Monthly Archives: 12月 2011

本の紹介27 ドラッカーが教える営業プロフェッショナルの条件(企業法務・顧問弁護士@静岡)

こんにちは。

さて、今日は、またまた本の紹介です。
ドラッカーが教える 営業プロフェッショナルの条件
ドラッカーが教える 営業プロフェッショナルの条件

ドラッカーさんの原書ではありませんが、最初はこういう本の方が入りやすいし、わかりやすいのでおすすめです。

以前にもドラッカー本として、「究極のドラッカー」という本を紹介しました。

どの本もだいたい書いてある内容は同じです。 

それでも、いろいろな角度から著者が解説しているところがまた参考になるのです。

私も、あと5冊ほどドラッカー本を読んでみようと思います。

この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

最大の危険は、製品やサービスが何であり、何であるべきかであり、いかに買われ、いかに使われるかについて、顧客以上に知っていると過信することである」(78頁)

どういうことを言おうとしているのかわかりますか?

著者は、以下のように解説しています。

・・・モノがコモディティ(汎用品)化すると、誰もが情報を持つようになります。インターネットの普及がそれに拍車をかけました。普及というのが恥ずかしいくらいに当たり前になって、もう誰でも必要な情報は簡単に手に入れることができます。
売り手が買い手より情報を持つということは、ほとんどの場合に期待できなくなってきました。そうすると営業パーソンの仕事も説明することではなくなりました。買い手の意思決定をお手伝いすることが求められているのです。
」(79頁)

あらゆる業種にあてはまることだと思います。 弁護士業界も例外ではありません。

若手経営者のみなさん、若手弁護士のみなさん、重要なのは、この内容をいかに具体化するかということです。

無から有を生み出すことはとても難しいです。

こういう場合には、ヒントを探すのです。

日頃から、できるだけ異業種の方の話を聞き、アイデアの種を探すのです。

通常、そのまま自分の業界に持ってきても、使えませんので、形(見せ方)を変えて、取り入れます。

結局は、習慣の問題なのです。

「何か新しくておもしろいことないかな~」と思いながら、いろいろな人と話をしていれば、「種」がころがっています。

お互い、がんばりましょう。

本の紹介26 モチベーション3.0-持続する「やる気!」をいかに引き出すか-(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は、本の紹介です。
モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか
モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか

「ハイコンセプト」の著者ダニエル・ピンクさんの本です。

とてもいい本です。 経営者のみなさんにおすすめの本です。

いろいろなヒントやアイデアの種が詰まっています。

テーマは、サブタイトルにあるように、持続するやる気をいかに引き出すか、という点にあります。

「モチベーション3.0」とあるように、「モチベーション1.0」と「モチベーション2.0」があるわけです。

1.0でも2.0でも足りないですよ、という本です。 

この本で、「いいね!」と思ったのはこちら。

〈モチベーション1.0〉は、人間は生物的な存在なので生存のために行動する、とみなした。〈モチベーション2.0〉は、人には報酬と処罰が効果的だとみなした。現在必要とされているアップグレード版の〈モチベーション3.0〉は、人間には、学びたい、創造したい、世界をよくしたいという第三の動機づけもある、とみなしている。」(31頁)

総論部分としては、こういうことです。

重要なのは、これをどのように具体化するか、ということです。

従業員に対して、「人間には、学びたい、創造したい、世界をよくしたいという動機づけがあるから、がんばってください」なんて、意味のわからないことを言っても、誰も動きません。

経営者は、従業員のモチベーションを常に高い状態に保つためにはどうしたらよいかということを常に考えています。

現在、日本のほとんどの会社が〈モチベーション2.0〉の状態だと思います。

アメとムチ、つまり、信賞必罰に基づいて動機付けをする方法です。

今ある「常識的な」動機付けの方法よりもさらに効果的な方法はないのだろうか、と思った経営者のみなさん、是非、この本を読みましょう。

来年1年は、「常識的な」法律事務所にとらわれない事務所作りをしていきます。

そのために、年末年始に、しっかり方向性を固めたいと思います。

本の紹介25 藤田晋の仕事学(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。
藤田晋の仕事学 自己成長を促す77の新セオリー
藤田晋の仕事学 自己成長を促す77の新セオリー

