おはようございます。
今日は、終日、事務所で仕事をする予定です。 途中、接見に行ってきます。
今日も一日がんばります!!
さて、組合員参加型団体交渉(大衆交渉)の拒否と不当労働行為に関する裁判例を見てみましょう。
函館厚生院事件(東京地裁平成20年3月26日・労判969号77頁)
【事案の概要】
Y社は、社会福祉法人であり、函館中央病院を設置・運営している。
X組合は、Y社の従業員によって結成され、組合員数は605名である。
X組合は、平成16年3月、5月、7月、北海道地方労働委員会に対し、(1)X組合が、団体交渉手続の変更、労働協約の解約、就業規則の変更について団体交渉を申し入れたにもかかわらず、Y社がこれを拒否したこと、(2)Y社が、上記団体交渉に応じないまま、労働協約を解約し、就業規則を変更したこと、(3)Y社が、平成16年1月の労使協議会において、X組合に対し、労使協議会の設置目的を逸脱した対応をしたこと、(4)Y社が、X組合に対し、春闘時の組合旗掲揚及び腕章の着用等を許可しなかったこと、(5)X組合が、平成16年度春闘要求について団体交渉を申し入れたにもかかわらず、Y社がこれを拒否したこと、(6)Y社が、X組合に対し、定期昇給等を求める署名活動に抗議し、その中止を求めたこと、がそれぞれ不当労働行為に当たるとして、救済を申し立てた。
道労委及び中労委は、いずれも、一部について不当労働行為にあたると判断したため、Y社は、行政訴訟を提起した。
【裁判所の判断】
請求棄却(不当労働行為にあたる)
【判例のポイント】
1 団体交渉とは、労働組合と使用者又は使用者団体が自ら選出した代表者(交渉担当者)を通じて労働協約の締結を目的として行う統一的交渉のことであるから、使用者は、労働組合から交渉担当者以外に多数の組合員が参加する方式の団体交渉を申し入れられた場合には、原則として、交渉体制が労働組合に整っていないことを理由として、交渉体制が整うまでの間団体交渉を拒否することができるというべきである。
2 しかし、団体交渉が労使間の話合いであるという性質上、団体交渉においては、労使間の自由な意思(私的自治)ができる限り尊重されるべきであるから、交渉の日時、場所、出席者等の団体交渉手続について、労働協約に定めがある場合はもちろん、そうでなくても労使間において労使慣行が成立している場合には、当該労使慣行は労使間の一種の自主的ルールとして尊重されるべきであり、労使双方は、労働協約又は労使慣行に基づく団体交渉手続に従って団体交渉を行わなければならないというべきである。
3 組合員参加型団体交渉は、相当長期間にわたって反復継続して行われたものとして、労使慣行となっていたというべきであるから、Y社は、参加人から労働条件等の義務的団体交渉事項について組合員参加型団体交渉の申入れがあった場合には、正当な理由がない限り、これに応じなければならないというべきである。
4 Y社は、平成15年12月、参加人から組合員参加型団体交渉手続の変更等について組合員参加型団体交渉の申入れを受けたにもかかわらず、これに応じない旨回答し、その後も組合員参加型団体交渉に応じなかったのであるから、かかるY社の対応は、労組法7条2号の団体交渉拒否に当たるというべきである。
原則論について、上記判例のポイント1で述べられています。
原則論は、菅野先生の「労働法」(第9版)559頁が採用されています。
しかし、本件では、労使慣行により、例外が肯定された事案です。
本件では、労使慣行があったと認定されていますが、判決理由を読む限り、労使慣行が存在したかどうかは微妙なところです。
いろんな方法で団体交渉をしており、必ずしも大衆交渉ばかりであったとはいえません。
会社側の教訓としては、最初から適切な対応をしておくべきであり、合理的理由のない譲歩は慎むべきであるということです。
組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。