Monthly Archives: 5月 2012

本の紹介82 君の歳にあの偉人は何を語ったか(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。
君の歳にあの偉人は何を語ったか (星海社新書)
君の歳にあの偉人は何を語ったか (星海社新書)

コンセプトがとてもユニークで、すばらしいです。

野口英世は、20歳のときにこんなことを言っていましたよ。

ダーウィンは、22歳のときにあんなことを言っていましたよ。

といった具合に、総勢38人の偉人の言葉が集められています。

単なる名言集とは切り口が違うという点で、すでに参考になります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『忠告はほとんど役に立てません。自分自身のやってきたことと激励だけが役に立ちます』とアインシュタインは74歳で言った!」(212頁)

どの偉人の言葉を選ぼうか悩みましたが、アインシュタインさんのこの言葉にしました。

この言葉についてのエピソードがまとめられています。

・・・74歳の誕生日に記者とこんなやりとりがあった。
記者 『科学の研究を仕事としようとしている学生には、どういうことを忠告したいとお考えですか?』
アインシュタイン 『研究への意欲をもつ人はすでに自分の道を発見しているものです。忠告はほとんど役に立ちません。自分自身のやってきたことと激励だけが役に立ちます』
」(214頁)

応援だけしてくれればいいんですよね。

大切なのは、自分でいろんな経験をするということですよね。

あまりにも人の忠告に頼ってしまうと、いざというときに決断できなくなります。

自分で決断し、実行してきたことこそが、自信につながるのだと信じています。

派遣労働10(アデコ(雇止め)事件)

おはようございます。

さて、今日は、派遣会社が派遣先に対し、派遣社員の経歴を偽って告げたこと等による慰謝料請求に関する裁判例を見てみましょう。

アデコ(雇止め)事件(大阪地裁平成19年6月29日・労判962号70頁)

【事案の概要】

Y社は、一般労働者派遣事業、有料職業紹介事業等を業とする会社である。

Xは、平成14年、Y社に雇用された者である。

Xは、Y社に採用された後、Y社において、スーパーバイザー(SV)職の研修を受けた。

SVとは、テレマーケティングスタッフのマネジメントを実施する者をいい、具体的には、スタッフの応答品質の維持・管理、ヘルプ・クレーム対応、スタッフの育成・監督、業務管理などを行う者である。

Y社アウトソーシングサポート部運営課マネージャーのBは、Xに対し、平成14年12月、A社に提出するXの経歴表を見せたが、同経歴表には、「教材関連 アウトバウンド(教材継続勧奨・新規購読勧奨)」と記載されていた。

Xには、本件虚偽記載に係る経歴はない。

Xは、成15年2月から、A社のコールセンターで就労を開始し、SV業務に従事したが、上手くこなすことができなかった。

その後、Xは、Y社から解雇ないし雇止めをされた。

Xは、Y社に対し、不法行為に基づく損害(慰謝料、治療費、弁護士費用)の賠償等及び地位確認を求めた。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 甲32号証中にはカレンダーアンケートを少しした旨の記載があるが、これは「少し」であるに過ぎないことのほか、Xはアウトバウンド業務の研修を受けていたこと、甲31号証中にインバウンド業務のみでアウトバウンド業務を行っていない旨の記載のあること及びX本人尋問結果中にも、Xがアウトバウンド業務を担当していない旨の供述が存することに照らすと、Xが実質的なアウトバウンド業務に従事し、ひどく難渋していたような事情は認められず、アウトバウンド業務に関してXが負荷を感ずることがあったとしても、社会通念上、受忍限度内のことと解するのが相当である

2 Xは、甲29号証及び同34号証で、A社におけるSV業務遂行中の苦労について縷々陳述しており、同人がA社でSV業務遂行中、管理職ないしSV業務の経験がなかたことや共に派遣されたZが経験者であったことから、同人と比較される等してストレスないし精神的負荷を負ったことは窺える。
しかしながら、これらは、旧知の同僚等のいない、かつ、新しい体制を構築しようとする職場において、未経験の者が新しい職場にて就業する場合(このような場合は、社会生活の中ではしばしば見受けられることである。)にしばしば経験することであって、Xの負った負荷ないしストレスが、社会通念上受忍すべき範囲を超えるものと認められない。また、Xの負った負荷ないしストレスは、本件虚偽記載の存否に関わるものというよりも、SV経験のないことや、X自身の管理監督職への適格性・OJTによる業務吸収能力・対人関係処理能力などの要因により、SV業務を円滑にこなすことができなかった結果によるものと解される

