Monthly Archives: 11月 2011

不当労働行為24(クボタ(契約終了慰労金)事件)

おはようございます。 

さて、今日は、不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

クボタ(契約終了慰労金)事件(中労委平成23年8月3日・労判1033号95頁)

【事案の概要】

平成20年8月、Y社は、工場の契約社員(組合員を含む)に雇用契約を21年3月末まで更新すること、今回が最後の更新となり、4回目の更新を行わないこと、確認書を提出した場合に契約終了慰労金を支給することを記載した第3回更新通知を配付した。

同年9月、Y社は、21年1月から3月までの間に労働契約を終了する工場の契約社員に「労働契約終了について何らの異議を申し立てない」旨の確認書を提出した場合に、契約終了慰労金を支給する旨の通知を配付した。

【労働委員会の判断】

確認書提出を契約終了慰労金支給の条件とする通知を配付したことは不当労働行為に当たらない

慰労金の支給に関する団交におけるY社の対応は不当労働行為に当たる

【命令のポイント】

1 契約終了慰労金が労働契約の円滑な終了を目的の一つとしていることからすれば、契約終了慰労金は、19年3月雇用契約が終了することを前提として支給されるものといえる。そうであるならば、契約終了慰労金の支給に当たって19年3月雇用契約が終了したことを確認する書面を徴することは、契約終了慰労金の制度そのものにおいて当然に予定されていたといえる。そして、確認書の要件における「労働契約の終了について何らの異議を申し立てない」旨の文言も、訴訟の提起をしようとする組合員らに対して心理的動揺を与えることがありうるとしても、その内容は、客観的には、19年3月雇用契約が終了したことを確認するものにほかならず、それ自体を、新たに不利益な要件を課すものということはできない

2 Y社は、組合員らの雇用期間の満了に係る問題に関する誠実な交渉の在り方として、第17回団交においては契約終了慰労金の支給に関する提案や説明を、そして、第18回団交においては9月26日契約終了慰労金通知の内容に関する提案や説明をそれぞれ行うべきであったところ、それらを行わなかったといえるのであって、かかるY社の対応は、労組法第7条第2号の不誠実団交の不当労働行為に該当する。

不誠実団交の問題は、会社にとって、非常に悩ましい問題です。

現場では、可能な範囲での説明を尽くすということしかないと思います。

それでも足りないと言われるのであれば、仕方ないです。

組合と会社とは、立場が違いますので、組合にとって満足のいく回答を得られない場合には、組合としては、不誠実団交だと主張することになるわけです。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介19 静思のすすめ(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は、本の紹介です。
静思のすすめ (文春新書)
静思のすすめ (文春新書)

薬師寺のお坊さんの本です。

以前、大谷さんのお話を聞いたときに、購入しました。

この本は、「幸せの条件」が大きなテーマとなっています。

その中で、「静思」(じょうし)というキーワードが出てきます。

「静思」とは、「立ち止まってよく考えてみること」という意味だそうです。

この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

世の中には悪人だ、信用のならないやつだと陰口をたたかれる人もいます。しかし、その人に悪を発生させない働きがあるとするならば、それは間違いなく慈悲心だと思うのです。
師匠の慈悲心は、お互いに何かが欠けている人間同士だというところから生まれていました。どんな相手に対しても弱い者同士、欠けた者同士という同じ高さの目線で接すること。これも幸せの条件の一つだと思います。」 
(97頁)

いいこといいます。

忙しい毎日の中で、忘れてしまいがちですね。

「お互いに何かが欠けている人間同士」という考え方だけで、少しおおらかになれる気がしませんか。

みんな、自分の非にはとても寛容なのに、他人の非にはとても厳しいです。

他人に対しても、常に「ドンマイ!」って言えるようになったら、もっと世の中住みやすくなると思っています。

不当労働行為23(三栄興業事件)

おはようございます。

さて、今日は、スト当日の年休取得組合員への欠勤扱い等に関する命令を見てみましょう。

三栄興業事件(神奈川県労委平成23年8月4日・労判1033号94頁)

