーなメニューをそろえてほしい』という声が寄せられます。ところが、いざそうしたものを提供しても、あまり売れていない。

伊藤 なるほど(笑)

原田 ・・・『マクドナルドらしさ』を追求するのであれば、メニューについてはやはり『アメリカらしさ』を貫かなければなりません。・・・いたずらに日本のお客様の消費傾向に迎合する商品を小手先でつくっても、受け入れていただけません。」(49~50頁)

非常に参考になりますね。

その会社「らしさ」を失ったサービスを提供しても、決して、うまくはいかないというわけです。

顧客の声に迎合しすぎることにより、あれやこれやと何でも取り入れると、最終的に、その会社「らしさ」がどんどんなくなってしまうんですね。

まずは、自分の会社や事務所がどのような「らしさ」を持っているのかがわかっていないといけません。

次に、その「らしさ」、つまり、ブランディングを貫くことが必要です。

この商品、この分野といえば、この会社、この事務所と言っていただけるためには、根っこの理念がぶれないことが大切です。

常にこのことを頭に入れておかなければ、いろんなことをやりたくなってしまうんですよね。

私の事務所でも、たくさんの新しいアイデアがありますが、事務所らしさがないものについては、手を出しません。

これから5年間は、ますます「らしさ」を追求していく予定です。

管理監督者28(HSBCサービシーズ・ジャパン・リミテッド(賃金等請求)事件)

おはようございます。 

さて、今日は、管理監督者性と未払残業代等の請求に関する裁判例を見てみましょう。

HSBCサービシーズ・ジャパン・リミテッド(賃金等請求)事件(東京地裁平成23年12月27日・労判1044号5頁)

【事案の概要】

Y社は、A銀行東京支店等の関連会社から受託した業務を行う外国法人であり、Xは、人材紹介会社の紹介を受け、平成19年12月にY社に入社すると、A銀行東京支店へ出向という形で、個人金融サービス本部に勤務していた。

Xは、採用時に、期間の定めのない労働契約が締結され、年俸は1250万円とされたが、3か月の試用期間満了時に、Y社から本採用を拒否された。

Xは、Y社に対し、未払残業代とその付加金等を請求した。

これに対し、Y社は、Xは労基法41条の管理監督者であるか、仮にそうでないとしても割増賃金を年俸に含める合意が成立していたなどと主張し争った。

【裁判所の判断】

管理監督者性を否定
→未払残業代として約325万円の支払いを命じた

【判例のポイント】

1 労働基準法41条2号の「監督若しくは管理の地位にある者」(管理監督者)とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体の立場にある者をいい、管理監督者か否かは、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきである。そして、管理監督者と認められるためには、(1)職務の内容が、少なくともある部門の統括的なものであって、部下に対する労務管理上の決定等について一定の裁量権を有していること、(2)自己の出退勤を始めとする労働時間について裁量権を有していること、(3)一般の従業員に比してその地位と権限にふさわしい賃金上の処遇を与えられていることが必要であると解される

2 管理監督者に当たるか否かの判断は、管理監督者に当たるとされた労働者について、労基法の定める時間外労働等に関する規制の適用がすべて排除されるという重大な例外に係る判断であるから、管理監督者の範囲は厳格に画されるべきであるところ、インターネットバンキング担当のVPというXの職務上の地位や権限は、上記規制の適用が排除されても、当該労働者の保護に欠けるところがないと断定できるほど高次のものでなかったことは明らかである

3 年俸の中に時間外労働等に対する割増賃金が含まれるとする合意については、年俸のうち割増賃金に当たる部分とそれ以外の部分とを明確に区別することができる場合に限り、その有効性を認めることができると解されるところ(最高裁昭和63年7月14日・労判523号6頁)、XとY社との間の契約においては、そのような明確な区分がされているものとは認められないから、法定時間外労働等に対する割増賃金について、これを年俸に含むとする旨の合意は、労基法37条に反し無効であると言わざるを得ない
なお、Y社は、(1)Xに過重労働はないこと、(2)Xは年俸1250万円という高額の報酬を受けていること、(3)X自身も年俸とは別に割増賃金が支給されるものとは考えていなかったこと等の事情に照らせば、年報に含む旨の合意の効力が認められるべきである旨をも主張するが、独自の見解であって採用の限りではない。

