おはようございます。
さて、今日は、団体交渉の打ち切りと不当労働行為に関する命令を見てみましょう。
北海道大学事件(北海道労委平成23年3月11日・労判1024号97頁)
【事案の概要】
平成21年8月、人事院は国家公務員の俸給月額の0.2%引下げ、期末・勤勉手当の0.35月分引下げ、4月時点の官民較差の12月期期末手当による減額調整などを内容とする勧告を行った。
X組合は、同年10月、Y大学に対して勧告に準拠した賃金の不利益変更を議題とする団交を申し入れ、3回にわたり団交が行われた。
団交において、Y大学は、勧告の内容を受け止めて賃金引下げの方針を決めたなどと説明し、X組合が代償措置をとるよう求めたところ、Y大学は、資料を配布し、X組合が代償措置として不十分であると指摘しても、最終案を示したとして団交の終了を宣言した。
【労働委員会の命令】
団交の打ち切りは、不当労働行為に該当する。
【命令のポイント】
1 Y大学が国立大学法人となった際に、職員の個別の給与額や適用される給与体系に変更はなく、また終始構造にも実質的には変更がなかったのであり、団体交渉におけるY大学の説明内容によって、Y大学が人事勧告の内容を受け止めて、職員の給与等を減額する方針を決めた理由が説明されていると認められる。
2 第2回団体交渉においては、大学が検討する代償措置について触れるだけで終了しており、第3回団体交渉において、Y大学は書面を交付して、代償措置について述べるものの、書面には項目のみ3点記載されているだけであり、団体交渉議事録等からも、その内容についての詳細な説明などはなされていないと認められる。
3 本件において、Y大学が提示した代償措置は、今回の不利益変更に伴う代償措置として説明しているのであり、また、団体交渉において交渉議題としているのであるから、Y大学としてもその内容などに関して具体的に説明するなど誠実に対応することが必要である。このような観点からすると、第3回団体交渉における大学の説明内容は、不十分であると認められ、組合の主張に対する説明も不足していると認められる。
4 したがって、第3回団体交渉において、Y大学が、代償措置について説明したとして団体交渉を打ち切った行為は、不誠実な交渉態度であると言わざるを得ないばかりか、組合の運営に対する支配介入に該当し、労働組合法7条2号及び3号に該当する不当労働行為である。
大学側が、団体交渉において、賃金切下げの理由については、誠実に説明していると認められています。
しかし、賃金切下げに伴う代償措置に関しては、説明が不十分であったとされました。
単に団体交渉を拒否したというのではなく、説明が不十分であったという判断です。
現場において、どの程度の説明をすれば足りるのか、判断が難しいところです。
可能な範囲で具体的に説明をする、ということしかないのではないでしょうか。
組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。