【事案の概要】

Y社は、従業員48名をもって自動車学校を運営している。

平成21年2月、X組合は、賃上げ等を要求してストを通告し、同年3月に妥結するまでに12回のストを実施した。

同年3月、Y社は、臨時朝礼を開催し、朝礼出席者全員にQUOカード5000円券を支給した。同日、X組合は、始業時からストを実施しており、組合員は朝礼に欠席していたため、QUOカードは支給されなかった。

同月、Y社は、スト実施日の年休を認めない旨口頭でY社書記長らに通告した。X組合がストを実施した同日のX組合支部長の年休申請に対して、Y社は、繁忙期間中でもあり、取得理由を尋ねても明確に回答しなかったとして、同日の年休取得を認めず、欠勤扱いとした。

ただし、Y社は、同日以降もスト実施日に年休を申請しその理由を明確にした組合員の年休は、欠勤扱いにはしなかった。

【労働委員会の判断】

組合がストを実施した日に年休を申請した組合員3名を欠勤扱いとし、賃金を減額したことは不当労働行為にはあたらない。

組合のスト実施日に臨時朝礼を行い、朝礼参加者にQUOカードを配布したことは不当労働行為にあたる。

【命令のポイント】

1 そもそも年休は、労働基準法第39条第1項及び第2項の要件が充足されることにより、法律上当然に労働者に生ずる権利であって、同条第5項の請求とは休暇の時季指定にほかならず、年休の成立要件として、使用者の承諾は必要ない。適法な時季変更権の行使がない以上、使用者は時季の変更もできない。また、年休の利用目的は同法の関知しないところであり、使用者が理由の如何によって付与しないということは許されない。ただし、一斉休暇闘争のようにストライキのために年休を利用することは、年休権の正当な行使ということはできない

2 本件についてみると、・・・労働基準法違反と不当労働行為の成立は別問題である。会社は、ストライキ実施日における年休申請について、ストライキ参加のためか、本来の年休利用のためかを判断する根拠として、組合員に理由を聴取し、明確に回答した組合員の年休申請についてはこれを認めている。・・・同一の組合員でも扱いを変えていることからすると、組合員であるがゆえに欠勤扱いにしたとはいえない。また、X組合はストライキに対する意趣返しと主張しているが、Y社は同月12日以降の組合員の年休を全て欠勤扱いにしたとはいえない。

3 よって、3名の年休申請を認めず欠勤扱いとしたことは、労働基準法違反の問題は別として、あくまで会社が3名をストライキに参加したと判断したことによるものであり、ストライキを実施するX組合を嫌悪して、報復的に年休を与えなかったものとまでは認められないから、組合員であるがゆえの不利益取扱いとはいえず、またX組合に対する支配介入に当たるともいえない

4 繁忙期で予約が逼迫しており、教習指導員の稼働率向上とこれまでの慰労のためにQUOカードを配付したというY社の主張は不自然とはいえない。しかし、組合員がストライキ実施のため誰一人出勤していない日に臨時に朝礼を開催して配付したこと、組合員以外は全員支給されていること、ストライキを実施した組合員については始めから除外されてしまうという差別的な支給基準であること、また、組合員にはQUOカードを他の教習指導員に支給したという事実を隠匿していたことから判断すると、QUOカードを組合員にのみ支給しなかったことは、Y社がX組合によるストライキを嫌悪し、組合員以外の教習指導員を優遇することにより、組合員を差別した不利益取扱いであり、かつX組合に対する支配介入であるといえ、不当労働行為に該当する

年休申請に関する判断は参考になります。

現場では、非常に悩ましい問題だと思います。

労基法違反と不当労働行為該当性の問題は別問題という視点は持っておくべきです。

QUOカード配付に関しては、不当労働行為に判断されていますが、そう判断されてもやむを得ないと思います。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介18 藤田晋の成長論(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は、本の紹介です。
藤田晋の成長論
藤田晋の成長論