4 さらに、Y社は、いわゆる法内残業については、これを年俸に含むものとしても何ら労基法に定職するものではないから、年俸に含む旨の合意により、Y社には法内残業に係る賃金の支払義務はないとも主張する。
・・・このような法内残業について、年俸に含む旨の合意の効力を認めても、何ら労基法に反する結果は生じないから、法内労働に対する賃金につき、これを年俸に含むものとする旨の合意は有効であって、Y社には、法内残業に対する賃金の支払義務はないものと解するのが相当である
なお、この点については、就業規則の最低基準効(労働契約法12条)との関係も問題となり得るが、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められるY社の賃金規程によれば、Y社においては、Xのように年俸制で採用された従業員に対しては、所定時間外労働及び所定休日労働に対する割増賃金は支払われないものとされていることが認められるから、法内残業に対する賃金が年俸に含まれる旨の合意の効力を認めても、就業規則との抵触は生じない。
以上によれば、年俸に含む旨の合意は、法定時間外労働、法定休日労働及び深夜労働については無効であるが、いわゆる法内残業に対する限度では有効であるということができる

この事件、本人訴訟みたいですね。

管理監督者性については、いつもどおり、否定されています。

年俸制と残業代の関係については、既に判例がありますので、特に目新しい点はありません。

今回、参考になるのは、上記判例のポイント4の法内残業に関する考え方ですね。

年俸に法内残業に対する賃金を含めるという合意は有効であるようなので、その点について、書面で明確に合意をしておくことをおすすめいたします。

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。

本の紹介90 一流の人に学ぶ自分の磨き方(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 

さて、今日は本の紹介です。
一流の人に学ぶ自分の磨き方

一流の人に学ぶ自分の磨き方

典型的な自己啓発本ですね(笑)

一流の人と二流の人の差は紙一重だとし、考え方のちょっとした違いが、大きな差として表れるようです。

小さなものが寄せ集まると最後には決定的な違いとなってあらわれるようです。

実際そうですよね。

オーソドックスな内容で、変な変化球もなく、すーっと入ってくる本です。

いい本だと思います。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

二流の人は失敗を苦痛とみなし、プライドを守るために失敗を避けるべきだと考える。だからできるとわかっていることしかしようとしない。
一流の人はプライドを守ることに興味がない。彼らに興味があるのは、学習し、成長し、変身することだ。
一流の人は失敗を成功の条件とみなし、失敗を教師として教訓を学ぼうとする。
・・・一流の人は失敗を軌道修正の好機とみなす。それは快適とは限らないが、ビジョンの実現に必要な知恵を得るために不可欠だと考える。
二流の人は失敗しないことに集中して多くの時間を空費する。
一流の人は失敗を生かして成功に結びつけることを考える。
」(148~149頁)

一流か二流かはさておき、失敗についてどのように考えるかによって、人生や仕事での幸福感がかなり変わってくると思います。

これは完全に考え方の問題であって、性格の問題ではありません。

つまり、誰でも考え方を変えれば、今よりも幸福感を感じることができると思っています。

「失敗を成功の条件とみなし、失敗を教師として教訓を学ぼうとする」姿勢が身につけば、そう簡単には心が折れなくなります。

新しいことに挑戦し続ける以上、死ぬまで失敗がついてまわります。

失敗するのがいやなら、ずっと同じことをしていればいいのです。

でも、そんなのつまらないですよね。 生きている心地がしません。

失敗したときにこそ、もう一つ上のステージに上がれるチャンスととらえることは誰にでもできることです。

幸い、僕は、このような考え方ができるようになったので、失敗を単なる失敗として終わらせることはありません。

どんどん挑戦して、失敗をしながら、すすんでいくしかないのです。

それが人生なんだと思います。

不当労働行為41(京都市事件)

おはようございます。

さて、今日は、嘱託契約不更新、団交応諾義務と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

京都市事件(京都府労委平成24年2月28日・労判1044号93頁)

【事案の概要】

平成22年4月から平成23年3月まで非常勤嘱託員として京都市の行財政局総務部総務事務センターに任用されていたXは、22年9月、同センター長Aの提案した文書運搬業務の変更について、同僚の嘱託員と共に再検討を求め、同年11月、Aは提案を撤回した。

AはXに対し、勤務時間中にパソコンを使って業務と関係のないホームページの閲覧を行ったこと等について面談を行い、AはXに服務指導に応じるよう命じる旨の業務命令書を交付した。

組合は、市に嘱託員の雇用継続等を求めて団交を申し入れ、Aの服務指導がパワハラに当たるおそれがあるとし中止を求めるやりとりを行った。

23年2月、行財政局人事部長Bは、組合の役員に対し、Xが服務指導を受けない限り任用の更新はできない、服務指導に応じれば「一旦リセットして考える」などと述べ、Xは服務指導に応じた。