3 Xは、SVないし管理職の経験がないにもかかわらず、SV業務についており、その分負荷が大きかったと解されるが、そもそも、Xは、SVや管理職の経験がないにもかかわらず、管理職を募集していると考えてSV業務に応募したものであり、その後も研修を通じて、SV業務が如何なる業務かについてある程度理解し、あるいは概略的なイメージを持つことができた(なお、現実に就労しなければ分からないことまで事前に理解する必要はない。)にも関わらず、自己がSV業務の経験がないことを理解しながら、事前に他の業務に就くことを申し出ることもせずに、自ら希望してA社のSV業務についたものである
そして、SVないし管理職経験のない者が自らこれらの職業を選択し、相当大きな苦労をしながらも、これをこなしていくことも正常な社会生活上の営みといえるところ、そのような選択をした者が経験不足等により相応の負荷を負担することも相当といえ、社会通念上相当と認められる範囲を逸脱するような特段の事情のない限り、業務遂行に伴う負荷ないしストレスについても受忍すべきである。このことはXについても妥当するのであって、本件記録上、Xの負った負荷が社会生活上相当と認められる範囲を逸脱するものと認めるに足る証拠はない。

Xが派遣先でストレスを感じたことは否定していないものの、それは、新しい仕事をする際、多くの人が感じる程度の負荷やストレスであり、受忍すべき範囲のものだとしています。

個々の事情を総合的に判断することになるので、この裁判例から一般的な判断基準をつくりだすのはなかなか難しいですね。

今回のケースでは、業務内容が近かったこと、X自身が希望してSV業務についたことが大きいですね。

派遣元会社も派遣先会社も、対応に困った場合には速やかに顧問弁護士に相談することをおすすめします。

本の紹介81 日本の心がマーケティングを越える(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。
日本の心がマーケティングを超える: おかげさまの心 ぶれない心
日本の心がマーケティングを超える: おかげさまの心 ぶれない心

一瞬で題名にやられました。

興味をそそる題名ですね。

この本では、マーケティングを以下のとおり定義づけています。

マーケティングとは、消費者が持つ不満や欲求を知りその解決策を考え出して実践してこれまでになかった需要を創り出す『お役立ち』の競争です」(20頁)

どれだけ顧客に「お役立ち」のサービスを提供できるかがポイントになるわけですね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

すべてのコストの負担者は顧客だ、顧客に関係ないコストが発生し始めた会社は潰れる。・・・顧客からいただいたお金を関係ないところに使うのは顧客への還元にならないので、いずれ競合に負けるわけです。・・・企業は利益が出始めると、次期商品の開発研究、新規事業への投資へと向かいます。顧客に関係ある費用です。ところが、時には社長室が豪華になり、車と運転手が付き、取引を有利にするための接待が増加します。それが社内の上から始まり全体にはびこります。これを止めようという者がいなくなります。徐々に顧客から遠いコストが発生してきます。・・・顧客からいただくお金を大切に顧客のために使う精神に戻れば、経営の道を踏み外すこともなくなることでしょう。」(85~86頁)

「顧客からいただくお金を大切に顧客のために使う」。

大切なことですね。

弁護士も同じです。

報酬を全てプライベートに使っていては、サービスは一向に向上しません。

設備投資をどんどん行い、顧客に還元することを忘れてはいけないと思います。

自分の会社や事務所をよくしたい、その結果、顧客の満足度を上げたいと思っていれば、自然とそのように思えるのではないでしょうか。

解雇68(日本ヒューレット・パッカード事件)

おはようございます。

さて、今日は、無断欠勤等を理由とする諭旨退職処分に関する最高裁判例を見てみましょう。

日本ヒューレット・パッカード事件(最高裁平成24年4月27日)

【事案の概要】

Y社は、電子計算機等およびそれらのソフトウェアの研究開発、製造等を目的とする会社である。

Xは、Y社に平成12年10月、雇用されたシステムエンジニアである。

Xは、平成20年4月以降、Y社に対し、Xに対する職場での嫌がらせ、内部の情報の漏洩等を申告し、その調査を依頼した。

Xは、B部長と電話で相談し、問題が調査されるまで、特例の休暇を認めるよう依頼した。

その後、B部長は、Xに対して、調査の結果、本件被害事実はないとの結論に達した旨回答した。

Xの有給休暇は、すべて消化された状態となったが、Xは、その後、約1か月間、欠勤を継続した。

Y社の人事統括本部のC本部長は、Xに対し、「貴職は、会社が認める正当な理由がなく、2008年6月上旬以降、勤務を放棄し、欠勤しています。理由なき欠勤は、あなたが会社に対して負っている労務提供義務についての著しい違反となり、このままの状態が更に続くと、最悪の事態を招くことにもなります。よって、会社として、直ちに出社し就業するよう命じます」とのメールを送付した。