おなじみ、サイバーエージェント社長の藤田さんの本です。

以前、「藤田晋の成長論」を紹介しました。

今回の本は、この本よりも先に出版されたものですが、アマゾンで見つけたので買いました。

藤田さんの本、というより、藤田さんの考えには、特徴があります。

毎回、うまいこと変化球(チェンジアップ)を投げてくるのです。

問題提起をし、その解決策(藤田さんの意見)を提示する際、読んでいる側の予想とは別の方向、スピードの球を投げてくるのです。

ありきたりなことしか書いていない本より100倍、おもしろいです。

経営者としての厳しさが伝わってきます。 

そんな藤田さんの今回の本ですが、「いいね!」と思ったのはこちら。

そもそも自分の身近な上司の望むものすら汲み取ろうとしない人に顧客の望むものを汲み取ることなどできるのでしょうか。そういう人は、実際の顧客と接する時もきっと同じことをするでしょう。
・・・評価されていないと感じた時はまず、自分の出した成果があなたの上司(会社)の本当に望むものかどうか確認して下さい。会社もまたあなたのクライアントなのです。
」(24頁)

いいこと言いますね。

「仕事ができる」人というのは、相手(顧客、上司など)の意を的確に汲み取る力を持っています。

相手の発する言葉や表情、性格から的確に意を汲み取り、過不足なく要求に応える。

不足しているだけではく、やり過ぎもダメ。

そのバランスが大切なのです。 

繊細さが要求されるのです。 

この点に関して「おおざっぱ」な人は、たぶんサービス業に向いていません。

私の経験上、このバランスがうまくとれる人は、特に何も教えられなくてもできます。

いわゆる「サービス業に向いている人」というやつです。

その逆もまたしかり。

おそらくそれまで生きてきた環境によって、無意識のうちに培われてきた部分が非常に大きいのだと思います。

バランスの取り方を学ぶには、とにかく「売れている人」の近くでまねをすることです。

それ以外に方法はないと思います。

管理監督者27(シーディーシー事件)

おはようございます。 

さて、今日は、飲食店調理長の割増賃金等請求に関する裁判例を見てみましょう。

シーディーシー事件(山形地裁平成23年5月25日・労判1034号47頁)

【事案の概要】

Y社は、居酒屋等を経営する会社である。

Y社は、仙台調理師紹介所から調理長としてXの紹介を受け、Xと、平成18年4月、期間の定めのない労働契約を締結した。

本件店舗における調理場スタッフは4名であったが、Xが最も経験が長く、作業の指示などを行っていた。

Xは、Y社退職後、Y社に対し、未払い残業代を請求した。

Y社は、Xが管理監督者に該当する等と主張し争った。

【裁判所の判断】

管理監督者性を否定

【判例のポイント】

1 確かに、管理監督者は、労働基準法の労働時間等に関する規定の適用を受けないが、それは、当該労働者が、経営者と一体的な立場において、労働時間、休憩及び休日等に関する規定の枠を超えて事業活動することを要請されてもやむを得ないものといえるような重要な職務と権限を付与されており、また、そのために賃金等の待遇及びその勤務態様において、他の一般労働者に比べて優遇措置が講じられているので、労働時間等に関する規定の適用を除外されても、当該労働者の保護に欠けることがないという趣旨によるものと解される
したがって、Xが管理監督者に当たるというためには、形式的に役職にあることのみならず、実質的に、他の従業員の労務管理を含め、企業全体の事業経営に関わる重要な権限を付与されており、その勤務態様が労働時間等に対する規制になじまないものであり、給与及び一時金において、管理監督者にふさわしい待遇がされていることを要するものというべきである

