おはようございます。
今日も一日がんばります!!
さて、今日は、継続雇用制度による再雇用と雇止めに関する裁判例を見てみましょう。
エフプロダクト事件(京都地裁平成22年11月26日・労判1022号35頁)
【事案の概要】
Y社は、百貨店を主要取引先としてマネキンの貸出しや百貨店における内装展示等を主力業務とするA社の子会社として、マネキンの製造・メンテナンス、内装展示のための陳列器具の商品管理および物流業務等を業とする会社である。
Xは、Y社の西営業所において、商品管理業務、マネキンメンテナンスとそれに付随する業務を担当し、労働組合の委員長をしていた。
Y社は、平成20年2月、再雇用制度に関する就業規則を制定した。
Xは、平成20年6月、60歳の誕生日をもって、Y社を退職し、翌日付で、平成21年6月を再雇用期限として再雇用された。
その際に作成された契約書には、「業務量の減少等により契約の必要がなくなったとき」や「会社の経営の都合で人員削減の必要上やむを得ないとき」には、契約を更新せず、契約の終了とする旨が記載されていた。
Y社は、平成21年3月、Xに対し、「業績不振のため」を理由として、同年6月をもってXとの雇用契約を期間満了により終了させる旨の雇用契約満了予告通知をした。
Xは、本件雇止めは無効であると主張し争った。
【裁判所の判断】
雇止めは無効
【判例のポイント】
1 Y社は、就業規則41条4項が「再雇用に関する労働条件等については、個別に定める労働契約(労働条件通知書)によるものとする。」とし、本件再雇用の契約書13条で会社の経営上の理由により契約更新が行われない場合を規程していることから、Xが主張するような定年後の継続雇用に対する合理的期待が生じる余地はない旨主張する。
2 しかし、就業規則41条1項、4項を素直に読むと、4項のいう「労働条件等」とは、賃金や労働時間等、雇用の継続を前提とした労働条件等を意味するわけではないと解される。したがって、上記契約書13条の規定は、就業規則に違反し、無効である(労働契約法12条)。
3 就業規則で、再雇用に関し、一定の基準を満たす者については「再雇用する。」と明記され、期間は1年毎ではあるが同じ基準により反復更新するとされ、その後締結された本件協定でも、就業規則の内容が踏襲されている。そして、現にXは上記再雇用の基準を満たす者として再雇用されていたのであるから、64歳に達するまで雇用が継続されるとの合理的期待があったものということができる。
4 ・・・本件再雇用契約の実質は、期間の定めのない雇用契約に類似するものであって、このような雇用契約を使用者が有効に終了させるためには、解雇事由に該当することのほかに、それが解雇権の濫用に当たらないことが必要であると解される。したがって、本件雇止めには、解雇権濫用法理の類推適用があるとするのが相当である。
5 本件雇止めが整理解雇の要件を満たすかどうかを検討する必要があるところ、整理解雇については、人員整理の必要性があったか、解雇を回避する努力がなされたか、被解雇者の選定基準に合理性があるか、労働者や労働組合に対する説明・協議が誠実になされたかという点を総合的に考慮して判断するのが相当である。
6 ・・・昨今の百貨店各店の業績からすると、Xを雇止めにした平成21年6月時点において、Y社における今後の売上高の上昇が期待できる見込みに乏しく、人員を削減すべき必要性を認めることができる。
7 ・・・平成21年4月には、親会社に移籍する予定とはいえ新規に大学卒を採用している。そして、Y社において一時帰休を実施したのは平成21年7月、希望退職を募集したのは同年12月であって、こうした経緯からすると、Y社において、本件雇止め以前にそれを回避すべき努力義務を尽くしたということはできない。
8 以上の検討からすると、本件雇止めについて、整理解雇の要件を満たしていると認めることはできず、Y社の業績不振を理由とする本件雇止めは、解雇権の濫用に当たり無効である。
本件は、雇止めが整理解雇として行われた事案です。
このような場合、雇止めであっても、整理解雇の要件を満たしていなければ、無効となります。
解雇回避努力について、厳しく判断されますので、新規採用等の矛盾した行動はやめましょう。
有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。
事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。