不当労働行為20(JR東日本(千葉動労・安全運転闘争)事件)

おはようございます。

さて、今日は、懲戒処分と不当労働行為に関する裁判例を見てみましょう。

JR東日本(千葉動労・安全運転闘争)事件(中労委平成23年4月20日・労判1026号181頁)

【事案の概要】

Y社は、鉄道事業法等の法令に従い、列車運転速度表および運行図表を定めるとともに運転作業要領等の各種規程を設けて、これらを運転士全員に配布し、列車を利用する乗客に対して駅での列車の発着時刻を列車時刻表として公表している。

X組合は、運転保安確立を求めて平成18年3月、千葉支社管内の全線区で列車の最高速度を制限する安全運転闘争を行った。

これに対し、Y社は、組合所属の運転士の乗務する列車に管理者を添乗させて運転状況を確認した。その結果、乗務区間において1分以上の遅れが生じた列車は15本、関与した運転士はAら12名の組合員であった。

Y社は、安全運転闘争を決定・指示した組合本部役員であるBら6名を戒告処分に、また、安全運転闘争に参加したAら組合員12名を厳重注意処分に付した。

【労働委員会の判断】

戒告処分、厳重注意処分は、不当労働行為にはあたらない。

【命令のポイント】

1 本件争議行為は、意図的に会社における列車の定時運行体制に支障を生じさせるものであり、単に不完全な労務提供や労務の一部のみの提供という消極的態様にとどまるものではない。また、本件争議行為への会社の対応に照らすと、本件において会社が組合員らの就労を受け入れたからといって、本件争議行為を容認したとか、これが正当性を有するということにはならない。さらに、本件争議行為は、乗務員等の連携作業を乱すものであり、その結果として、列車事故等を招来しかねないという内在的危険性を有するものである。

2 以上のとおりであるから、本件争議行為は、いわゆる怠業という範疇を超えたものであり、争議行為として正当性の範囲を逸脱するといわざるを得ない。したがって、本件争議行為は労働組合の行為として正当性を有しないものである

3 ・・・そうすると、Bら6名に対する戒告処分については、その根拠や処分の程度等において相当性が認められ、また、上記各処分に当たって、会社がことさら組合員を萎縮させることにより、組合の弱体化を企図したとする事情はうかがえないから、労働組合法7条3号の支配介入に当たるとすることもできない。

4 したがって、Aら12名に対する厳重注意処分は、労働組合法7条3号の支配介入には当たらない。

本件では、組合員による争議行為が正当ではないと判断されたため、戒告処分等については、不当労働行為性が否定されています。

「安全運転闘争」により、かえって危険運転となってしまうと判断されたわけです。

皮肉なものです。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。