サイバーエージェントの社長、藤田さんの本です。

一生懸命に働いてきた方なので、共感する点が多いです。

この本で、「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・モノマネの最大の利点は、先行者たちが費やした時間や労力を大幅にカットできること。モノマネで足元を固め、そこからオリジナルの商品やサービスを作っていくという考えを持ち、『主体的』にモノマネを選択しているなら何ら問題はありません。」(59頁)

仕事の上達法の基本です。

モノマネが下手な人、そもそもモノマネをしたくないと思っている人は、なかなか仕事ができるようになりません。

言い方を変えると、素直な人は上達が早いということです。

上司の立場からすると、「自己流」が強い部下は、使いにくく、最終的には、指導する気持ちがだんだんなくなっていきます。

次に、部下の立場からの視点ですが、モノマネをする際、誰の何をモノマネの対象とするべきかをしっかり理解するべきです。

要するに、誰か1人の上司だけをモノマネするのではなく、いろいろな人のいいところを盗むということです。

・・・とここまで書いていて、「当たり前のことしか書いていないな・・・。」と思ってきたので、もうやめます。

結局のところ言い古されていることをいかに素直に実行できる人間か、ということだけなのです。

労災48(富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ事件)

おはようございます 

昨夜は、原発問題についての勉強会の後、フェイスブックでいつもお世話になっている先輩弁護士のI先生と偶然お会いし、一緒にお食事をしました I先生、ご馳走様でした。 今後ともよろしくお願いいたします。

料理の写真、撮るの忘れた・・・

今日は、午前中、遺産分割調停が入っています。

午後は、建物明渡しに関する民事調停、労働事件に関する裁判が入っています。

夜は、事務所スタッフの誕生日会です 

さて、今日は、プログラマーの労災に関する裁判例を見てみましょう。

富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ事件(東京地裁平成23年3月25日・労判1032号65頁)

【事案の概要】

Y社は、コンピューターソフトウェアの研究・開発、システムインテグレーション・サービスの提供等を目的とする会社である。

Xは、専門学校を卒業後、平成14年4月にY社に雇用され、さまざまなプログラムの作業チームに配属され、プログラム作成、修正、機能確認テスト、画面プログラム作成等の業務に従事していた。

Xは、規模の大きなプロジェクトに配属される前から、継続的に、相当程度長時間に及ぶ時間外労働に従事することを余儀なくされ、上記プロジェクトに配属された平成15年4月には、時間外労働時間が大幅に増加して月100時間以上に達し、同年9月に至るまで、継続的に、相当程度長時間に及ぶ時間外労働に従事せざるを得ず、その間、徹夜の作業や休日出勤もあった。しかしながら、Xの在任中、上記プログラムには全く増員がなかった。

Xは、その後、2度、休業を余儀なくされ、精神疾患の薬物の過量服用を原因とする急性薬物中毒によって死亡した。

【裁判所の判断】

川崎北労基署長による遺族補償給付等不支給処分は違法である。
→業務起因性肯定

【判例のポイント】

1 労災保険の危険責任の法理及び「ストレス-脆弱性」理論の趣旨に照らせば、業務の危険性の判断は、当該労働者と同種の平均的な労働者、すなわち、何らかの個体側の脆弱性を有しながらも、当該労働者と職種、職場における立場、経験等の点で同種の者であって、特段の勤務軽減まで必要とせずに通常業務を遂行することができる者を基準とすべきである。このような意味での平均的労働者にとって、当該労働者の置かれた具体的状況における心理的負荷が一般に精神障害を発病させ死亡に至らせる危険性を有しているといえ、特段の業務以外の心理的負荷及び個体側の要因のない場合には、業務と精神障害発病及び死亡との間に相当因果関係が認められると解するのが相当である。
そして、判断指針・改正判断指針は、いずれも精神医学的・心理学的知見を踏まえて作成されており、かつ、労災保険制度の危険責任の法理にもかなうものであり、その作成経緯や内容に照らして不合理なものであるとはいえない。
したがって、基本的には判断指針・改正判断指針を踏まえつつ、当該労働者に関する精神障害発病に至るまでの具体的事情を総合的に斟酌して、業務と精神障害発病との間の相当因果関係を判断するのが相当である
なお、改正判断指針は、処分行政庁による本件処分時には存在しなかったものであるが、判断指針・改正判断指針は、いずれも裁判所による行政処分の違法性に関する判断を直接拘束する性質のものではないから、当裁判所は、判断指針のみならず、改正判断指針に示された事項をも考慮しつつ、総合的に本件処分の違法性を検討するものとする

