おはようございます。
さて、今日は、正社員不登用と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。
宮古毎日新聞社事件(沖縄県労委平成23年11月28日・労判1040号95頁)
【事案の概要】
平成18年5月に結成された組合はを、Y社の契約社員4名および正社員5名で組織している。
Y社は、16年8月から契約社員との間で書面による雇用契約を締結するようになり、その契約期間は数ヶ月~3年で、更新されることもあり、組合結成時から22年6月までの間に、13名の契約社員またはパートタイム従業員を正社員に登用している。
なお、Y社は、22年5月、社内掲示板に正社員募集告知を掲示し、宮古毎日新聞に募集告知を掲載し、6月、契約社員であった非組合員1名を正社員に採用した。
組合は、組合結成前から契約社員として就労していた組合員Xら3名を正社員として登用しなかったことおよび正社員化要求に関する団交に誠実に対応しなかったことが不当労働行為であるとして救済を申し立てた。
【労働委員会の判断】
正社員不登用は不当労働行為にあたらない
不誠実団交は不当労働行為にあたる
【命令のポイント】
1 組合が団体交渉でXらの正社員化を求め続けているにもかかわらず、Y社が事前に情報を提供しないまま正社員を募集したことは、配慮を欠く対応であったとも考えられるが、組合とY社の間に正社員募集について契約社員に周知する方法などを定めたルールもなく、募集期間が短期間であったことも、応募者全員に共通する事情であることを併せ考えると、Y社が特に組合員の応募を妨げたものと認めることはできない。
以上のとおり、Y社がXらを正社員にしなかったことは、労組法7条1号に定める不当労働行為と認めることはできない。
2 Y社は、組合が正社員へ登用された人数を質問したことに対し、専門家に確認するなどと述べて具体的な回答をせず、契約社員から正社員にした理由を質問したことに対しても、具体的な回答を回避する対応に終始した。
契約社員の正社員化については、義務的団体交渉事項であり、一般的・抽象的な理由で回答を回避することは、団体交渉において、使用者に求められる誠意ある対応ということはできず、不誠実な交渉態度である。
3 組合は、勤務シフト表とY社が答えた従業員数が異なっていたため、その差異を質問したことに対し、Y社は従業員の個人情報であるなどとして、具体的に説明しなかった。
従業員数は、賃金台帳等で確認すれば、容易に対応できるものであるにもかかわらず、それを怠り、いたずらに団体交渉を引き延ばし、個人情報であるなどとして、組合への説明を拒否しているY社の対応は、不誠実な交渉態度である。
正社員不登用の点については、不当労働行為に該当しないと判断され、不誠実団交については不当労働行為に該当すると判断されています。
後者については、「一般的・抽象的な理由で回答を回避」すると、このように判断されてしまいます。
会社としては、正直、あまり答えたくないようなことや適切な回答ができない場合もあると思いますが、そこは、顧問弁護士等と対応を考えて、誠実に交渉に応じることをおすすめします。