Daily Archives: 2011年9月16日

派遣労働3(テクノプロ・エンジニアリング(派遣労働者・解雇)事件)

おはようございます。

さて、今日は、派遣会社待機社員の整理解雇に関する裁判例を見てみましょう。

テクノプロ・エンジニアリング(派遣労働者・解雇)事件(横浜地裁平成23年1月25日・労判1028号91頁)

【事案の概要】

Y社は、労働者派遣法に基づく派遣事業などを目的とする会社である。

Xは、平成8年にY社との間で派遣労働者(技術社員)として雇用契約を締結し、それ以降、17年までA社に派遣されて就労していた。その後、Xは、B社に派遣替えとなり、21年3月まで業務に従事した。

Y社は、平成21年3月の時点で待機社員494名のうち新規配属先が確保できた者および自己都合退職した者を除く合計351名に対して、整理解雇する旨の意思表示を行った。

Xは、本件整理解雇は無効であると主張し争った。

【裁判所の判断】

整理解雇は無効

【判例のポイント】

1 本件解雇は、いわゆる整理解雇に該当するところ、整理解雇は、労働者の私傷病や非違行為など労働者の責めに帰すべき事由による解雇ではなく、使用者の経営上の理由による解雇であって、その有効性については、厳格に判断するのが相当である。そして、整理解雇の有効性の判断に当たっては、人員削減の必要性、解雇回避努力、人選の合理性及び手続の相当性という4要素を考慮するのが相当であり、以下このような観点から本件解雇の有効性について検討する。

2 Y社は、平成20年5月度に経常利益が赤字に陥った以外、本件整理解雇以前の少なくとも過去数年間は一貫して黒字であり、本件整理解雇にあたってはY社における人員削減の目標を定めていたか否かも明らかでない。・・・これらの事情を総合すれば、Y社の経営状態は好ましくない方向に推移していたものと認められるものの、本件整理解雇にあたり、その時点で、Y社に切迫した人員削減の必要性があったとまでは認めるに足りない

3 Y社が本件整理解雇当時に人員削減の目標を定めていたかも明らかではなく、また、Y社は、技術社員に対する希望退職者の募集を一切行わないまま、平成21年3月末時点の待機社員の人数が494名に上るとの予測を受けて、直ちにXを含めた待機社員351名にも及ぶ本件整理解雇を実施することを決定し、その解雇通知を行っている。こうした事情によれば、人員削減の手段として整理解雇を行うことを回避するため、希望退職の募集など他の手段により本件整理解雇を回避する努力を十分に尽くしたとは認められない

本件では、整理解雇の必要性が認められないところで、勝負ありです。

整理解雇を実施する場合には、相当注意しなければ、有効にはなりません。

必ず顧問弁護士に相談の上、慎重に進めてください。