XはY社に対し、明日から出社する旨をメールで伝え、翌日、出社した。

Y社は、その後、Xに対し、諭旨退職処分とする旨通告した。

Xは、本件諭旨退職処分の効力を争った。

【裁判所の判断】

上告棄却
→諭旨退職処分は無効

【判例のポイント】

1 原審の適法に確定した事実関係等によれば、Xは、被害妄想など何らかの精神的な不調により、実際には事実として存在しないにもかかわらず、約3年間にわたり加害者集団からその依頼を受けた専門業者や協力者らによる盗撮や盗聴等を通じて日常生活を子細に監視され、これらにより蓄積された情報を共有する加害者集団から職場の同僚らを通じて自己に関する情報のほのめかし等の嫌がらせを受けているとの認識を有しており、そのために、同僚らの嫌がらせにより自らの業務に支障が生じており自己に関する情報が外部に漏えいされる危険もあると考え、Y社に上記被害に係る事実の調査を依頼したものの納得できる結果が得られず、Y社に休職を認めるよう求めたものの認められず出勤を促すなどされたことから、自分自身が上記の被害に係る問題が解決されたと判断できない限り出勤しない旨をあらかじめY社に伝えた上で、有給休暇を全て取得した後、約40日間にわたり欠勤を続けたものである。

2 このような精神的な不調のために欠勤を続けていると認められる労働者に対しては、精神的な不調が解消されない限り引き続き出勤しないことが予想されるところであるから、使用者であるY社としては、その欠勤の原因や経緯が上記のとおりである以上、精神科医による健康診断を実施するなどした上で(記録によれば、Y社の就業規則には、必要と認めるときに従業員に対し臨時に健康診断を行うことができる旨の定めがあることがうかがわれる。)、その診断結果等に応じて、必要な場合は治療を勧めた上で休職等の処分を検討し、その後の経過を見るなどの対応を採るべきであり、このような対応を採ることなく、Xの出勤しない理由が存在しない事実に基づくものであることから直ちにその欠勤を正当な理由なく無断でされたものとして諭旨退職の措置を執ることは、精神的な不調を抱える労働者に対して使用者の対応としては適切なものとはいい難い。

3 そうすると、以上のような事情の下においては、Xの上記欠勤は就業規則所定の懲戒事由である正当な理由のない無断欠勤に当たらないものと解さざるを得ず、上記欠勤が上記の懲戒事由に当たるとしてされた本件処分は、就業規則所定の懲戒事由を欠き、無効であるというべきである

高裁の判断が維持されました。

メンタル不調者に対する会社の対応は、実際のところ、とても難しいです。

メンタルヘルス関連のご相談が最近とても増えたことからも、顧問先をはじめとする多くの会社の関心事であることは間違いありません。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介80 小さく賭けろ!(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。
小さく賭けろ!―世界を変えた人と組織の成功の秘密
小さく賭けろ!―世界を変えた人と組織の成功の秘密

帯には、

みんな小さく賭けて、素早い失敗、素早い学習を繰り返していた!

と書かれています。

「計画を延々と練っているよりも、失敗を恐れず試行錯誤を繰り返そう」

という内容の本です。

最初から優れたアイデアがあるわけではないのです。

試行錯誤をしているうちに、優れたアイデアが生まれてくるのです。

この本を読んだとき、すぐに「プランB 破壊的イノベーションの戦略」という本と、マクドナルド社長原田さんの「決定したら実行するではなく、決定しなくてもいいからすぐ実行だ!」という言葉を思い出しました。

新しいことをやろうとするときの心構えとして大変参考になります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

「最後まで諦めずにあっちこっちつまずいて、失敗し続けるのが大切なんだ。ありとあらゆる失敗をして最後に残ったのが、正しいやり方。そこで初めて成功できる。・・・最初からあまりに正しいやり方を追い求め過ぎると、われわれは多くの可能性に対し、心理的に目を閉ざしてしまう。どんなエラーも、どんなリスクも冒さないようにしようと思いつめると、創造的な洞察の芽が摘まれてしまう。もっと心にゆとりを持ち、間違った方向にスタートしていたと気づいても、それを創造的プロセスの一環だと見ることが大切だ。」(60頁)

エジソンも同じようなことを言っていますね。

失敗について、このように成功へのプロセスの一環と捉えることができる人は、失敗を引きずることはありません。

「これでまた、一つ、進化できる」くらいにしか思っていません。

成功の前には、必ず失敗があると思っていれば、失敗をプラスのことと捉えることができます。

むしろ小さな失敗をすることが、軌道修正の機会を与えてくれます。

そもそも失敗を恐れるのはなぜなんでしょう・・・?