組合は、嘱託員の雇用継続およびXに対する服務指導のあり方に関する団交を申し入れたが、京都市は、団交申入れの際に組合役員が職場内で大声を発したことなどを理由として団交に応じなかった。

同年3月末、京都市は、Xに対し4月末まで任用するが、同日をもって任用を更新しないと通知した。

【労働委員会の判断】

嘱託契約不更新は不当労働行為にはあたらない

団交に応じないことは不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 ・・・このような事実からすれば、AがXに対する服務指導に係る対応の経過はいささか不自然であると考えざるを得ない。さらに、Aは、業務命令書まで発してXを面談に応じさせようとしており、これについてはIも異常と発言している。
このような不自然な経過及び態様からすれば、AがXに対してとった服務指導に係る対応には行き過ぎがあったものといわざるを得ない。そして、その後も、平成23年2月8日の団体交渉で、京都市自身が、Aの対応がパワハラかどうか検討する間、Xに対する働きかけを凍結する旨回答し、・・・Xの任用の更新に対する期待について十分な合理性が認められることをあわせ考えれば、京都市の主張する面談拒否等をもって、Xの任用の更新を行わないまでの理由とすることには、その合理性に疑念を抱かざるを得ない

2 Xは、本件非更新の理由に合理性がないことから、本件非更新がXの組合活動の故であることが推認されると主張するが、単に本件非更新の理由に合理性がないからといって、直ちに、それが組合活動の故になされたものであるとはいえない。
・・・本件非更新の理由は、もともと服務指導に応じるよう求められていたXが、この指導に応じなかったことにあり、組合がこのような指示を行ったか否かにかかわりなく、本件非更新は行われたものと推認されるから、本件非更新は組合活動の故になされたものとはいえない
。よって、組合の主張は採用できない。

3 以上、判断したとおり、本件非更新は労組法7条第1号の不利益取扱いには該当せず、よって、同条第3号の支配介入にも該当しない。

京都市が団交に応じなかったことは不当労働行為に該当するとの判断は、いつもの通りです。

それに対して、Xを更新しなかったことについては、合理性に疑問があるにもかかわらず、組合活動の故になされたものではないと判断し、不当労働行為には該当しないということです。

Xとすれば、京都市を相手として、民事訴訟で任用不更新の効力を争うのとともに、慰謝料請求をすることが考えられますね。

なかなか任用不更新の効力を覆すのは大変ですが。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介89 議論に絶対負けない法(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。

議論に絶対負けない法: 欲しいものを手に入れる「必勝のセオリー」
議論に絶対負けない法: 欲しいものを手に入れる「必勝のセオリー」

アメリカの弁護士が書いた本です。

この本は、今から15年以上前に出版された本を再編集したものです。

内容的には、かなりすっきりしたため、とても読みやすくなりました。

もっとも、最初に出された本を読んだことがある人は、この本を読むと、少し味気なく感じると思います。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『一に準備、二に準備!』 私がそう言うと、若い弁護士は当てがはずれたような顔をする。彼らは労働を迂回できるような、楽な方法を知りたくて仕方がないのだ。しかし、本当の準備は労働などではない。
準備とは、創造する喜びだ。準備とは人生を苦労して前進すること、悩みながら生きていくこと、波にもまれながら生きていくこと、人生を生きることだ。
並はずれたIQを持っているが準備をするチャンスに恵まれなかった人よりも、力強い議論の準備を整えているふつうの人になりたい。
結局、天才とは脳細胞を決定したDNAのことを言うのではない。天才とはエネルギーだ。天才は準備で作られる。
」(101~102頁)

心に響きますね。

準備とは、創造する喜びだ。

準備とは、人生を苦労して前進することだ。

準備とは、悩みながら生きていくことだ。

準備とは、人生とは波にもまれながら生きていくことだ。

準備とは、人生を生きることだ。

悩みながら進んでいくこと自体を楽しめるようになったら、もうひとつ上のステージに上がれるような気がします。

早くこの問題から解放されたいと考えるのではなく、徹底的に問題と向き合うことで見えてくることがあります。

問題から目を背けても何の解決にもならないことは経験上よくわかっています。

徹底的に向き合うしかないわけです。

もうひとつ上のステージに上がるチャンスと捉えることができれば、あとはやるべきことをやるだけです。

有期労働契約29(リンゲージ事件)

おはようございます。

さて、今日は、語学教室外国人講師に対する雇止めの有効性に関する裁判例を見てみましょう。

リンゲージ事件(東京地裁平成23年11月8日・労判1044号71頁)

