Daily Archives: 2011年12月21日

労働時間24(ジェイアール総研サービス事件)

おはようございます。

今日は、守衛の休憩・仮眠時間と割増賃金等に関する裁判例を見てみましょう。

ジェイアール総研サービス事件(東京高裁平成23年8月2日・労判1034号5頁)

【事案の概要】

Y社は、財団法人Aのビル管理等を目的等する会社であって、AからAの研究所における守衛業務を受託していた。

Xは、平成15年3月、Y社に嘱託社員として雇用され、同年4月には社員として総務部守衛室勤務を命じられた。

A研究所における守衛の業務は、守衛室において、受付、鍵の保管、火災報知器への対応、巡回、異常の有無の確認、門扉の施錠等のほか、地震や火災報知器の発報などに臨機に対応するものであった。

守衛の勤務は、一昼夜交代勤務で、休憩時間合計4時間、仮眠時間4時間であり、2人の守衛が交代で休憩・仮眠をとっていた。

Xは、平成17年1月18年12月までの間の休憩時間および仮眠時間が労働時間に当たると主張して、労働時間または労働基準法37条に基づき割増賃金等の支払を求めた。

【裁判所の判断】

休憩時間及び仮眠時間は、労基法上の労働時間に当たる。

【判例のポイント】

1 労働契約所定の賃金請求権は、不活動時間が労基法上の労働時間に当たることによって直ちに発生するものではなく、当該労働契約において休憩・仮眠時間に対していかなる賃金を支払うものと合意されているかによって定まるものと解されるが、労働契約は、労働者の労務提供と使用者の賃金支払とに基礎を置く有償双務契約であり、労働と賃金との対価関係は労働契約の本質的部分を構成しているというべきであるから、労働契約の合理的解釈としては、労基法上の労働時間に該当すれば、通常は労働契約上の賃金支払の対象となる時間としているものと解するが相当である。そして、時間外労働につき所定の賃金を支払う旨の一般的規定を有する就業規則等が定められている場合に、所定労働時間には含められていないが、労基法上の労働時間に当たる一定の時間について、明確な賃金支払規定がないことの一事をもって、当該労働契約において当該時間に対する賃金支払をしないものとされていると解することは相当でない(平成14年2月28日第1小法廷判決参照)。

2 ・・・したがって、Y社とXとの労働契約において、本件休憩・仮眠時間について残業手当、深夜手当を支払うことを定めていないとしても、本件休憩・仮眠時間について、労働基準法13条、37条に基づいて時間外割増賃金、深夜割増賃金を支払うべき義務がある。

3 守衛らは、休憩時間に入ると、特段の事情がない限り、守衛室内の休憩室部分で、新聞や本を読んだり、テレビを見たりすることが可能とされていたが、実際には、受付に来ている来訪者が多数あって応対が長引き、所定の休憩時間帯に入っても直ちに休憩に入ることができない場合も度々あり、また、当務の守衛が来訪者に対応している間に電話があって休憩時間中の守衛が電話に対応することもあり、さらに、当務の守衛が貸出しを求められた鍵を見つけ出すことができずに休憩時間中の守衛が対応したり、近隣住人の来訪に休憩時間中の守衛が対応する必要が生ずることもあったことは前記認定のとおりである。
・・・以上のほか、前記認定の諸事実及び証拠関係を総合すると、休憩時間中の守衛については、緊急事態が発生した場合への対応はもとより、平常時においても、状況に応じて当務の守衛を補佐すべきことが予定されていたものというべきであって、労働からの解放が保障されていなかったものと認められる

4 また、仮眠時間中は、制服を脱いで、自由な服装を着用して守衛室のベッドで仮眠することも可能であったが、仮眠時間中に帰宅したりすることが許されていたものではなく、Xによると、Xは、用務があった時直ちに対応し得るようトレーナー等を着用して仮眠していたというのであり、仮眠時間中の守衛は、警報に対応することなど緊急の事態に応じた臨機の対応をすることが義務付けられていたものであり、現実に実作業に従事する必要が生ずることは、Xの場合も存在したことは前記認定のとおりであって、その必要が皆無に等しいものとして実質的に上記のような義務付けがされていないと認めることができるような事情も認められない
したがって、本件休憩・仮眠時間は、Xは、労働からの解放が保障されていたとはいえず、具体的な状況に応じて役務の提供が義務付けられ、本件休憩・仮眠時間中の不活動時間もY社の指揮命令下に置かれていたと認められるから、本件休憩・仮眠時間は労基法上の労働時間に当たるというべきである。

会社とすれば納得できないかもしれませんが、現在の裁判所の判断はこのようになっています。

実際の訴訟では、「労働からの解放」が認められるか否かについて、労働者側は丁寧に主張立証する必要があります。

結局は事実認定の問題となるので、労働者側、会社側ともに気合いを入れて、主張立証しなければいけません。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。