恥ずかしいからでしょうか。 他人の評価が下がるからでしょうか。

「もうそんなもん、どうだっていいじゃん。別に最初から評価なんて高くないんだし。」

と思える人は、強いですよね。

「この失敗のせいで」と考えるのではなく、「この失敗のおかげで」と考えられると、失敗は失敗ではなくなるのだと思います。

不当労働行為39(大阪兵庫生コン経営者会事件)

おはようございます。

さて、今日は、複数組合間の不平等取扱いと不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

大阪兵庫生コン経営者会事件(中労委平成24年1月18日・労判1042号92頁)

【事案の概要】

Xは、大阪府および兵庫県内の生コンクリート製造会社約70社を会員とする団体である。

Xは、会員各社の平成21年賃金改定等に関して、Y組合およびZ組合と共同交渉を行うとともに、その他3つの組合との間でそれぞれ共同交渉を行った。

Xは、交渉過程で賃上げの有額回答を行うためには、大阪広域生コンクリート協同組合(広域協)が承認可決
した(1)限定販売方式の廃止および(2)ブロック対応金の廃止の施策への労働組合の協力理解が不可欠と考え、これら施策に協力する姿勢を示した組合には、4月14日に有額回答を行う一方、2労組が施策に協力する姿勢を示さなかったとして同月17日まで有額回答をしなかった。

【労働委員会の判断】

組合間で賃上げの回答時期に差を設けたことは不当労働行為に該当する

【判例のポイント】

1 Xは、別労組らに有額回答した同月14日に2労組とも4時間半にわたり交渉しながら、有額回答の条件を明らかにすることはなく、これらについての2労組の考え方を確認することもなく、「先が見えたら同じ回答をする」などと曖昧な回答に終始していた。そして、2労組が、ゼネコンや自治体を回り、広域協を守るために活動していると述べたのに対しても、Xは、具体的な理由も述べず有額回答できない旨繰り返すなど、その交渉態度は、2労組の理解を得るに足る説明や説得を行ったとはいえず、誠実な対応を通じて2労組との間の合意達成を模索する姿勢に欠けるものといわざるを得ない上、およそ2労組に対し別労組らと同時期に有額回答することを目指していたともいえない
このようなXの共同交渉における対応は、有額回答の時期につき別労組らと2労組とを合理的理由もなく差別扱いしたものであり、使用者の中立保持義務に反し、誠実交渉義務を尽くしたものとはいえない

2 ・・・以上に判断したとおり、21年度賃上げに関する2労組との共同交渉において、Xが、別労組らに行った有額回答を行わず、回答時期に差を設けたことは、労組法7条2号及び3号の不当労働行為に当たるとした初審判断は相当である。

複数組合間の中立保持義務に関する判断です。

合理的な理由なく組合により扱いに差をつけると、このような判断につながります。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介79 全盲の僕が弁護士になった理由(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。

全盲の僕が弁護士になった理由
全盲の僕が弁護士になった理由

弁護士大胡田(おおごだ)先生の本です。

私より1歳年上で、静岡県出身だそうです。

お会いしたことはありませんが、親近感を持ちます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

見えないことは確かにハンディだけれど、だからこそできる仕事もある。例えば、目の見えない弁護士が、汗をかきながらドタバタと生きていること自体が、依頼者の心を変えることがある。・・・視力を失って、かつては絶望の中にいた。その僕が、今は人をそこから助け出す仕事をしている。こんなに幸せなことはない。だから、障がいを持ちながら弁護士の仕事や司法試験の勉強をしてきて、泣きたいくらいに『しんどい』と思うことが山ほどあったけれど、『やめたい』と思ったことは一度もなかった。」(11~12頁)

ただでさえ、しんどい司法試験の受験勉強です。

大胡田先生の努力は、並大抵のものではなかったはずです。

自らの障がいをマイナスと捉えるのではなく、「そんな自分ががんばっていることで、依頼者の心を変えることだってある」と考えるところが、素晴らしいです。

もう1つ。

弁護士の仕事や司法試験の勉強をしてきて、「しんどい」と思うことはあったけれど、「やめたい」と思ったことは一度もないという点は、とても共感できます。

自分の仕事が好きかどうかって、大切ですよね。

「自分の子どもに、同じ仕事をさせたいと思いますか?」

という質問に、イエスと答えられるかどうか、だと勝手に思っています。

同じ仕事をするのであれば、今やっている仕事が好きだといえる人たちと一緒に仕事をしたいです。

みなさんは、自分の仕事、好きですか?