2 被告は、Xの発病した精神障害を原因として必ず過量服薬の傾向が生じるわけではないし、Xが、処方されていない薬物を自ら入手してまで服用したり、処方された薬物を過剰に所持したりしていた上、産業医のほか、主治医の指導にもかかわらず、過量服薬を継続して、時には入院治療を勧められながらもこれを拒否して自ら適切な治療の機会を逸したことなどの諸事情によれば、Xの過量服薬は、X個人のパーソナリティを原因とするものであると解すべきであり、Xの発病した精神障害と過量服薬による死亡との間には、相当因果関係が認められないと主張する。
しかし、本件全証拠をもってしても、Xに発病した精神障害以外に過量服薬の原因となるような疾病の存在はうかがわれないし、被告主張に係るXのパーソナリティがその過量服薬の傾向に如何なる機序で影響を及ぼしているかについての医学的知見は存在せず、必ずしも明らかになっているとはいえないといわなければならない。そして、これまで判示してきたところによれば、Xが、自らに発病した精神障害の症状としての睡眠障害や希死念慮等に苦しみながら、その影響かにおいて薬物依存傾向を示すようになり、過量服薬の結果、死亡するに至った経緯が認められるのであるから、精神障害の発病と過量服薬の結果としての死亡との間に、法的にみて労災補償を認めるのを相当とする関係(相当因果関係)を肯定することができるというべきである

事案が少し特殊ですが、裁判所の判断方法としては、オーソドックスなものだと思います。

解雇59(萬世閣(顧問契約解除)事件

おはようございます。

さて、今日は、調理部長に対する執行役員からの解任、顧問契約解除の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

萬世閣(顧問契約解除)事件(札幌地裁平成23年4月25日・労判1032号52頁)

