管理監督者24(丸栄西野事件)

おはようございます。

さて、今日は、管理監督者性に関する裁判例を見てみましょう。

丸栄西野事件(大阪地裁平成20年1月11日・労判957号5頁)

【事案の概要】

Y社は、織ネーム、プリントネームの製造及び販売、美術印刷製品の製造及び販売、経営コンサルタント及び販売促進の企画、各種コンテンツ・アプリケーションの製作等を業とする会社である。

Xは、Y社に採用され、大阪本社で勤務し、企画営業グループに所属し、その後Y社を退職した。

Xは、Y社に対し、未払いの時間外手当、深夜勤務手当、休日勤務手当等及び付加金の支払を求めた。

Y社は、Xが管理監督者に該当する等と反論し争った。

【裁判所の判断】

管理監督者にはあたらない。

付加金の支払いは命じない。

【判例のポイント】

1 Y社の主張のうち、勤務時間について厳格な規制をすることが困難であることをいう点については、そもそもXの業務は時間管理が困難なものとはいえない。また、デザイナーであることが管理監督者性を基礎付けるとはいえないところ、Y社の主張する点は、Xがデザイナーであることに由来するものであって、これをもって管理監督者性を基礎づけることはできない。

2 パーティションで区切っていたために、勤務態度についての管理が困難であったことについても、Xらデザイナーが仕事に集中するためにパーティションが設置されていたものであり、自由に休憩をとったりするために設置されていたものではないことからすると、これをもって管理監督者性を基礎づけることはできない。

3 Xの待遇が、Y社の従業員の中では、相対的に上位にあることは認められる。しかしながら、月々の時間外労働の時間数に見合うほどに高額であるとはいえない。また、Xの月額賃金は、おおむね定期的にほど同額で上昇してきた結果とみられ、管理監督者としての地位に就任したことによるものとみるのは困難である。

4 ・・・以上の検討によれば、多少なりとも管理監督者性を基礎付けることのできる事情としては、Xの待遇及び採用面接を担当したことの2点が挙げられるが、これらの点を総合考慮しても、Xが(1)労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にあり、(2)労働時間、休憩、休日などに関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務と責任を有し、現実の職務が労働時間の規制になじまないような立場にあって、(3)管理監督者にふさわしい待遇がなされているとは認められないので、Xが管理監督者であると認めることはできない。

5 Xは、Y社における時間外手当不払いがY社の体質に由来する根深いものであるから、付加金の支払を命じるべきである旨主張する。
・・・しかしながら、ともかくもタイムカードや勤怠管理表のほとんどはY社より証拠として提出されていること、Xの勤務態度等についてY社から具体的な主張や立証がなされているわけではないこと、Y社側は和解による解決を最後まで模索していたこと等の点からすると、付加金については、これの支払いを命じないのが相当であると判断した

やはり、会社側の対応の難しさを感じます。

「だってしょうがないじゃないかー」という会社の声が聞こえてきそうです。

でも仕方ありません。 裁判所としてはこのように判断するんでしょうね。

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。