おはようございます。
さて、今日は、労組法上の使用者に関する命令を見てみましょう。
サンケン電気事件(石川県労委平成23年10月18日・労判1036号95頁)
【事案の概要】
Y社は、Z社の株式を100%所有するグループ会社の中核会社である。
Z社は、半導体を製造する会社である。
平成22年2月、Z社は、赤字製品対策のために工場を閉鎖すると提案し、X組合と、22回にわたり団交を御子なった。
Xは、Y社に対しても、工場閉鎖提案の撤回を議題とする団交を申し入れた。
Y社は、Y社とZ社は別法人であり、Z社が雇用する労働者についてY社は労組法上の使用者に該当しないので団交に応じないと回答した。
【労働委員会の判断】
Y社は労組法上の使用者に当たらない。
→不当労働行為には当たらない。
【命令のポイント】
1 通常時のX組合組合員の賃金、一時金、時間外労働手当、有給休暇、労働時間、職員採用、人事異動、懲戒などの基本的な労働条件等については、Z社がX組合との団体交渉や経営会議により独自の判断に基づき決定していたものであり、Y社による現実的かつ具体的な関与は認められない。
2 Y社が親会社としてグループ内の子会社従業員の緊急対策的な労働条件等にかかる方針を決定し、当該方針をグループ内子会社に示していたことが窺われ、そのことがX組合組合員の労働条件等に影響を与えた可能性も否定できないが、当該労働条件等を現実的かつ具体的に決定したのはZ社であるから、Y社の関与は、グループ内子会社に対する経営戦略的観点から行う管理・監督の域を超えているとまでは認められない。
3 ・・・以上のことからすると、Y社は、Z社の経営に対し一定の支配力を有していたことは認められるが、それが親会社がグループの経営戦略的観点から子会社に対して行う管理・監督の域を超えているものとまでは認められないことから、X組合組合員の基本的な労働条件等に対して、雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有している者とはいえず、Y社は、労働組合法第7条の使用者に当たるということはできない。
よって、Y社は、本件について不当労働行為責任を負う者には該当せず、不当労働行為は成立しない。
朝日放送事件(最高裁平成7年2月28日判決)の基準に従って判断されています。
本件では、親会社の労組法上の使用者性が問題となりましたが、上記のとおり、子会社従業員の労働条件について、現実的かつ具体的な支配・決定権限はないと判断されています。
使用者概念の拡大の問題は、もう少し研究したいところです。
組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。