おはようございます。
さて、今日は、事業所閉鎖に伴う整理解雇に関する裁判例を見てみましょう。
コムテック事件(東京地裁平成23年10月28日・労判1043号90頁)
【事案の概要】
Y社は、システムコンサルティング事業、システムの開発・運用管理事業、営業支援・業務支援等の牛無駄意向事業等を営む会社である。
Y社は、川口事業所取扱業務にかかる主要取引先であるA社との契約が平成22年3月末で終了になることに伴い、川口事業所を閉鎖することを決定し、川口事業所の全従業員に対し、同閉鎖の通告を行うとともに、個々の従業員の処遇については、個別に対応する旨を説明した。
Xは、Y社に対し、退職意思がないことを伝え、配転による雇用の継続の希望を伝えた。
Y社は、Xが退職勧奨を拒否したことを受け、就業規則に基づき、整理解雇した。
なお、川口事業所には、平成22年2月末時点において、49名の従業員が在籍していたが、自己都合退職に応じた者が2名、退職勧奨に応じた者が31名、異動によって他の仕事に就いた者が15名であり、整理解雇の対象となったのはX1名のみであった。
【裁判所の判断】
整理解雇は無効
【判例のポイント】
1 本件解雇は、いわゆる整理解雇について規定するY社就業規則41条5項に基づくものであるところ、同号に基づく整理解雇が解雇権を濫用したものとして無効(労働契約法16条)になるか否かを判断するに当たっては、(1)人員削減の必要性、(2)((1)の人員削減の手段としての)解雇の必要性(解雇回避努力義務の履行の有無)、(3)被解雇者選定の妥当性、(4)手続の妥当性等を総合考慮して判断するのが相当である。
2 ・・・本件における人員削減の必要性は、差し迫った高度のものであったとは認められないというべきである。
そして、川口事業所閉鎖に伴う整理解雇をY社が決定したのが平成22年3月中旬であり、かつ、その対象がX1名のみであったことからすれば、本件における人員削減の必要性の有無の判断は、本件解雇時点において、従業員1名を指名解雇しなければならない程の必要性があるか否かという観点から判断すべきこととなるところ、本件において、かかる必要性があったとまでは解し難い。
3 人員削減を実現する際に、使用者は、配転、出向、希望退職者募集等の他の手段によって解雇回避の努力をする信義則上の義務(解雇回避努力義務)を負うものと解され、同義務履行の有無を判断するに当たっては、当該使用者が採択した手段と手順が当該人員整理の具体的状況の中で全体として指名解雇回避のための真摯かつ合理的な努力と認められるか否かを判断すべきである。
とりわけ本件においては、本件解雇に係る人員削減の必要性が差し迫った高度のものであったとは認められないことに加え、Y社が多様な部門を有する相当規模の企業であること、川口事業所閉鎖に伴う整理解雇の対象者がX1名のみであったこと、Xがこれまでの間、営業、企画、予算管理、売掛金管理、倉庫管理、人事労務等の幅広い経歴及び職歴を有することからすれば、Y社が解雇回避努力義務の履行としてXの配転を検討するに当たっては、Y社内部の欠員等の有無を形式的に確認したり派遣検討先企業の意向を確認したりするだけでは足りず、少なくとも、Y社の組織全体を視野に入れて、Xの従事できる合理的可能性のある業務の有無を真摯かつ十分な時間を掛けて検討する必要があるというべきである。
4 Y社は、川口事業所閉鎖に当たり、同事業所従業員の全員を削減対象とした上で、自主退職又は退職勧奨に応じたことにより退職した者及びY社において異動先を見つけられた者について退職及び異動の措置をとった後、最終的に、退職勧奨に応じず、異動先を見つけられなかったX1名を解雇したものであるから、少なくとも、Y社において、被解雇者の選定について、客観的で合理的な基準を設定していたとは認められない。
加えて、Y社がXの異動先を検討するに当たっては、Xの経歴及び職歴を踏まえた幅広い職種・職務内容を対象にはしていないことからすれば、Y社において異動先を見つけて異動の措置をとった者と異動先を見つけられなかったXとを振り分けるに当たって、合理的な判断がされたとも解し難い。
4要素を検討しています。
各要素を検討していますが、いずれも足りないと判断されています。
特に解雇回避努力については、まだまだやるべきことがあるでしょ、という感じです。
整理解雇の必要性が差し迫った高度なものではない場合には、4要素説では、解雇回避努力については厳格に判断されることになります。
総合考慮ですから。
やはり、整理解雇は大変ですね。なかなか有効とは認めてくれません。
解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。