おはようございます。
さて、今日は、付加金に関する裁判例を見てみましょう。
タマ・ミルキーウェイ事件(東京高裁平成20年3月27日・労判974号90頁)
【事案の概要】
Y社は、一般貨物自動車運送事業等を目的とする会社である。
Xは、Y社の従業員として、平成16年9月まで配送運転手の勤務をしていたが、Y社に対し、未払い時間外、深夜、休日労働に係る賃金等を請求した。
一審判決において、裁判所は、Y社に対し、時間外等賃金として約50万円及び同額の付加金の支払いを命じた。
Xは、控訴した。Y社は、控訴後、Xに対し、時間外等賃金を全額支払った。
【裁判所の判断】
付加金の支払いは命じない。
【判例のポイント】
1 労基法114条の付加金支払義務は、労働者の請求により裁判所が判決でその支払を命じ、これが確定することによって初めて発生するものであるから、使用者に労基法37条等の違反があっても、既にその支払を完了し、使用者の義務違反の状況が消滅した後においては、使用者に対して付加金の支払を命ずることはできないと解すべきである。
そうすると、原判決後であるとはいえ、本件時間外等賃金を支払ったY社に対し、付加金の支払を命ずることはできないというほかない。
本件では、付加金に絞ります。
付加金に関するこのような判断は、この裁判例だけがユニークなのではありません。
最高裁こそありませんが、高裁判決でも同様の判断がなされています。
会社側とすれば、すごい金額の付加金が第1審で命じられた場合には、とりあえず控訴し、未払時間外等賃金を支払えば、付加金の支払を免れることができることになります。
当然、このような結論に対し、批判的な見解も多いです。
批判的な見解が多かろうが少なかろうが、現時点では、会社としては、控訴し、未払賃金を支払というのが鉄則ということです。
付加金を支払う前には、必ず顧問弁護士に相談しましょう。