おはようございます。
さて、今日は、解雇期間中の賃金の中間収入に関する最高裁判決を見てみましょう。
あけぼのタクシー事件(最高裁昭和62年4月2日・労判506号20頁)
【事案の概要】
Y社は、旅客運送事業を営む会社である。
Xらは、いずれもY社にタクシー乗務員として雇用された従業員である。
Xらは、タクシー従業員で構成する労働組合の執行委員長や書記長であった。
Y社は、中傷ビラの配布等を理由として、昭和51年8月、Xらを懲戒解雇した。
Xらは、本件解雇の無効と解雇期間中の賃金等の支払を求めた。
第1審は、本件解雇は、不当労働行為で無効と判断し、解雇期間中の賃金については、平均賃金の6割分を確保してそれ以外の賃金分(平均賃金の4割分および一時金)からの中間収入控除を認めた。
これに対し、控訴審は、懲戒解雇の無効は維持しつつ、平均賃金の4割分からの控除のみを認めて一時金からの控除を否定した。
Y社は、上告し、一時金について、使用者は労働基準法26条による支払義務もないので中間収入控除につき限度額の適用は受けず、全額が損益相殺の対象となるべきであると主張し争った。
【裁判所の判断】
破棄差戻し
【判例のポイント】
1 使用者の責めに帰すべき事由によって解雇された労働者が解雇期間中に他の職に就いて利益を得たときは、使用者は、右労働者に解雇期間中の賃金を支払うに当たり中間利益の額を賃金額から控除することができるが、賃金額のうち労働基準法12条1項所定の平均賃金の6割に達するまでの部分については利益控除の対象とすることが禁止されているものと解するのが相当である。
2 したがって、使用者が労働者に対して有する解雇期間中の賃金支払債務のうち平均賃金額の6割を超える部分から当該賃金の支給対象期間と時期的に対応する期間内に得た中間利益の額を控除することは許されるものと解すべきであり、中間利益の額が平均賃金額の4割を超える場合には、更に平均賃金算定の基礎に算入されない賃金(労働基準法12条4項所定の賃金)の全額を対象として利益額を控除することが許されるものと解せられる。
3 そして、賃金から控除し得る中間利益は、その利益の発生した期間が右賃金の支給の対象となる期間と時期的に対応するものであることを要し、ある期間を対象として支給される賃金からそれとは時期的に異なる期間内に得た利益を控除することは許されないものと解すべきである。
4 中間利益の控除が許されるのは平均賃金所定の基礎になる賃金のみであり平均賃金算定の基礎に算入されない本件一時金は利益控除の対象にならないものとした原判決には、法律の解釈適用を誤った違法があるものといわざるを得ない。
まあ、そういうことです。
和解で終わる場合は、ここまでの話は出ないですが、判決まで行くと、中間利益の控除の問題が出てきます。
労働事件では基本中の基本ですのでしっかり押さえておきましょう。
詳しくは顧問弁護士からレクチャーを受けましょう。