おはようございます。
さて、今日は、懲戒処分及び解雇と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。
秋本製作所事件(千葉県労委平成23年3月24日・労判1024号94頁)
【事案の概要】
平成21年4月、Y社は、松戸公共職業安定所に従業員代表の記名押印のある休業協定書を添付して中小企業緊急雇用安定助成金の申請を行った。
X組合の分会長Aは、同月、千葉労働局に対して本件休業協定書の従業員代表者選出手続に不正がある旨の申告を行った。
同月、Y社は、Aに対して翌日午後1時までに本件申告を取り下げるよう業務命令を行った。しかし、Aが取り下げなかったところ、Y社は、訓戒処分に付すとともに、本件申告を取り下げるよう重ねて業務命令を行った。
しかし、Aがこれに応じなかったため、Y社は、Aに対して6月、
【労働委員会の判断】
各懲戒処分は、不当労働行為に該当する。
解雇は、不当労働行為に該当する。
【命令のポイント】
1 分会結成前及び分会結成後のこれまでの経緯からして、Y社は、Y社を批判し、公的機関を動かして法令違反を改善しようとする活動方針をとる分解を嫌悪し、とりわけ、その先頭に立つ分会長であるAに対する嫌悪感を強めていったものと推認される。
2 Xの本件申告は正当な労働組合活動であったところ、Y社は分会長であるAへ合理的理由のない懲戒処分を複数回に渡り行ったが、これらの処分は会社を批判し、公的機関への通報等によって会社の法令違反を改善させる方針をとっていた分会の労働組合活動を嫌悪したY社が、分会長として中心的に活動していたAに対して行った不利益な取り扱いであるから、労組法7条1号の不当労働行為に該当するものと判断することが相当である。
3 また、正当な労働組合活動を行ったことを理由として分会長に複数回に渡り懲戒処分を下すことは、分会の他組合員の活動を萎縮させ、また会社従業員が分会に加入することへの圧力となるものであるから、労組法7条3号の不当労働行為にも該当するものと判断する。
4 Y社が合理的理由や相当性が十分といえない解雇をAに行ったことは、従前からY社と対立するAが、分会結成後は賃金の問題を含め分会長として活発に活動していたことを嫌悪し、同人をY社から排除することを決定的動機として行われたものと判断することが相当であり、労組法7条1号の不当労働行為に当たる。
本件のような不当労働行為事案は、特に労組法に関する詳しい知識が必要とされていません。
会社の役員や現場担当者としては、組合員に対し、懲戒処分等を行う場合には、通常通り、合理的な理由が存在するかを慎重に検討すれば足りることです。
本件は、単に合理的理由なく懲戒処分や解雇をしたので、その裏返しとして、不当労働行為に該当するだけです。
普段通り、気をつければいいのです。
組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。