おはようございます。
さて、今日は、スト当日の年休取得組合員への欠勤扱い等に関する命令を見てみましょう。
三栄興業事件(神奈川県労委平成23年8月4日・労判1033号94頁)
【事案の概要】
Y社は、従業員48名をもって自動車学校を運営している。
平成21年2月、X組合は、賃上げ等を要求してストを通告し、同年3月に妥結するまでに12回のストを実施した。
同年3月、Y社は、臨時朝礼を開催し、朝礼出席者全員にQUOカード5000円券を支給した。同日、X組合は、始業時からストを実施しており、組合員は朝礼に欠席していたため、QUOカードは支給されなかった。
同月、Y社は、スト実施日の年休を認めない旨口頭でY社書記長らに通告した。X組合がストを実施した同日のX組合支部長の年休申請に対して、Y社は、繁忙期間中でもあり、取得理由を尋ねても明確に回答しなかったとして、同日の年休取得を認めず、欠勤扱いとした。
ただし、Y社は、同日以降もスト実施日に年休を申請しその理由を明確にした組合員の年休は、欠勤扱いにはしなかった。
【労働委員会の判断】
組合がストを実施した日に年休を申請した組合員3名を欠勤扱いとし、賃金を減額したことは不当労働行為にはあたらない。
組合のスト実施日に臨時朝礼を行い、朝礼参加者にQUOカードを配布したことは不当労働行為にあたる。
【命令のポイント】
1 そもそも年休は、労働基準法第39条第1項及び第2項の要件が充足されることにより、法律上当然に労働者に生ずる権利であって、同条第5項の請求とは休暇の時季指定にほかならず、年休の成立要件として、使用者の承諾は必要ない。適法な時季変更権の行使がない以上、使用者は時季の変更もできない。また、年休の利用目的は同法の関知しないところであり、使用者が理由の如何によって付与しないということは許されない。ただし、一斉休暇闘争のようにストライキのために年休を利用することは、年休権の正当な行使ということはできない。
2 本件についてみると、・・・労働基準法違反と不当労働行為の成立は別問題である。会社は、ストライキ実施日における年休申請について、ストライキ参加のためか、本来の年休利用のためかを判断する根拠として、組合員に理由を聴取し、明確に回答した組合員の年休申請についてはこれを認めている。・・・同一の組合員でも扱いを変えていることからすると、組合員であるがゆえに欠勤扱いにしたとはいえない。また、X組合はストライキに対する意趣返しと主張しているが、Y社は同月12日以降の組合員の年休を全て欠勤扱いにしたとはいえない。
3 よって、3名の年休申請を認めず欠勤扱いとしたことは、労働基準法違反の問題は別として、あくまで会社が3名をストライキに参加したと判断したことによるものであり、ストライキを実施するX組合を嫌悪して、報復的に年休を与えなかったものとまでは認められないから、組合員であるがゆえの不利益取扱いとはいえず、またX組合に対する支配介入に当たるともいえない。
4 繁忙期で予約が逼迫しており、教習指導員の稼働率向上とこれまでの慰労のためにQUOカードを配付したというY社の主張は不自然とはいえない。しかし、組合員がストライキ実施のため誰一人出勤していない日に臨時に朝礼を開催して配付したこと、組合員以外は全員支給されていること、ストライキを実施した組合員については始めから除外されてしまうという差別的な支給基準であること、また、組合員にはQUOカードを他の教習指導員に支給したという事実を隠匿していたことから判断すると、QUOカードを組合員にのみ支給しなかったことは、Y社がX組合によるストライキを嫌悪し、組合員以外の教習指導員を優遇することにより、組合員を差別した不利益取扱いであり、かつX組合に対する支配介入であるといえ、不当労働行為に該当する。
年休申請に関する判断は参考になります。
現場では、非常に悩ましい問題だと思います。
労基法違反と不当労働行為該当性の問題は別問題という視点は持っておくべきです。
QUOカード配付に関しては、不当労働行為に判断されていますが、そう判断されてもやむを得ないと思います。
組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。