おはようございます。
さて、今日は、タクシー運転手の客待ち待機時間の労働時間性に関する裁判例を見てみましょう。
中央タクシー(未払賃金)事件(大分地裁平成23年11月30日・労判1043号54頁)
【事案の概要】
Y社は、大分市に本社を置く、タクシー会社である。
Xらは、Y社の従業員であり、タクシー乗務員として勤務していた。
Y社では、30分を超える客待ち待機時間を労働時間から除外していた。
Xらは、Y社に対し、除外された客待ち時間分も労基法上の労働時間に該当するとして、当該時間分の賃金を請求した。
【裁判所の判断】
客待ち待機時間も労基法上の労働時間に該当する
【判例のポイント】
1 労働基準法上の労働時間とは、労働者が使用者の明示又は黙示の指揮命令ないし指揮監督の下に置かれている時間をいうというべきである。
Xらがタクシーに乗車して客待ち待機をしている時間は、これが30分を超えるものであっても、その時間は客待ち待機をしている時間であることに変わりはなく、Y社の具体的指揮命令があれば、直ちにXらはその命令に従わなければならず、また、Xらは労働の提供ができる状況にあったのであるから、30分を超える客待ち待機をしている時間が、Y社の明示又は黙示の指揮命令ないし指揮監督の下に置かれている時間であることは明らかといわざるを得ない。
2 もちろん、Xらが被告の30分を超えるY社の指定場所以外での客待ち待機をしてはならないとの命令に従わないことを原因として、Xらが、適正な手続を経て懲戒処分を受けることがあるとしても、この命令に従わないことから、直ちに30分を超える客待ち待機時間が、労働基準法上の労働時間に該当しないということはできない。Xらが、30分を超えて客待ち待機をしたとしても、その時間は、争議行為中でもサボタージュでもなく、喫茶店等に入ってサボっている時間でもなく、労働提供が可能な状態である時間であるのであるから、Y社の明示又は黙示の指揮命令ないし指揮監督の下におかれている時間と認められる。
3 ある時間が労働基準法上の労働時間に該当するか否かは当事者の約定にかかわらず客観的に判断すべきであるから、労働協約の規定があったとしても、Y社の指定する場所以外の場所での30分を超える客待ち待機時間が労働基準法上の労働時間に該当しなくなるわけではない。
4 Y社は、ノーワーク・ノーペイの原則からしても、30分を超える客待ち待機時間は、労働時間に該当しないと主張するが、Y社の指定する場所以外の場所での30分を超える客待ち待機を、ノーワークということはできない。
タクシー運転手の客待ち待機時間も労基法上の労働時間か、と言われれば、やはり、裁判所の判断のようになるんでしょうね。
会社から具体的な指揮命令があれば、運転手としては、直ちに命令に従わないといけない状況にある以上、会社の指揮命令下にあるということになります。
・・・とはいえ、駅構内等の長蛇の列の中で待機しているときは、車の中で、好きな本を読んでいてもいいでしょうし、車から降りて、他の運転手と雑談することもありますよね。
そのため、会社としては、30分を超える待機時間を労働時間から除外したわけですね。
気持ちはよくわかります。 しかし、裁判になれば、このような結論になってしまうわけです。
残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。