Daily Archives: 2012年1月17日

不当労働行為27(両磐酒造事件)

おはようございます。

さて、今日は、組合委員長等の配転、試用期間の延長等と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

両磐酒造事件(岩手県労委平成23年9月6日・労判1035号173頁)

【事案の概要】

平成22年6月、Y社は、X組合(組合員6名)の組合員X1を営業部(小売店への配送業務等)から製品工場
(清酒等の瓶詰業務)に、組合員長X2を製品工場の製品担当の長から営業部車両係にそれぞれ配転した。

同年12月、Y社は、同年7月に入社した組合員X3に対して試用期間を3か月の延ばすと告げ、その理由として12月の休日出勤命令に従わなかったことおよび入社後6か月間の仕事内容が悪いことなどを挙げた。

平成23年1月、X3がY社社長に退職すると告げたところ、同社長は、試用期間の延長を撤回する旨告げた。

【労働委員会の判断】

X1に対する配転命令は不当労働行為に当たらない

X2に対する配転命令は不当労働行為に当たる

X3に対する試用期間の延長は不当労働行為に当たる

【命令のポイント】

1 X1の勤務状況に問題があったこと及びアルコール依存による問題行動があったことから、Y社が、X1は営業の業務を行うことが適当ではないと考え、X1を営業部から製品工場に配置転換したことは、業務上の必要性があり、X1の配置転換には合理性があると認められる。したがって、X1に対する配置転換については、不当労働行為意思があったとは認められないため、配置転換の不利益性を判断するまでもなく、不利益取扱いには当たらない。

2 X2が瓶詰作業を他の従業員に教えなかったこと、Y社に重大な損害を与えたこと及び会社存続のため配置転換が必要だったことは認められず、配置転換の業務上の必要性は存在しないことから、配置転換の合理性は認められない。さらに、X2が組合の執行委員長であることや、平成22年3月から同年4月にかけて組合が申し入れた団体交渉をY社が拒否していることを考え併せると、Y社には、不当労働行為意思があったと認められる。

3 X3が平成22年12月23日に出勤しなかったことは、形式的には休日出勤命令に違反しているようにみえるが、休日出勤の一連の経過及び上司である統括リーダーの了解をとっていたことから、X3が命令に違反したとまでは断定できない。業務命令に違反したとY社が主張する事実はこの1件だけで、他にX3が業務命令に違反した事実はない。加えて、Y社は休日出勤しなかった従業員に対し、処分をしなかったこともある旨Y1社長が述べている。
次に、Y社は、X3の6か月間の仕事内容が悪いと主張するが、Y社社長および管理職は仕事ぶりをほとんど見ていなかったことから、Y社が仕事内容の評価を適正に行っていたとは認められない。
また、Y社は経営状況が良くないことから試用期間を延長したと主張するが、経営状況に関する具体的な立証がなく、認められない。
さらに、会社の就業規則には試用期間の延長の根拠となる規定もないことや、X3が退職を告げると、Y社社長はすぐに試用期間延長を撤回すると話すなど、Y社の対応には明確な根拠や一貫性がない。
以上から、X3にとって不利益な試用期間の延長に合理的な理由はなく
、Y社には不当労働行為意思があったと認めざるをえないことから、X3に対する試用期間の延長は、不利益取扱いに当たる。

不当労働行為については、形式的には不当労働行為意思の存否を判断しますが、結局のところ、会社の行為に合理性が認められるかということを判断しているにすぎません。

今回の判断を読めばよくわかります。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。