Daily Archives: 2011年12月12日

不当労働行為26(クボタ事件)

おはようございます。

さて、今日は、派遣労働者の直雇用化前の団交申入れに関する裁判例を見てみましょう。

クボタ事件(東京地裁平成23年3月17日・労判1034号87頁)

【事案の概要】

Y社は、平成19年1月、Y社工場で就労している派遣労働者を、同年4月を目処に直接雇用することを決定した。

同年2月、上記派遣労働者が加入する労働組合であるX組合が、直雇用化実施前にY社に団体交渉を申し入れたところ、Y社は、1度は団体交渉に応じたが、その後のX組合からの団体交渉申入れには応じなかった。

X組合は、労働委員会に対し、救済申立てをし、不当労働行為であると判断された。

Y社は、命令を不服としてその取消を求めた。

【裁判所の判断】

請求棄却
→Y社の団交拒否は不当労働行為に該当する

【判例のポイント】

1 不当労働行為禁止規定(労組法7条)における「使用者」について、不当労働行為救済制度の目的が、労働者が団体交渉その他の団体行動のために労働組合を組織し運営することを擁護すること及び労働協約の締結を主目的とした団体交渉を助成することにあること(同法1条1項参照)や、団体労使関係が、労働契約関係又はそれに隣接ないし近接した関係をその基盤として労働者の労働関係上の諸利益についての交渉を中心として展開されることからすれば、ここでいう「使用者」は、労働契約関係ないしはそれに隣接ないし近似する関係を基盤として成立する団体労使関係上の一方当事者を意味し、労働契約上の雇用主が基本的に該当するものの、雇用主以外の者であっても、当該労働者との間に、近い将来において労働契約関係が成立する現実的かつ具体的な可能性が存する者もまた、これに該当するものと解すべきである。

2 本件団体交渉申入れは、交渉議題を(1)契約社員の就業規則、(2)有給休暇の引継ぎ、(3)平成19年4月以降の組合員の賃金、(4)契約社員の雇用期間の根拠と契約更新の具体的条件、(5)労働協約の締結、(6)その他であり、いずれも直雇用化後のX組合員の重要な労働条件に関するものである。

3 Y社は、現在に至るまで、本件団体交渉申入れの各時点において、自己が使用者に該当しないと主張し、かつ、本件団体交渉申入れに対し平成19年3月末日まで団体交渉に応じなかったことに正当な理由があったと主張しているが、これらの主張がいずれも認められないことは前述のとおりである。
そして、直雇用下後のX組合とY社との間の団体交渉で、組合員の雇用期間等の問題について妥協点を見出せておらず、現時点でも、今後のY社とX組合との間の団体交渉に関し、Y社が労働組合法7条の使用者性や同条2号の「正当な理由」について適切に判断することにより適切な時期に団体交渉が実施されることを期するという観点から、本件の救済方法として、本件不当労働行為に関するY社の責任を明確にした上で、Y社に対し今後本件と同様の不当労働行為を繰り返さない旨の文書手交を命じる必要性(救済利益)があるというべきである

前回の住友ゴム工業事件と近い事案です。

労組法の趣旨を考慮した内容ですね。

十分納得できるものだと思います。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。