解雇67(オンライン不動産事件)

おはようございます。

さて、今日は、システムエンジニア等の整理解雇について見てみましょう。

オンライン不動産事件(横浜地裁平成23年7月28日・労判1042号82頁)

【事案の概要】

Y社は、不動産の仲介および売買業を主な目的とする会社である。

Xは、平成18年3月より、派遣社員としてY社に派遣されて勤務した後、平成19年3月から
Y社の社員として雇用され、就労を開始した。

Xの担当業務は、システムエンジニアである。

Y社は、平成21年10月、Xに対し、労働条件通知書および解雇予告通知書を手渡した。

【裁判所の判断】

整理解雇は無効

【判例のポイント】

1 Y社は、本件解雇がいわゆる変更解約告知に該当し、有効であると主張するけれども、本件解雇がいわゆる変更解約告知に該当するかどうかはさておき、本件解雇が解雇に該当する以上、労働契約法16条の定める解雇権濫用法理の規制に服することは当然である。そして、Y社がいわゆる変更解約告知の該当性として主張する事実は、解雇権濫用法理の適用の有無を判断するに際して、考慮すれば足りるものというべきである

2 本件解雇は、いわゆる整理解雇に該当するものと解されるところ、整理解雇は労働者の責めに帰すべき事由による解雇ではなく、使用者の経営上の理由による解雇であって、解雇権濫用法理の適用において、より厳しく判断すべきであり、(1)人員削減の必要性、(2)解雇回避努力、(3)被解雇者選定の妥当性、(4)解雇手続の妥当性の4つの要素を考慮して、その有効性を判断するのが相当である。

3 Y社がXに対して交付した解雇予告通知における解雇事由の記載は、「業務遂行上、支障があるため」、「平成19年3月11日から平成20年3月10日までの年俸契約が終了しているため」であり、・・・本訴において主張する解雇事由と異なることから、本件解雇時点において、Y社において真摯に人員整理の必要性があったか否かについては疑問を抱かざるを得ない。その上、Y社は、平成22年12月、各部門で社員募集を行い、30名を社員として募集する広告を掲載したのであるから、いっそう本件解雇時点においてY社に人員削減の必要性があったことには疑問がある

4 加えて、Y社は、従業員の賃金減額など経費削減に努めたものの、本件全証拠によるも、希望退職者の募集等、従業員の解雇を回避するような努力を尽くした事実は認められない

変更解約告知の論点については、きれいにスルーされています。

「結局のところ、整理解雇なんでしょ」くらいに思われているようです。

解雇予告通知に記載された解雇事由と裁判になってから主張している解雇事由が異なるというケースですね。

裁判所からすると、「おいおい、本当に、人員整理の必要があったのか?」と思ってしまいます。

また、整理解雇をすすめる一方で、新規採用を行うことは、当然、避けなければなりません。

大胆に人員整理を行った結果、結局、人手が足りなくなってしまったというパターンに気を付けましょう。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介78 かばんはハンカチの上に置きなさい(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。
かばんはハンカチの上に置きなさい―トップ営業がやっている小さなルール
かばんはハンカチの上に置きなさい―トップ営業がやっている小さなルール

いつもお世話になっているプルデンシャル生命のトップセールスマンの本です。

営業職だけでなく、すべての方に参考になる内容です。

一言で言えば、「いかにお客様の立場に立ち、気配りができるか」が大切ということです。

勉強になります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

お客様は『商品と一緒に周りの空気も買っている』のです。『空気』とは、会社の企業理念や、お客様に対するその営業の気遣いや思いやり、または営業の仕事に対する理念、ひいては、その人間の人生観や価値観などです。」(100頁)

