おはようございます。
さて、今日は、団交拒否と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。
間組事件(神奈川県労委平成23年3月15日・労判1024号95頁)
【事案の概要】
Xは、Y社の従業員として建設現場等で就労し、退職して9年余経過した平成20年6月、悪性胸膜中皮腫と診断され、同年9月、労基署から労災の認定を受けた。
平成21年6月、アスベスト関連組合は、Y社に対してXの組合加入を通知し、同人の就労していた建設現場のアスベスト曝露の実態、本件職業病に関する謝罪と賠償等を求めて団交を申し入れた。
Y社は、Y社と組合との間に労働契約はもとより直接、間接にも使用従属関係はないしこれに類する関係がないことを指摘し、組合が団交を求める得る根拠を具体的に示すよう求めた。
その後、Y社は、組合が団交を申し入れても、同様の回答を繰り返して団交に応じていない。
【労働委員会の判断】
団交拒否は不当労働行為に該当する。
【命令のポイント】
1 Y社は、組合の要求事項のうち、本件職業病に係るXに対する謝罪と賠償については、団体交渉の機能として一般的に認められている労働条件の取引の集合化と労使の実質的対等化の機能を有するものではなく、過去に発生した事実に起因する責任の追及に他ならず、義務的団交事項に当たらないと主張する。
2 確かに、労働条件の取引の集合化及び労使の実質的対等化は団体交渉の機能として一般的に認められている機能である。しかし、個々の組合員の権利問題等について団体交渉の議題とすることは、広く見られることであり、労働条件の取引の集合化は、義務的団交事項にあたるか否かの判断において必ずしも必要な条件であるとはいえない。また、労使の実質的対等化は、会社と組合を当事者とする団体交渉が申し入れられている以上、本件についても当然に認められる機能である。
3 さらに、謝罪と賠償は、過去に発生した事実に起因する責任の追及ではあるが、アスベスト健康被害による補償問題の解決に向けた一つの方策であるということができるから、使用者に処分可能な、組合員に関する災害補償の問題である。
よって、謝罪と賠償に関する事項は、義務的団交事項に当たる。
4 以上より、Y社は、正当な理由なく団体交渉を拒否したものであるから、労組法7条2号に該当する不当労働行為が成立する。
5 また、Y社が正当な理由なく団体交渉を拒否したことにより、Y社との団体交渉を実現させることができなかった組合は、その威信を傷つけられ、組合員に対する影響力が減じられて弱体化するおそれがある。
以上のとおりであるから、Y社が正当な理由なく団体交渉を拒否したことは、同時に、Y社が組合の運営に対して支配介入したことになるから、労組法7条3号に該当する不当労働行為も成立する。
会社としては、「義務的団交事項」にはあたらないから、団交には応じないと主張する場合があります。
しかし、この主張する場合には、「義務的団交事項」の範囲をよく検討したほうがいいです。
なかなか厳しいわけです。
組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。