【事案の概要】

Y社は、リンガフォン事業、グローバルスタディ事業等を事業内容とする会社である。

Xは、平成10年、A社と期間1年の雇用契約を締結し、英会話の授業等の業務に従事した。

同契約は8回にわたり更新された。その後、Y社は、A社は、A社から事業譲渡を受け、その事業を引き継いだ。

Y社における組合の組合員はXを含め3名となり、組合が再結成され、Xが執行委員長に就任した。

Y社は、組合活動再開の動きの中で、各校の管理者に宛てて、本件組合の組合員3名について、「どんなに小さいことでも気になる行動は報告」すること等を求める内容の電子メールを発出した。

その後、Xは、レッスン中、生徒に自分の腹部を触らせる等の問題行動、不適切行為、業務命令違反が数多く発覚した。そのため、Y社はXに対して、3度にわたり警告書を発出したが、Xは、同警告書に署名することを拒否した。

Y社は、平成20年11月、Xに対し同年12月の期限経過をもって本件契約が更新されない旨を通知した。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

【判例のポイント】

1 本件雇止めを受けるまで10年間にわたり、A社ないし同社から事業譲渡を受けたY社において雇用され、その間、A社とは8回、Y社とは1回の契約更新を経ているXが、本件契約が更新されると期待することに合理性があるとして、本件雇止めに解雇権濫用法理が類推適用されるものと解するのが相当である

2 A社及びY社においては、外国人講師の契約更新時に、当該講師のレッスン内容や適格性に応じた契約内容の見直しが一定程度予定されていたものと認められるから、本件雇止めに解雇権濫用法理の類推適用が認められるとは言っても、その際の判断基準は、通常の期間の定めのない契約における解雇の場合に比して、必ずしも厳格なものであることを要しないと解するのが相当である。

3 本件雇止めは、組合員のみをターゲットにした情報収集によって得られたネガティブ情報に基づいて行われたものであり、当該情報収集がなければ、本件雇止め自体が存在しなかったという関係にあるものと認められるから、本件雇止めが社会的に相当なものであると言えるかについては重大な疑問が存すると言わざるを得ない

4 本件雇止めについては、厳密な意味で不当労働行為に該当するかはともかく、Xが本件組合の組合員であったことに起因して課せられた不利益であると評価せざるを得ず、そうであるとすれば、本件雇止めは、社会的に相当なものであるとは認め難いから、無効と言うほかはない

雇止めを無効と判断した理由が変わっていますね。

情報収集のしかたが、相当でないことを理由としています。

このような理由から雇止めや解雇が無効になる可能性があるということは頭に入れておきたいですね。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。

本の紹介88 コンフィデンス・シンキング(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 

さて、今日は本の紹介です。
コンフィデンス・シンキング ~成功のための7つの絶対原則~
コンフィデンス・シンキング ~成功のための7つの絶対原則~

コンフィデンス・シンキング・・・?

自信思考・・・?

帯には、「自信に根拠はいらない。その『自信』がすべてを可能にする。」と書かれています。

全体を通して、根拠のない自信の重要性が説かれています。

わかりやすいことばでいいことが書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『絶対的な自信』を持つことを阻む要素が、あなたのすぐ身近に存在します。それは『他者の声』です。悪いことに、そして多くの人がこの事実に気づいていないのですが、家族、恋人、友人など、身近な人であればあるほど、ドリームキラー(夢の殺し屋)となって、あなたが自信を持つことを阻むのです。
・・・『無理に決まっているだろ!』『夢みたいなこと言って。ちゃんと現実を見なさい。』・・・というふうに、完全否定されるケースが圧倒的多数を占めます。
」(34~35頁)

他人の声に揺れて自信を失うことが、ひいては、自分の人生を他人に支配されることが、いかに自分の無限の可能性を自分で狭めることになるか分かると思います。根拠はなくてかまいません。」(39頁)

自信を持つ、自信を持たせることの大切さは、よくわかります。

自信を持つことにより、自分の選択がぶれなくなる気がします。

根拠のない自信でも構わないとは思いますが、やはり、根拠のある自信の方がよりいいですよね。

自分で自分はごまかせないですから。

単に「僕はできる!僕ならできる!」と念仏を唱えていても、心の中では、「失敗したらどうしよう・・・」と不安に思っているのです。

そうではなくて、根拠のある自信、つまり、これまでの経験や成功体験に裏づけられた自信を持つべきだと思います。

そのためにはどうしたらよいか。

やはり、小さな成功を繰り返すしかないんだと思います。

小さな目標を設定し、着実に達成していくことが最も効果的だと思います。

大きな問題は、できるだけ小さい問題に分けて、解決できるところからどんどん解決していくということを習慣化すれば、自ずと「根拠のある自信」が生まれてくると信じています。