Daily Archives: 2012年6月7日

不当労働行為41(京都市事件)

おはようございます。

さて、今日は、嘱託契約不更新、団交応諾義務と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

京都市事件(京都府労委平成24年2月28日・労判1044号93頁)

【事案の概要】

平成22年4月から平成23年3月まで非常勤嘱託員として京都市の行財政局総務部総務事務センターに任用されていたXは、22年9月、同センター長Aの提案した文書運搬業務の変更について、同僚の嘱託員と共に再検討を求め、同年11月、Aは提案を撤回した。

AはXに対し、勤務時間中にパソコンを使って業務と関係のないホームページの閲覧を行ったこと等について面談を行い、AはXに服務指導に応じるよう命じる旨の業務命令書を交付した。

組合は、市に嘱託員の雇用継続等を求めて団交を申し入れ、Aの服務指導がパワハラに当たるおそれがあるとし中止を求めるやりとりを行った。

23年2月、行財政局人事部長Bは、組合の役員に対し、Xが服務指導を受けない限り任用の更新はできない、服務指導に応じれば「一旦リセットして考える」などと述べ、Xは服務指導に応じた。

組合は、嘱託員の雇用継続およびXに対する服務指導のあり方に関する団交を申し入れたが、京都市は、団交申入れの際に組合役員が職場内で大声を発したことなどを理由として団交に応じなかった。

同年3月末、京都市は、Xに対し4月末まで任用するが、同日をもって任用を更新しないと通知した。

【労働委員会の判断】

嘱託契約不更新は不当労働行為にはあたらない

団交に応じないことは不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 ・・・このような事実からすれば、AがXに対する服務指導に係る対応の経過はいささか不自然であると考えざるを得ない。さらに、Aは、業務命令書まで発してXを面談に応じさせようとしており、これについてはIも異常と発言している。
このような不自然な経過及び態様からすれば、AがXに対してとった服務指導に係る対応には行き過ぎがあったものといわざるを得ない。そして、その後も、平成23年2月8日の団体交渉で、京都市自身が、Aの対応がパワハラかどうか検討する間、Xに対する働きかけを凍結する旨回答し、・・・Xの任用の更新に対する期待について十分な合理性が認められることをあわせ考えれば、京都市の主張する面談拒否等をもって、Xの任用の更新を行わないまでの理由とすることには、その合理性に疑念を抱かざるを得ない

2 Xは、本件非更新の理由に合理性がないことから、本件非更新がXの組合活動の故であることが推認されると主張するが、単に本件非更新の理由に合理性がないからといって、直ちに、それが組合活動の故になされたものであるとはいえない。
・・・本件非更新の理由は、もともと服務指導に応じるよう求められていたXが、この指導に応じなかったことにあり、組合がこのような指示を行ったか否かにかかわりなく、本件非更新は行われたものと推認されるから、本件非更新は組合活動の故になされたものとはいえない
。よって、組合の主張は採用できない。

3 以上、判断したとおり、本件非更新は労組法7条第1号の不利益取扱いには該当せず、よって、同条第3号の支配介入にも該当しない。

京都市が団交に応じなかったことは不当労働行為に該当するとの判断は、いつもの通りです。

それに対して、Xを更新しなかったことについては、合理性に疑問があるにもかかわらず、組合活動の故になされたものではないと判断し、不当労働行為には該当しないということです。

Xとすれば、京都市を相手として、民事訴訟で任用不更新の効力を争うのとともに、慰謝料請求をすることが考えられますね。

なかなか任用不更新の効力を覆すのは大変ですが。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。