2 ・・・以上のとおり、Xは、平成18年4月以降退職した平成19年7月までの間、管理監督者の地位にあることを前提とする手当の支給を受けておらず、その年収において、他の従業員とは異なる処遇を受けていたことを示す証拠はないから、給与等において管理監督者にふさわしい待遇はされていなかったものというべきである。

3 Xは、Y社に調理長として紹介されて採用されたものであり、本件店舗の調理場スタッフはXのほか3名であって、その余の本件店舗の従業員がどの程度いたのかは明らかではないものの、その余の従業員について、Xがその労務管理や人事について関与することがなかったことが認められる。そして、Xが、調理場スタッフの採用に際し、面接を行っていたことも上記認定のとおりであるが、調理場スタッフとしての採否及び昇給についての意見を述べることができるだけであることもまた上記認定のとおりであって、従業員として採用したり、昇給を決定する権限までは有していなかったし、Y社における人事考課制度がどのようなものであったかは不明であるが、昇給に関する意見を述べる際、調理場スタッフについてXが何らかの人事考課を行っていたことを窺わせる証拠は見当たらない。
したがって、Xが、本件店舗の調理場内において、その労務管理について、経営者と一体的立場にあったとは認め難い。

4 長時間の時間外労働については、これに応じた時間外手当を支払うべきことは上記認定のとおりであるところ、時間外手当の支払によっても解消されない精神的苦痛をXが被っており、慰謝料の支払をもってこれを慰謝すべき程度にまで達していたことを認めることはできないから、労働環境等を理由とする慰謝料の請求は理由がない

特にコメントすることはありません。

本件程度の事情では労基法上の管理監督者に該当しないことは明らかです。

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。

本の紹介24 プロフェッショナルセールスマン(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

3連休もばりばり働きますよ!

さて、今日は本の紹介です。
プロフェッショナルセールスマン ― 「伝説の営業」と呼ばれた男の壮絶顧客志向
プロフェッショナルセールスマン ― 「伝説の営業」と呼ばれた男の壮絶顧客志向

いつもお世話になっているプルデンシャル生命のトップセールスマンについて書かれた本です。

こういう本、大好き。 どんどん自分の仕事に取り入れます。

この本は、若手弁護士、必読です。 読むだけではダメです。 実行しましょうね。 

サービス業とはどういうものかということが非常によくわかります。 すばらしい本です。

プル村さんに「甲州賢さんって知ってます?」と聞いたら、さすがに知っていました。

プル村さん、お身体にお気をつけください。 

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

禁煙の理由については、社内の新人向けセミナーでこう語っている。
『契約者のご主人は、そんなに気にされないかもしれません。でも、ご自宅を訪問したときに奥さまがどう思うでしょうか。スーツや指先に染みこんだ匂い、ヤニで黒くなった歯、それを快く思う奥さまなんて、一人もいませんよね。』
・・・そしてカロリー制限の理由については、こう続けた。
『僕らの仕事はスーツをビシッと着こなして、まずはいい印象を持たれないといけませんよね。つまりは、体型維持も仕事のうちだと思うんです。たとえば、法人客を開拓していく際に、社長さんから、自己管理ができていないヤツという印象を持たれたら損だなと考えました』
」(39~40頁)

これはあくまで本書に書かれている一例です。

トップセールスマンがいかに顧客のことを考え、工夫し、努力しているかがよくわかります。

異業種の方とお付き合いをすると、いろいろとヒントをいただけます。

同業者とばかり集まっていると、業界の「常識」が染みついてしまいます。

「そんなことまでしている人、いないよ」というレベルまでサービスの質を上げていきたいです。

弁護士業界のこれからの「常識」をつくっていきたいと思います。

労働時間24(ジェイアール総研サービス事件)

おはようございます。

今日は、守衛の休憩・仮眠時間と割増賃金等に関する裁判例を見てみましょう。

ジェイアール総研サービス事件(東京高裁平成23年8月2日・労判1034号5頁)

