Daily Archives: 2012年2月1日

不当労働行為29(緑光会事件)

おはようございます。

さて、今日は、組合脱退勧奨等と不当労働行為に関する裁判例を見てみましょう。

緑光会事件(中労委平成23年9月7日・労判1035号172頁)

【事案の概要】

Y社は、病院のほか精神障害者社会復帰施設等を経営している。

平成20年10月、X組合は、Y社理事長がZに対して組合からの脱退を働きかけたこと、平成20年4月、X組合がカンファレンスルームの使用を申し入れても、部外者である組合員の出入りは患者に悪影響があるとして拒否したことが不当労働行為であるとして、救済を申し立てた。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にはあたらない

【命令のポイント】

1 ・・・このように、短期間に100通を超える脱退届が提出された経緯をみると、個々の組合員だけでない組織的な対応がうかがわれる。しかしながら、本件においては、Y社の管理者が分会員に対して脱退を勧奨したり、上記脱退についての説明会等に出席を促したという事実は認められず、他にY社が本件脱退に関与したことをうかがわせる事情はない

2 上記事情からみれば、Y社が組合に対して強い関心をもっていたことがうかがわれる。しかしながら、Y社理事長がZに対し「外部は邪魔だ」と発言した事実は認められず、その他法人が本件脱退に関与した事実は認められない
一方、本件脱退前に、食事会で出席者の中にX1が同年4月の団交において突然代表者交渉を提案したことなど分会員とX1との信頼関係が失われていったことを示す事情が認められることからすれば、本件脱退は、分会員側の事情において発生し、進められたものとの推認を否定することはできない

3 以上によれば、本件脱退の経過、本件脱退前後の状況を考慮しても、Y社理事長がZ1に対し分会員を組合から脱退させるよう働きかけ、理事長の意を受けたZが分会執行委員らに対し組合から脱退するよう働きかけ、更にZの発言を受けた分会執行委員らが分会員に対し組合からの脱退を働きかけたとは認められない。
したがって、Y社は、分会員らに対し、組合からの脱退を働きかけた事実は認められない。

4 Y社が、組合からのカンファレンスルームの使用申入れを拒否した際に明示した、外部の者の出入りを一定の範囲で制限するという理由は、病院が精神科病院であることからその治療の観点からみて必要性と合理性があるものといえる
・・・したがって、組合によるカンファレンスルームの使用を拒否したY社の対応は、組合によるカンファレンスルームの使用を拒否して組合活動を妨害したものとはいえず、この点に関する組合の主張は理由がない。

組合員の大量脱退の理由について、会社が脱退を働きかけたとは認定されなかったため、不当労働行為とはなりませんでした。

完全に事実認定の問題ですね。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。