【事案の概要】

Y社は、温泉旅館業を営む会社である。

Xは、昭和45年、Y社に調理職として採用され、調理長等を経て、平成8年2月頃、Y社の取締役に就任するともに、Y社における総調理部長に任命された。

Xは、平成14年12月頃、取締役を解任され、常務執行役員となり、さらに、平成18年9月、執行役員を解任され、調理部顧問に配属された。

Xは、職務として調理人の手伝いや自動車の移動、テラスの鉢植えの花の手入れなども行うようになった。その後、Xは、Y社就業規則に定める定年年齢(60歳)となった。

Xは、平成20年10月、他の顧問とともに、Y社における長時間労働や時間外手当の不支給等を労基署に申告し、これを受けて、労基署がY社に立入検査を行った。

Y社は、Xに対し、退職についての話をし、その後、顧問契約を解除する旨記載された書面を送達し、以後Xの就労を拒んだ。

Xは、顧問契約の解除は、解雇権の濫用であり無効である等と主張し、争った。

【裁判所の判断】

解雇は無効

解雇は不法行為にあたるとして、慰謝料40万円の支払を命じた

【判例のポイント】

1 (1)Xは、昭和46年から、洞爺湖萬世閣調理部長として、洞爺湖萬世閣のみならず、登別萬世閣の各調理部門の調理全般及び原価計算、メイド管理等の統括業務に当たっていたこと、(2)Xは、平成8年2月、Y社の取締役に任じられると同時に、総調理部長となり、従前担当してきた洞爺湖萬世閣及び登別萬世閣に加え、定山渓ミリオーネの各調理部門の総括に当たるようになったこと、(3)Xは、取締役に就任後も、Y社取締役会には1回しか出席したことがなく、その職務内容は、その担当に定山渓ミリオーネや企画商品の打合せ等が加わったほかは、基本的に従前と変わりがなかったこと、(4)取締役在任中、Xは、Y社から給与を支給され、雇用保険に加入しているものとして、その保険料を控除されていたことが認められる。そして、Xが取締役に就任すると同時に従業員としての退職の意思表示をしたか、Y社と退職の合意をしたという事情もうかがわれないのであるあから、Xは、平成8年2月にY社の常務取締役に就任後も、従前の労働契約を維持したままであり、取締役であるとともに使用人たる地位も兼任していたものと認められる

2 これまでY社の常務執行役員として名目だけにせよその経営陣に名を連ね、洞爺湖萬世閣、登別萬世閣及び定山渓ミリオーネの各調理部門の調理部長や調理長に指示を下すべき立場にあったのに、あからさまではないにせよ、今度は一介の調理人同然に補助業務をすることとなり、その他雑務も指示されたというのであって、これは左遷ないし降格と受け取られる人事異動といい得ること等に照らすと、これが不利益処分という性質を有することは否定できないのであって、前記のようにA執行役員をY社代表取締役の後継者とするためにXを執行役員から解任するという動機は正当な理由とはいえないから、かかる人事上の不利益処分は、故意にXの名誉ないし社会的評価を傷付けた違法なものとして不法行為を構成するというべきである

3 Xは、Y社との労働契約に基づき、その常務執行役員に就任したものであるところ、Xが、洞爺湖萬世閣調理部顧問に配属されるに当たって、退職の意向を示したとか、退職の合意をしたなどとうかがわせる事情は何もなく、退職金が支払われたなどといった事情もないのであるから、Xを洞爺湖萬世閣調理部門に配属させたのも従前の労働契約に基づくものというべきである
そして、Xの職務の性質に加え、平成20年3月31日当時、洞爺湖萬世閣には定年である60歳を超えて雇用される者が多数いたこと、Xの給与が42万円から30万円に引き下げられたのは、Xが定年に達した平成20年2月ではなく、同年4月分の給与からであること等に加え、Y社代表取締役がXを65歳になるまで使用することを考慮している旨伝えたこと等に照らすと、上記労働契約については少なくとも60歳の定年後もXの雇用を継続する旨の合意がされていたというべきである

この事件、原告側にいっぱい弁護士がついています。合計27人。

実働は何人なんでしょうか?

判決を読み込んで、両当事者がどのような主張、反論を繰り広げているかを見ていくと、勉強になります。

被告側の主張を見てみると、実際のところ、原告に不利な事情もいくつか散見されますが、そこは、総合判断ですので、多少、不利な事情があっても、トータルでは原告の主張が認められるのだと思います。

被告側は、控訴していますが、どうなったのでしょうか。 和解で終わったのかしら。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介17 マーケターの知らない「95%」(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日も、本の紹介です。
マーケターの知らない「95%」  消費者の「買いたい!」を作り出す実践脳科学
マーケターの知らない「95%」  消費者の「買いたい!」を作り出す実践脳科学

なんだかよくわからない題名です。

移動時間の暇つぶしのつもりで買いました。 下田の裁判所への行き帰りで読みました。

なんやかんや脳科学から分析しています。 とても真似できません。

この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

感情は、脳が大量の情報を思い出すための手段である。つまり、自動車やパソコンのように多くの情報を処理する必要のある複雑な買い物でも、最終的な判断は感情に負うところが大きいということだ。」(226頁)

顧客の感情を理解し、購入する際のさまざまな不安を1つ1つ取り除く。

単なる合理主義では、「人間がわかっていないね。」ということで終わってしまいます。

自分で「絶対に売れる!!」と思っていても、実際に売れないことはよくあります。

そんなとき、「この商品(サービス)のよさがわからないのか!」と嘆いても何の解決にもなりません。

これは、「不景気だから客が減った。」「弁護士の人数が増えたから依頼者が減った。」と嘆いている居酒屋の店長や弁護士と同じです。

そんなことが本質的な問題ではないのに・・・。

不景気、不景気と言いながら、いつも満席で予約しないと入れないお店は、なんで繁盛しているのでしょうか。

すべてのサービス業で共通しているのは、お客様が望んでいることを理解することから始まるのだと信じています。

本の紹介16 あなたの会社の評判を守る法(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は、本の紹介です。

