派遣労働9(ワークプライズ(仮処分)事件)

おはようございます。 

さて、今日は、派遣労働と期間途中の解雇に関する裁判例を見てみましょう。

ワークプライズ(仮処分)事件(福井地裁平成21年7月23日・労判984号88頁)

【事案の概要】

Y社とXは、平成20年11月、雇用期間を平成21年11月までとする雇用契約を締結した。

Y社は、Xを期間途中で解雇した。

Y社は、「本件解雇は、世界的不況の影響で派遣先企業のZ社の出荷が極端に減少して従前の生産規模を維持できなくなり、大幅な生産調整が契機となって他の事業部門へ配置転換する余地もなく、同社の事業上やむを得なくY社との労働者派遣契約が中途解約されたことに基づくものである。この解約により、Y社としては、Xと締結していた、Z社を派遣先とする派遣労働契約を維持することができなくなったことから、会社存続の観点からやむにやまれず選択せざるを得なかった方途として実施したものである。」などと主張した。

【裁判所の判断】

解雇は無効

【判例のポイント】

1 派遣先であったZ社の経営状態に起因する労働者派遣契約の中途解約をもって、直ちに、Y社がXを解雇する「やむを得ない事由」があるとは認められない

2 次に、Y社は、会社存続の観点からやむにやまれず実施した解雇であり、一般企業の行う「整理解雇」に準じるものであるなどと主張するが、Y社の経営内容、役員報酬など、経営状態やその経営努力について何ら具体的な状況は疎明してはおらず、したがって、Y社の上記主張は直ちに採用できない
他に、Y社がXを解雇する「やむを得ない事由」があることの疎明はない。
したがって、Y社の主張するXに対する解雇は無効である。

3 Y社に民法536条2項の「責めに帰すべき事由」が認められるのであれば、Xには賃金全額の請求が認められるところ、Y社は、「派遣先であったZ社から派遣契約を打ち切られて将来の収入を閉ざされたY社の経営破綻を回避するべく、やむを得ず解雇に及んだものであって、本件解雇事由は外部起因性、防止不可能性を有する『経営上の障害』によるものであるから、上記帰責事由には当たらないと主張する。
確かに、Y社は、派遣を求める派遣先企業の存在があってはじめてXらに労働の場を提供できるうえ、その需要も様々な要因により変動するものである。さらに、派遣労働者の需要は留保しておくことができない性質のものではある。
しかしながら、Y社としては、労働者派遣業の上記特質を理解したうえ、派遣労働者確保のメリットと派遣労働者に対する需要の変動リスク回避などの観点を総合的に勘案して、派遣期間だけ労働契約を締結する形態ではなく、期間1年という期間を定める形で労働契約を締結したのであるから、その契約期間内については派遣先との労働者派遣契約の期間をそれに合わせるなどして派遣先を確保するのが務めであり、それによって労働契約中に派遣先がなくなるといった事態はこれを回避することができたのである。
したがって、本件において、X社との間の労働者派遣契約が解約され、その当時、Xに対する新たな派遣先が見出せず、就業の機会を提供できなかったことについては、Y社に帰責事由が認められるというべきである。これについてY社の主張する防止不可能性を有する経営上の障害によるものとは認められず、民法536条2項の帰責事由がないとの主張は採用できない

したがって、Xは、賃金全額の支払を受ける権利を有する

この仮処分決定によると、本件のようなケースでは、派遣会社は、派遣労働者に対し、派遣期間の残りの期間について、賃金全額を支払わなければならないわけです。

60%だけではダメということです。

派遣期間の残りの期間が長い場合、派遣会社としては結構な出費になりますね。

派遣元会社も派遣先会社も、対応に困った場合には速やかに顧問弁護士に相談することをおすすめします。