おはようございます。
さて、今日は、配転・人事考課の低評価と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。
誠幸会事件(神奈川県労委平成23年3月29日・労判1024号93頁)
【事案の概要】
Y社は、従業員役500名をもって特別養護老人ホーム等を運営している。
X組合は、平成19年12月の結成当時8名であったが、21年4月以降は分会長Aのみである。
平成21年4月、Aは、Y社と雇用期間を1年として、Y社の運営する施設、事業いずれに配属されても異議はない旨の条項を含む準職員有期雇用契約を締結した。
同年10月、Y社は、入職以来介護職として就労してきたAに対し、新設の下飯田事務所を勤務地とし、入居者やデイサービス利用者を確保するための営業を内容とする介護事業促進業務職に配置転換した。
Y社は、Aに対し、平成21年7月に同年上期の、12月に同年下期の期末手当の人事考課の評価を低くし、それぞれ19年同期より10万円減じて支給した。
Xは、本件配転及び人事考課の低評価は不当労働行為であると主張し争った。
【労働委員会の判断】
配転・人事考課ともに不当労働行為に該当する
【命令のポイント】
1 Y社が21年度人事考課において、A分会長をD評価としたことに対し、県央ユニオンらは上記評価の撤回を要求をしていること、また、同人が上記評価の撤回を実現するために横浜西労基署へ労働基準法違反の申告をしていること、同署の労働基準監督官からY社に労働基準法に抵触するおそれがある旨の説明があった直後にY社が21年10月配置転換を表明し、更に従わなければ解雇するという警告を発していることからすると、Y社が県央ユニオンらの組合活動とAを快く思っていなかったことが窺われる。
2 Y社は、A分会長が就労時間外に使用者の施設外で労働条件等に関するビラを配布したことや労働条件の遵守に係る理事長の態度を批判したことを評価の対象としており、本来職務遂行能力や就業時間中における勤務態度、仕事に対する姿勢等を対象に実施すべき人事考課において上記のごとき組合活動を対象とすることは、制度の運用上、適正なものとはいえない。
3 本件各配置転換及び本件各人事考課は、A分会長の正当な組合活動を理由に同人に対して不利益な取扱いを行ったものとして不当労働行為性が推認されるところ、上記取扱いに合理性は認められず、また、分会の運営に影響を及ぼす支配介入でもあることから、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であると判断する。
結論は妥当だと考えます。
Y社が配転を行った時期が、労基署への申告と近接していたことが認定に影響を与えています。
また、人事考課の根拠についても、参考になります。
顧問弁護士に一言相談があれば、「社長、それは不当労働行為と認定される可能性が高いですよ」とアドバイスできたと思いますが。