あなたの会社の評判を守る法 (講談社現代新書)
あなたの会社の評判を守る法 (講談社現代新書)

ちょっと前の本です。

これまで起こった会社の不祥事を例に挙げて、「この対応がまずかった」「こうすべきだった」と解説しています。

セミナーのネタ探しで読み返してみました。

この本で「いいね!」と思ったのは、こちら。

法律による規制や罰則、消費者団体からの指摘行動は、牽制・抑止力として機能しています。しかしいちばん大切なことは、企業(人)がみずから納得して意識改革することです。」(239頁)

当然といえば当然のことです。

会社のトップ、従業員全員が納得して体質改善に着手しない限り、「やらされている感」が出てしまいます。

「形だけやっていればいいんでしょ」という感じがにじみ出てしまうわけです。

結局は、経営者次第なんですけどね。

言うのは簡単ですが、これまでの体質を改善するというのは、非常に大変です。

必ず反対する者も出てきます。

こういう場合、反対する者は、もっともらしい理由を主張しますが、本心は、「面倒くさい」と思っているだけです。

非常時には、民主主義的な発想は捨てましょう。

経営者が独断で迅速な判断をし、実行に移しましょう。

決断、実行の遅さは、経営者として致命的だと、僕は思います。

派遣労働6(パナソニックエコシステムズ(派遣労働)事件)

おはようございます。

さて、今日は、派遣労働者と派遣先との黙示の労働契約の成否、更新拒絶に関する裁判例を見てみましょう。

パナソニックエコシステムズ(派遣労働)事件(名古屋地裁平成23年4月28日・労判1032号19頁)

【事案の概要】

Y社は、空調機器、環境機器等の開発・製造・販売などを目的とする会社である。

Xは、派遣会社B社からY社に派遣労働者として派遣される形式で就労していたが、Xは、平成21年3月末をもって、雇止めされた。

Xは、Xの雇用主は実質的にはY社であり、Y社との間で黙示の労働契約が期間の定めのないものとして成立していたものであり、雇止めの実質的主体もY社であるところ、Y社によるXの雇止めは解雇権の濫用であって解雇権の濫用であって解雇は無効であるとして、Y社に対して雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認等を求めた。

【裁判所の判断】

Y社との黙示の雇用契約の成立は否定

Y社に対して信義則違反の不法行為に対する慰謝料として100万円の支払いを命じた

【判例のポイント】

1 XのY社における就労は、A社を雇用主としていた当初は、偽装請負にあったが実態は労働者派遣であったものであり、仮に、Xの従事する業務が専門26業務にあたらないとした場合には、労働者派遣法上の派遣受入可能期間の制限に違反するという違法なものとなるけれども、本件全証拠を総合しても、XとY社との間に黙示の雇用契約が成立するといえる事情は、いまだ認めるに足りないというべきである

