おはようございます。
さて、今日は管理監督者性に関する裁判例を見てみましょう。
ゲートウェイ21事件(東京地裁平成20年9月30日・労判977号74頁)
【事案の概要】
Y社は留学・海外生活体験商品の企画、開発、販売等を業とする会社である。
Xは、Y社に勤務し、銀座支店の支店長であり、Y社社内では、シニアブランチマネージャー(SBM、部長相当、非役員では最高等級)の地位にあり、営業を担当していた。
Xは、Y社を退職後、Y社に対し、未払時間外手当等の請求をした。
【裁判所の判断】
管理監督者には当たらない
付加金として、請求認容額とほぼ同額を認めた
【判例のポイント】
1 Y社は、Xに勤務上の広い裁量があり、Xに残業を命じる立場の者はいないので、残業命令がないところを自らの意思で残業したにすぎないと主張する。
しかし、Y社代表者は、午前10時ころのみならず、遅い時刻にもメールや電話で、Xらに、営業成績の報告等をするよう、強く求めていたことが認められる。Xの地位からすれば、具体的に何日の何時まで残業せよという命令が出ることはないと考えられる。けれども、Y社では、全社的に営業成績(ノルマ)の達成を強く義務づけ、従業員一般に対して、これを達成するよう叱咤激励を繰り返したことが認められるところ、その達成には所定労働時間内の勤務では不十分であることは明らかであるから、Xに対して残業命令が出ていないという理由により、Y社が時間外手当の支払を免れることはないというべきである。
2 管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理につき、経営者と一体的な立場にあるものをいい、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきであると解される。具体的には、(1)職務内容が、少なくともある部門全体の統括的な立場にあること、(2)部下に対する労務管理上の決定権等につき、一定の裁量権を有しており、待遇において、時間外手当が支給されないことを十分に補っていること、(4)自己の出退勤について、自ら決定し得る権限があること、以上の要件を満たすことを要すると解すべきである。
3 Xの職務内容は、部門の統括的な立場にあり、部下に対する労務管理上の決定権等はあるが、それは小さなものにすぎないといえる。また、時間外手当が支給されないことを十分に補うだけの待遇を受けておらず、出退勤についての自由も大きなものではないといえる。これを総合すれば、Xは、経営者との一体的な立場にあり、労働時間等の枠を超えて事業活動することを要請されるような地位とそれに見合った処遇にある者とはいえず、労働時間等に関する規定の適用を除外されることが適切であるとはいうことができない。したがって、Xは管理監督者には当たらないというべきであるから、Y社はXの時間外労働に対する手当の支払を免れられないというべきである。
4 本件において、Y社は、X1に対し時間外手当を支払わず、本件訴訟提起後も、X1の時間外労働自体を争うなどし、弁論の全趣旨によれば、逆に損害賠償訴訟を提起するという態度をとるなど、時間外手当を支払う姿勢が見られないから、付加金の支払いを命ずるのが相当である。なお、時間外手当の総額は、386万8621円と認められるが、請求の趣旨の範囲内(370万1571円)で認容する。
この裁判例は、とても参考になります。
特に、判例のポイント1は、労働者側にとって非常に参考になります。
ノルマの達成が強く義務づけられていたという事実を裁判所は重く評価しています。
付加金に関する裁判所の判断は、会社にとっては、痛いところです。ただ、やむを得ないといった感じでしょうか。
管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。