その通りですね。

特に生命保険などは、保険という商品のほかに(もっと言えば、商品よりも)、担当者の人間性等を見て、この人とお付き合いしたいという気持ちで保険に入ります。

単に、安いから、商品が良いから、という理由で保険に入ることは、少なくとも私はありません。

まさに、ここで言うところの「空気」を買っているわけですね。

「空気」は、「オーラ」と言い換えてもいいと思います。

「マイナスのオーラ」を漂わせている方よりも、「プラスのオーラ」をまとっている方と一緒にいたいですよね。

これって、保険の営業マンだけに限ったことではありません。

「この人と付き合っていると、前向きになれる、なんだか元気になる」と感じる方から、買いたいと思います。

「空気」、「オーラ」って、とても大切です。

解雇66(東亜外業事件)

おはようございます。 

今日は、工場操業休止に伴う希望退職募集、整理解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

東亜外業事件(神戸地裁平成23年11月14日・労判1042号29頁)

【事案の概要】

Y社は、大口径溶接鋼管の製造及び据付並びに各種管工事等を業とする会社である。

Xらは、Y社東播工場に勤務する従業員である。

Xらは、平成23年6月、整理解雇された。

【裁判所の判断】

整理解雇は無効

【判例のポイント】

1 整理解雇は使用者側の事情による解雇であり、労働者側に責めに帰すべき事由がなく、他方で、終身雇用を前提とする我が国の企業においては、解雇回避のために企業としてもそれ相応の努力をすべきであるのに、何の努力もしないで解雇することは労働契約における信義則に反するといえる。
したがって、整理解雇が合理的なものとして有効とされるためには、人員削減の必要性があったかどうか、使用者が解雇回避努力を尽くしたかどうか、解雇の対象者の人選が合理的なものであるのかどうか、解雇の手続が相当であるかどうかなどの観点から、慎重に検討する必要があるといえる。

2 業績不振や業務縮小を理由とする整理解雇は、専ら使用者側の事情に基づく自由によるものであり、労働者に責任のない事由により失職させるものであるから、使用者は整理解雇をできるだけ避けるべく、希望退職者の募集、労働時間の短縮、一時帰休、配転等なしうる解雇回避努力を検討することが必要である。
東播工場においては、人員削減として、社外工の削減を行ったほか、休業の実施、新規採用の取り止め、希望退職者の募集を行っていた事実(もっとも、全社的規模では行っていないようであるが、全社的規模でこれを行うことの費用面や業務効率面、時間面、人心の混乱などのマイナス面を勘案すると、必ずしもこれを全社的に行うべきとすることもできない。)が認められる。
また、Y社においては、希望退職者に対しては、再就職のあっせんを行ったほか、社内他部門に対して、受入打診を行ったが要員充足のため今以上は受け入れることができないとの反応があったことが一応認められる。
もっとも、使用者が労働者に対して、解雇回避義務を負っていることに鑑みれば、これら要員充足という返事が、東播工場からの配転可能性を全く否定するものかどうかは疑問の余地があるのであって、個別的に、配転の希望の聴取や具体的な配転交渉が行われた形跡がない本件においては、解雇回避義務が尽くされたとはいい難いものというべきである。
・・・Y社においては、(一部は非常勤だというが)いぜん9名の社外工を残しているところ、Xらの中にもこれらの仕事に従事することが可能な者があること、東播工場以外においては、新入社員7名の採用を行っていること、給与や賞与面で、経費削減が徹底されているかどうかは疑問の余地もあることからすれば、予め整理解雇基準を定めた上で対象者に対してこれを説明し、個々の従業員らに対して、配転先の打診などをきめ細かに行うことが必要であったといえ、本件で、組合側がこれを拒否しており不可能であったという事情も明確には認められないことからすると、Y社が解雇回避努力を尽くしたものとは認められない

3 整理解雇は、余剰人員を企業の再建という観点から削減するために行われる解雇であるから、誰を整理解雇の対象とするかは、企業の再建にとって必要な人材かどうかという相対的判断によって行うことになる。
・・・しかしながら、ここに記載された以外の、解雇の対象となった従業員らについてどのような評価がされたのかは必ずしも明らかではないこと、たとえば「事業の遂行にとって必要な有資格者を残す」などの整理解雇の基準が従業員らに対して明示されていたとはいい難いことからすれば、人選の合理性が十分に裏付けられたとはいい難い

4 整理解雇は労働者に何らの帰責事由がないにもかかわらず解雇されるものであるから、使用者は、雇用契約上、労働者の了解が得られるよう努力する雇用契約上の義務を負っているというべきであり、使用者は、整理解雇にあたり、労働者や労働組合に対し、整理解雇の必要性、規模、時期、方法等について説明し、十分に協議する義務があり、これに反する解雇は無効となるものというべきである。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。