2 XとY社との間に黙示の雇用契約の成立が認められないのは、前記のとおりであり、Xが、B社から雇止めにされたことについて、Y社に対し、雇用主であることを前提として解雇権の濫用であるとして法的責任を問うことは認められないというべきである。

3 Xは、平成16年8月に就業を開始して以降、複雑で高度に専門的な業務に習熟を重ね、作業標準書を作成し、それがマニュアルとして用いられるまでになり、当該業務の担当者としては、Y社の正社員を含め、自己に代わる人材が他にいないほどの重要な人材になり、Y社における上司からも厚い信頼を得て、頼りにされていたことや、・・・雇用の継続に配慮してくれており、自己に関して、これまで一度としてY社が近い将来におけて派遣を終了させる意向を有しているといったことを示唆されるようなことがなかったことなどから、Y社への派遣が近い将来打切りになるとは予想もしておらず、B社との間で平成20年11月に雇用期間を平成21年3月末までとする雇用契約を締結した際においてもまさか同日をもってY社への派遣が終了し、雇止めになることがあるということは思いもよらず、Xは、同年4月以降も当然派遣が継続すると考え、勤務に励んでいた。
それにもかかわらず、Xは、平成20年12月、上司から、他の部署から移籍してきた正社員に対し、Xが休んだときに困るのでXが行っている業務内容のすべてを教えるように指示され、Xがその指示に従って、自己がそれまでの勤務で培った知識、経験、ノウハウのすべてをその正社員に伝授し、自己の代わりが務まる人材として育成したところ、更新期間のわずか1か月前になって、突然あたかも騙し討ちのようにXを狙い撃ちにして派遣打切りを通告され、派遣元から解雇されるに至ったものであること、・・・が認められるのであり、かかるY社のXに対する仕打ちは、いかにY社が法的に雇用主の立場にないとはいえ、著しく信義にもとるものであり、ただでさえ不安定な地位にある派遣労働者としての勤労生活を著しく脅かすものであって、派遣先として信義則違反の不法行為が成立というべきである

4 なるほど、労働者派遣においては、派遣元が雇用主として派遣労働者に対して雇用契約上の契約責任を負うものであり、派遣先においては派遣労働者に対して契約上の責任を負うものではないけれども、派遣労働者を受け入れ、就労させるにおいては、労働者派遣法上の規制を遵守するとともに、その指揮命令の下に労働させることにより形成される社会的接触関係に基づいて派遣労働者に対し信義誠実の原則に則って対応すべき条理上の義務があるというべきであり、ただでさえ雇用の継続性において不安定な地位に置かれている派遣労働者に対し、その勤労生活を著しく脅かすような著しく信義にもとる行為が認められるときには、不法行為責任を負うと解するのが相当である

5 しかして、Xは、Y社の派遣先としての上記信義則違反の不法行為により、派遣労働者としての勤労生活を著しく脅かされ、多大な精神的苦痛を被ったことが認められるところ、かかる精神的苦痛を慰藉するには、100万円が相当である。

派遣先会社との黙示の雇用契約の成否に関しては、従前通り、否定されてました。

これに対して、派遣先会社の派遣労働者に対する不法行為責任は肯定されました。

派遣先会社の不法行為責任は、黙示の雇用契約の成否に比べて、認められやすい傾向にあります。

派遣労働者側とすれば、派遣先会社の不法行為責任追及の際に、大変参考になる裁判例です。

派遣元会社も派遣先会社も、対応に困った場合には速やかに顧問弁護士に相談することをおすすめします。

本の紹介15 「正しいこと」をする技術(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は、本の紹介です。
超一流弁護士が教える 「正しいこと」をする技術―コンプライアンス思考で、最短ルートで成功する
超一流弁護士が教える 「正しいこと」をする技術―コンプライアンス思考で、最短ルートで成功する

「超一流」の弁護士が書いた本です。

単なるマニュアル本ではありません。 

この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

良質なサービスの提供をないがしろにしていると、最終的には必ずといってよいほど法令違反が起きます。サービスとコンプライアンス、この2つはものすごく密接な関係があることに気づきましょう。」(52頁)

一見、サービスとコンプライアンスは関連性があまりないように思えるのですが、そうではないのですよ、ということです。

また、「法律に違反してるかしてないかという話ではなく、消費者との信頼関係を破ったか破ってないかが重要」(49頁)とも言います。 これもサービスの話ですね。

「顧客の信頼を裏切らない」というのは、どの仕事にもあてはまります。

自分の利益の追求だけでは、いい仕事はできません。

私の目標は、他の弁護士の追随を許さない程の圧倒的なサービスを提供していくことです。

まだまだ目標達成には程遠いですが、5年以内に達成することを目標とします。