賃金37(リンク・ワン事件)

おはようございます。

さて、今日は、賞与の支給日在籍要件に関する裁判例を見てみましょう。

リンク・ワン事件(東京地裁平成23年2月23日・労判1031号91頁)

【事案の概要】

Xは、平成18年4月、Y社に正社員として採用され、平成20年4月、自己都合により退職した。

Xの入社当時、Y社の旧給与規程には、給与は年俸制度を採用すること等が定められていた。

Y社は、平成19年6月、旧給与規程を変更し、変更後の新給与規程をY社の社内イントラネット上に掲示した。

Xは、Y社の賞与支給日以前に退職していたため、賞与を支給されなかった。

Xは、Y社に対し、賞与の請求を求めて提訴した。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件支給日在籍要件は、Xに対する本件給与改定通知書に記載があるところ、労働者と使用者が合意した場合には、労働条件を変更することができるから(労働契約法8条)、まず、Xが本件支給日在籍要件に同意したといえるかが問題となる。

2 Xは、平成19年6月ころ、Y社から、本件支給日在籍要件が記載された本件給与改定通知書を示された上で説明を受け、同通知書に署名したのであり、Xは、本件支給日在籍要件を含む、本件給与改定通知書に記載された労働条件に同意したと認めるのが相当である。

3 Xは、新給与規程が周知されておらず、意見聴取や届出もなされていないから、新給与規程には拘束されず、旧給与規程の適用を受けることになることを前提に、本件支給日在籍要件は、旧給与規程で定める基準に達しない労働条件を定めるものであるから、無効である旨主張する。
ここで、就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とされるところ(労働契約法12条)、このような就業規則の最低基準効を発生させるには、就業規則が周知されていれば足り、従業員代表からの意見聴取や労働基準監督署長への届出がなされていることまでは必要ないというべきである。本件において、新給与規程は、平成19年6月にY社の社内イントラネット上に掲示され、従業員が見ようと思えばいつでも見ることができる状態になっていたのであるから、周知されていたと認められる。そうすると、同日時点において従業員代表からの意見聴取や労働基準監督署長への届出がなされていなかったとしても、上記最低基準効が生じるのは、新給与規程であるというべきである

4 以上によれば、本件支給日在籍要件は、XとY社の合意により有効であり、Xの請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。

一般には、賞与は支給日に在籍していないともらえません。

本件では、支給日在籍要件の問題について、給与規程の変更が絡んでいるケースです。

就業規則の最低基準効についての判断は、特に新しいものではありませんが、おさらいとしては参考になります。

それにしても、なんでこの事件、地裁でやっているんだろう・・・?

Xの請求金額は、賞与の30万円ちょっとなのに。

日頃から顧問弁護士に相談することが大切ですね。