管理監督者21(九九プラス事件)

おはようございます。

さて、今日は、管理監督者に関する裁判例を見てみましょう。

九九プラス事件(東京地裁立川支部平成23年5月31日)

【事案の概要】

Y社は、「SHOP99」と称し、食料品、日用雑貨のほか、生鮮食品も取り扱う24時間営業のコンビニ型店舗をチェーン展開して経営する会社である。

Xは、平成18年9月、Y社との間で期限の定めのない雇用契約を締結し、社員として雇用された。Xは、平成19年6月、店長となった。

Y社では、Xは、労基法41条に定める管理監督者に当たるとして、残業代等は支払われていなかった。

Xは、Y社に対し、店長としての扱いを受けて以降の未払割増賃金及び休日割増賃金、付加金等の支払いを求めた。

【裁判所の判断】

管理監督者には該当しない。
→未払割増賃金等の支払いを命じた。

付加金は、時間外手当の5割を認めた。

【判例のポイント】

1 Xが管理監督者に該当するか否かの判断に当たっては、・・・当該労働者が職務内容、責任及び権限に照らし、労働条件の決定、その他の労務管理等の企業経営上の重要事項にどのように関与しているか、勤務態様が労働時間等の規制になじまず、また、自己の出退勤につき一般の労働者と比較して自由な裁量が認められているか、賃金等の待遇が管理監督者というにふさわしいか否かなどの点について、諸般の事情を考慮して検討すべきものと解する

2 この点、Y社は、労働者が、特定の事業所において、使用者のために、他の労働者の労務提供を確保し、又は採用・解雇等の人事管理を行う者で、その職務の内容等が労働時間等の制限になじまないものであれば、管理監督者の該当性を判断する旨主張するが、これは、事業所の規模の大小を問うことなく事業所単位で管理監督者の該当性を判断する点、当該労働者の権限の広狭等を問うことなく使用者のために労務提供の確保等を行う者であれば足りるとする点、使用者が労働者に対し労働時間等の制限になじまない内容の職務等を課せば管理監督者に該当し得るとする点、賃金等の待遇面を考慮しない点等において、上記法の趣旨に合致するものとはいえず、採用できない

3 Y社は、コンビニ型店舗をチェーン展開して経営する会社であり、X勤務当時、約700店舗の直営店を有しており、店長は、エリアマネージャーの指揮の下、そのうちの1つ(兼務している場合は複数)の店舗内の運営を任されているにすぎず、平成18年9月当時かかる立場にある店長は、少なくともY社の正社員の3分の2を占めていた
そして、Y社では、店長は採用後約4か月で社員が4日間の店長養成研修を受講し、その後、2日間の4級店長資格研修及び2日間の店長任命研修を受講すれば店長に任命されるといった短期間かつ簡易なシステムを採用しており、Xの場合、研修終了の約3か月も前に店長として勤務するなど、研修自体も重視されていない実態があった。

4 店長は、PAを採用する権限があったものの、一般社員の採用や昇格等については、何ら権限を有していなかったPAの採用等についても、店長の完全な自由裁量ではなく、時給等については、Y社によって定められた一定の制限があり、また、解雇についても、職務権限表には規定がなく、Y社において、店長にPAの解雇の権限の有無や範囲について明確な説明をしていなかった。また、店長は、シフト作成を行っていたものの、PAの勤務可能な曜日及び時間帯があらかじめ定められているため、これに沿ったシフトを作成せざるを得ず、Xの裁量にも制約があった。

5 店長は、月1回開催される店長会議やエリア会議等に出席し、その場で各店長に本社の経営方針、経営戦略等が伝達されるのみで、店長からの意見聴取や経営方針について討論する機会はほとんどなかった。

6 店長は、その出退勤につき、自由な裁量が認められているとは言い難い上、PAと同じ方法により出退勤時刻等が管理されていたのであるから、自己の出退勤につき一般の労働者と比較して自由な裁量が認められているとは認められない

7 Y社においては年俸制が採用されており、年俸制の14分の1が月例賃金として支払われていたところ、Xが店長に昇格した後、年俸56万円、月例賃金は約4万円それぞれ増額されたが、店長昇格後にXが受け取った賃金額は、店長昇格前の額を超えることはなかった

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。