おはようございます。
さて、今日は、昨日に引き続き、自己都合退職と会社都合解雇に関する裁判例を見てみましょう。
ダイヤモンド・ピー・アール・センター事件(東京地裁平成17年10月21日・労経速1918号25頁)
【事案の概要】
Y社は、ピーアール・パブリシティの計画及び実施等を目的とする会社であり、Aは、同社代表取締役である。
Xは、平成12年、Y社に入社し、主にグラフィックデザイナーとして、その業務に従事してきたが、平成16年5月、退職届を提出した。
Y社は、Xに対し、自己都合による退職を前提とした退職金を支給した。
Xは、Y社に対し、違法な退職勧奨を受けたことによる慰謝料請求及び退職金について会社都合による場合と自己都合による場合の差額分を請求した。
【裁判所の判断】
退職勧奨は違法。
本件退職は、会社都合の解雇に該当する。
【判例のポイント】
1 退職勧奨は、基本的に使用者が社員に自発的な退職を促すものであり、それ自体を直ちに違法ということはできないが、当該退職勧奨に合理的な理由がなく、その手段・方法も社会通念上相当といえない場合など、使用者としての地位を利用し、実質的に社員に退職を強いるものであるならば、これは違法といわざるを得ない。Aらによる退職勧奨は、女性は婚姻後、家庭に入るべきという考えによるものであり、それだけで退職を勧奨する理由になるものではないし、また、その手段・方法も、一貫して就労の継続を表明しているXに対し、その意思を直接間接に繰り返し確認し、他の社員の面前で叱責までした上、披露宴においても、Xの意に沿うものではないことを十分承知の上で自説を述べるなどし、結局、Xを退職に至らせているのであって、Aらのした退職勧奨は違法というほかない。
したがって、Y社らは、民法709条及び同715条により、Xが被った損害を賠償する義務がある。
2 XがY社を退職せざるを得なくなったのは、Aらの違法な退職勧奨によるもので、Xに本来退職の意思はなかったのであるから、これをもって、Y社の給与規定22条6号に定める「自己の都合で任意退職する場合」ということはできず、同条4号に定める「事業の都合により解雇する場合」に該当するというべきである。
よくあるケースとして、会社は、訴訟リスクを考え、解雇をできるだけせず、退職勧奨をすることが多いです。
そして、会社の退職勧奨により、従業員が退職願を提出した場合、会社は、「自己都合退職」という扱いにします。
しかし、本件のように、従業員が、会社の退職勧奨の違法性を争い、裁判所がその違法性を認定した場合には、退職理由についても当然、影響を与えることになります。
上記判例のポイント2のように、会社都合解雇と認定される場合がありますので、退職勧奨についても顧問弁護士に相談しながら適切に行う必要があります。