【事案の概要】

Y社は、財団法人Aのビル管理等を目的等する会社であって、AからAの研究所における守衛業務を受託していた。

Xは、平成15年3月、Y社に嘱託社員として雇用され、同年4月には社員として総務部守衛室勤務を命じられた。

A研究所における守衛の業務は、守衛室において、受付、鍵の保管、火災報知器への対応、巡回、異常の有無の確認、門扉の施錠等のほか、地震や火災報知器の発報などに臨機に対応するものであった。

守衛の勤務は、一昼夜交代勤務で、休憩時間合計4時間、仮眠時間4時間であり、2人の守衛が交代で休憩・仮眠をとっていた。

Xは、平成17年1月18年12月までの間の休憩時間および仮眠時間が労働時間に当たると主張して、労働時間または労働基準法37条に基づき割増賃金等の支払を求めた。

【裁判所の判断】

休憩時間及び仮眠時間は、労基法上の労働時間に当たる。

【判例のポイント】

1 労働契約所定の賃金請求権は、不活動時間が労基法上の労働時間に当たることによって直ちに発生するものではなく、当該労働契約において休憩・仮眠時間に対していかなる賃金を支払うものと合意されているかによって定まるものと解されるが、労働契約は、労働者の労務提供と使用者の賃金支払とに基礎を置く有償双務契約であり、労働と賃金との対価関係は労働契約の本質的部分を構成しているというべきであるから、労働契約の合理的解釈としては、労基法上の労働時間に該当すれば、通常は労働契約上の賃金支払の対象となる時間としているものと解するが相当である。そして、時間外労働につき所定の賃金を支払う旨の一般的規定を有する就業規則等が定められている場合に、所定労働時間には含められていないが、労基法上の労働時間に当たる一定の時間について、明確な賃金支払規定がないことの一事をもって、当該労働契約において当該時間に対する賃金支払をしないものとされていると解することは相当でない(平成14年2月28日第1小法廷判決参照)。

2 ・・・したがって、Y社とXとの労働契約において、本件休憩・仮眠時間について残業手当、深夜手当を支払うことを定めていないとしても、本件休憩・仮眠時間について、労働基準法13条、37条に基づいて時間外割増賃金、深夜割増賃金を支払うべき義務がある。

3 守衛らは、休憩時間に入ると、特段の事情がない限り、守衛室内の休憩室部分で、新聞や本を読んだり、テレビを見たりすることが可能とされていたが、実際には、受付に来ている来訪者が多数あって応対が長引き、所定の休憩時間帯に入っても直ちに休憩に入ることができない場合も度々あり、また、当務の守衛が来訪者に対応している間に電話があって休憩時間中の守衛が電話に対応することもあり、さらに、当務の守衛が貸出しを求められた鍵を見つけ出すことができずに休憩時間中の守衛が対応したり、近隣住人の来訪に休憩時間中の守衛が対応する必要が生ずることもあったことは前記認定のとおりである。
・・・以上のほか、前記認定の諸事実及び証拠関係を総合すると、休憩時間中の守衛については、緊急事態が発生した場合への対応はもとより、平常時においても、状況に応じて当務の守衛を補佐すべきことが予定されていたものというべきであって、労働からの解放が保障されていなかったものと認められる

4 また、仮眠時間中は、制服を脱いで、自由な服装を着用して守衛室のベッドで仮眠することも可能であったが、仮眠時間中に帰宅したりすることが許されていたものではなく、Xによると、Xは、用務があった時直ちに対応し得るようトレーナー等を着用して仮眠していたというのであり、仮眠時間中の守衛は、警報に対応することなど緊急の事態に応じた臨機の対応をすることが義務付けられていたものであり、現実に実作業に従事する必要が生ずることは、Xの場合も存在したことは前記認定のとおりであって、その必要が皆無に等しいものとして実質的に上記のような義務付けがされていないと認めることができるような事情も認められない
したがって、本件休憩・仮眠時間は、Xは、労働からの解放が保障されていたとはいえず、具体的な状況に応じて役務の提供が義務付けられ、本件休憩・仮眠時間中の不活動時間もY社の指揮命令下に置かれていたと認められるから、本件休憩・仮眠時間は労基法上の労働時間に当たるというべきである。

