おはようございます。
今日は、内部通報を理由とした配転の有効性に関する裁判例を見てみましょう。
オリンパス事件(東京高裁平成23年8月31日)
【事案の概要】
Y社は、デジタルカメラ、医療用内視鏡、顕微鏡、非破壊検査機器(NDT)等の製造販売を主たる業とする会社である。
Xは、Y社に正社員として入社し、平成19年4月から、IMS事業部国内販売部NDTシステムグループにおいて営業販売業務の統括責任者として業務に従事していたところ、取引先からY社関連会社に従業員が入社した。
これについては、Xは、取引先の取締役から、当該従業員と取引先の従業員と連絡を取らせないように言われるなどし、更に、2人目の転職者が予定されていることを知った。
Xは、上司に対し、2人目の転職希望者の件はとりやめるべきであるなどと言った。
これに対し、上司は、Xが上司に提言しに来たのは大間違いなどと電子メールで返信した。そこで、Xは、Y社のコンプライアンス室長らに対し、取引先からの引き抜きの件を説明し、引き抜きがまだ実行されるかもしれない、顧客からの信頼失墜を招くことを防ぎたい等と相談した。
その後、Y社は、Xに対し、IMS企画営業部部長付きとして勤務する旨命ずる配転命令をした。
Xは、この配転命令の効力を争うとともに、この配転及び配転後にXを退職に追い込もうとしたことが不法行為を構成するとして慰謝料等を請求した。
【裁判所の判断】
配転命令は無効
【判例のポイント】
1 本件内部通報は、少なくとも運用規定第4条(1)の行動規範(第1章第2項「企業活動を展開する上で、企業活動を行なう国や地域の法令や文化、慣習を理解することに努めます。したがって、法令はもとより、倫理に反した活動や、これにより利益を得るような行為はしません。」との規定)に反する、または反する可能性があると感じる行為に該当するし、さらには運用規定第4条(2)の「業務において生じた法令違反等や企業倫理上の疑問や相談」にも該当する。したがって、コンプライアンス室のEらは、Xの秘密を守りつつ、本件内部通報を適正に処理しなければならなかったというべきである。
2 Xの本件内部通報を含む一連の言動がXの立場上やむを得ずにされた正当なものであったにもかかわらず、上司であるY2はこれを問題視し、業務上の必要性とは無関係に、主として個人的な感情に基づき、いわば制裁的に第1配転命令をしたものと推認でき、第1配転命令は、Xの内部通報をその動機の一つとしている点において、通報による不利益取扱いを禁止した運用規定にも反するものである。
3 ・・・第2配転命令がXの本件訴訟提起後に、第3配転命令が第2配転命令の9か月後にされたものであること、各配転命令による配置先におけるXの担当職務は、第1配転命令前のXの経歴にそぐわないものであること等をしんしゃくすると、第2配転命令及び第3配転命令は、いずれも本来の業務上の必要性やXの適性とは無関係に、第1配転命令の延長としてされたものと推認できる。
4 第1配転命令及び第2配転命令は、いずれも被控訴人が人事権を濫用したものであり、第3配転命令もその影響下で行われたものであって、これらにより。Xに昇格・昇給の機会を事実上失わせ、人格的評価を貶めるという不利益を課すものであるから、被控訴人の上記行為は、不法行為法上も違法というべきである。
今、注目を集めているあのオリンパスでの労働事件です。
オリンパス事件の地裁判決については、配転・出向・転籍1で既に検討したところです。
1審では、配転命令は有効と判断されましたが、控訴審では、無効と判断しました。
当然会社側は、上告しています。
個人的には、高裁の判断の方がしっくりきます。
最高裁はどのように判断するでしょうか。
次回、社労士勉強会では、この事件を題材にしたいと思います。
実際の対応については顧問弁護士に相談しながら行いましょう。