おはようございます。
さて、今日は、配置転換と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。
JR西日本(和歌山・転勤)事件(和歌山県労委平成23年4月6日・労判1027号95頁)
【事案の概要】
Y社は和歌山支社の和歌山列車区は運転業務および車掌業務を担当する現業機関であり、橋本運転区は運転業務を担当する現業機関である。
平成21年5月、Y社は、和歌山列車区の運転士であるXに対し、橋本運転区へ配置転換する旨の通知を、6月、本件転勤を発令した。
Xは、JR西日本労働組合関西地域本部およびその下部組織である和歌山地方本部ならびに和歌山分会の組合役職を歴任した。
Xは、本件配置転換は、不当労働行為であると主張し争った。
【労働委員会の判断】
不当労働行為にはあたらない。
【判例のポイント】
1 Xの通勤時間は片道約1時間50分となったから、この通勤時間を短いとは言えないし、Xの組合活動従事可能時間の減少もあるから、本件転勤がXにとって不利益であるとは言えるものの、それらはいずれも和歌山列車区から橋本運転区への転勤という通常の転勤に伴って発生しているものであるから、本件転勤に通常の転勤を超えた不利益を認めることはできない。
2 Y社は組合に嫌悪の情を抱いており、したがって、組合が行った追悼ミサについて不快な念を持って見た可能性は否定できない上、追悼ミサとY社が本件転勤の人選を開始した時期とは符合するから、全く影響がなかったとは断定できない。しかも、本件転勤はこれまでの組合とY社の厳しい労使対立を背景に、最近まで組合の中心的な人物であったXも、転勤対象者たり得る本件転勤の対象者として充てたものと推認することもできる。
しかしながら、業務上の必要性が明確であり、転勤先が通常の転勤範囲内である本件転勤において、Xの組合活動への嫌悪の情が、Y社の行った本件転勤命令の決定的動機であったとまでは認定することはできない。
3 本件転勤が法第7条第1号の不当労働行為であると言いうるためには、本件転勤がXの組合活動に対する嫌悪を決定的な動機としたものであること、本件転勤が不利益な取扱いであることの双方を充足する必要があるが、前者については、組合活動への嫌悪が本件転勤の人選に影響しなかったわけではないにしても、それが決定的な動機であるとは言えず、後者については、本件転勤がXにもたらした不利益は通常の転勤の範囲内であり、他の転勤とは格差もない以上、不利益取扱いがあったとは評価できないから、本件転勤が法第7条第1号の不当労働行為に該当するとは判断できない。
なかなか微妙な判断ですね。
会社の組合嫌悪の情の存在を推認できるとしても、それが本件転勤命令の「決定的動機」とまではいえないという判断です。
「決定的動機」というのは、規範的概念ですので、その存在は一概には判断できません。
結局のところ、総合考慮ということになります。
今回は、「それほど大きな不利益ではない」という発想が根底にあるのだと思います。
組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。