会社とすれば納得できないかもしれませんが、現在の裁判所の判断はこのようになっています。

実際の訴訟では、「労働からの解放」が認められるか否かについて、労働者側は丁寧に主張立証する必要があります。

結局は事実認定の問題となるので、労働者側、会社側ともに気合いを入れて、主張立証しなければいけません。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

本の紹介23 アリストテレス マネジメント(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は、本の紹介です。
アリストテレス マネジメント
アリストテレス マネジメント

ありがちな本ですが、とりあえず読んでみました。

むりくりアリストテレスと結びつけた感は否めません。

内容は、いたって普通です。

この本で、「いいね!」と思ったのはこちら。

特にあてもなく、ただ考えているだけ。それでは何も動かない。実現したい目的を定め、そのために何をすべきかを考えろ。そうして初めて、物事は動き出す。」(6頁)

僕はどちらかというと、考えることよりも、決断すること、実行することの方が重要だと考えています。

いろいろと悩み、考え、結局、実行に移さない人をよく見ます。

たいていできない理由、失敗したときのリスクを過大に評価して、結局、やらない。

たぶん、もうそういうくせがついてしまっているのだと思います。

若手の経営者のみなさん、リスク、リスクって、呪文みたいに唱えていたって、何も始まりませんよ。

失敗したときのことばかり考えていないで、成功するためにはどうしたらよいか、もっと考えてみませんか。

僕も、みなさんに負けないように、日々、新しいことに挑戦しています。

新しいことに挑戦しているほうが生きている心地、しませんか?

競業避止義務15(K社ほか事件)

おはようございます。

さて、今日は、在職中の守秘・競業避止義務違反等に関する裁判例を見てみましょう。

K社ほか事件(東京地裁平成23年6月15日・労判1034号29頁)

【事案の概要】

X社は、不動産賃貸借の管理受託およびこれらのコンサルタント等を業務とする会社であり、A社の100%子会社である。

A社の100%子会社のうち、X社はオーナー物件の賃貸・建物管理業務を行い、B社が区分所有建物の建物管理業務を行っていた。

Y1は、B社の従業員であった者であり、X社に出向して建物管理事業部リフレッシュ工事部に勤務していた。

Y1は、X社に出向していた間、業務上割り当てられた電子メールアドレスから、Y1が個人で使用する電子メールアドレスに添付送信する方法によって、X社の賃貸・建物管理業務に関する情報を、社外に持ち出した。

Y2社は、平成21年7月、不動産の売買・賃貸・管理およびその仲介業ならびに入居者募集に関する一切の業務等を行う会社として設立された会社であり、Y1は、Y2社の設立に伴い、その取締役に就任し、現在もY2社において取締役営業部長として勤務している。

X社は、賃貸・建物管理業務において、1物件1担当者制ではなく、分業制を採用しており、X社が取り扱う物件のオーナーの中にはX社が1物件1担当者制ではなく、分業制を採用していることに強い不満を持つ者がいた。

Y2社は、設立当初から、1物件1担当者制を採用することをY2社のコンセプトとして標榜し、E社物件のオーナーに対して、ダイレクトメールを送付し、オーナーに電話を直接かけるなどして、営業活動を行った。

X社は、Y1及びY2社に対し、在職中、X社の業務に関する情報を守秘義務に違反して持ち出したこと、競業避止義務に違反してY2社の営業を行ったことなどを理由として、労働契約または不法行為に基づき約5500万円の損害賠償等を請求した。

【裁判所の判断】

Y1及びY2に対し、連帯して約550万円の支払を命じた。

【判例のポイント】

1 Y1は、平成21年8月まではX社の従業員としての立場を有していたというべきであるから、Y1が同年7月に設立されたY2社の取締役に就任してY2社の営業に関与したことが、従業員としての競業避止義務に違反することは明らかというべきである。

2 Y1は、従業員としての守秘義務に違反して取得した本件情報(6月分)を利用して営業活動を行ったものと一応推認できるものの、その具体的な利用態様については、Y2社がE社物件に対して営業活動をかける際、本件情報に含まれたE物件のオーナーの住所・連絡先等の情報を利用したという限度において認められる。

3 上記検討によれば、Y1は、従業員としての立場において、その守秘義務に違反して本件情報を漏洩した上、その競業避止義務に違反してY2社の営業活動に関与したものであり、さらに、不正に漏洩した本件情報を、E社物件に対する営業活動において、少なくともオーナーの住所・連絡先等を利用することにより、違法な営業活動(競業活動)を行ったというべきである。Y1による上記営業活動は、従業員であった者として負っている労働契約上の付随義務に違反するのみならず、不法行為としての違法性を有する行為であることは明らかである(そうである以上、Y2社も使用者責任を負うというべきである。)。

4 不法行為による損害の有無・額について検討するに、(1)Y2社は、E物件(合計76件)のうち49物件のオーナーに対して営業活動をかえて、その際に本件情報を利用したものと推認できること、(2)Y2社は、短期間の間に14件もの物件について契約切替に成功しているが、これは極めて高確率な営業活動であったといえること、(3)X社のE社物件のうち、Y2社が関与しない形で平成21年4月以降に契約解除に至った物件は3件であること、(4)上記(1)~(3)によれば、本件情報を用いて広範囲かつ効率的な営業活動を行ったからこそ、契約切替に至ったものであると評価できることを総合考慮すれば、Y1らの不法行為による損害の発生はこれを認めることができる

請求金額と裁判所の認容金額を比較するとわかるとおり、損害額については非常に謙抑的に判断されることが多いです。

訴訟の是非を含め、対応方法については事前に顧問弁護士に相談しましょう。

本の紹介22 スティーブ・ジョブズのプレゼン術(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は、本の紹介です。
図解 スティーブ・ジョブスのプレゼン術
図解 スティーブ・ジョブスのプレゼン術

なんとなく買って読んでみました。

基本的には、プレゼンの方法論に関する本です。

ところどころ取り入れてみようと思う点がありました。 

セミナー等を多くやる機会のある方におすすめです。

この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

Your time is limited, so don’t waste it living someone else’s life.」(259頁)

「みなさんに与えられた時間には、限りがあります。他人の人生を生きて、時間を無駄にしないでください。」ということです。

ジョブズが言うから、説得力がある。また、ジョブズが亡くなった今だからこそ、説得力があります。

私は、昨年3月に独立し、弁護士として、自分がやりたいことを全てやっています。

これまで弁護士業界の常識になかったさまざまなサービスを提供することが私の目標です。

私が、弁護士としてばりばり仕事ができる時間は限られています。

年をとれば、経験は増えますが、体力や集中力は落ちていきます。

今だからできることを、誰に何と言われても、実行していこうと思います。

誰にも負けたくなりません。

限りある時間を精一杯生きようと思います。

本の紹介21 究極のドラッカー(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は、本の紹介です。
究極のドラッカー (角川oneテーマ21)
究極のドラッカー (角川oneテーマ21)

実は、今まで、ドラッカー本は、手付かずのままでした。

一度、読んでおきたいと思い、買ってみました。

結果、やはり、読んでおいてよかったです。

参考になる点がとても多いです。

この本で、「いいね!」と思ったのはこちら。

ドラッカーは、組織はそれぞれの組織の目的と使命を果たすだけでは充分ではないと考えています。多くの人が組織で働く時代になり、組織で働く従業員を組織が幸せにできなかったら組織の存在意義はないと考えているのです。」(115頁)

僕も、一緒に働いているスタッフを幸せにできる経営者でありたいです。

近日中に、スタッフが1名増え、スタッフ4名で最高のリーガルサービスを提供していきます。

どこの法律事務所にも負けない事務所をつくりたいです。

どの弁護士よりも信頼される弁護士になりたいです。

これからも精一杯仕事をしていきます。