おはようございます。
さて、今日は、定年後再雇用と不利益取扱いに関する命令を見てみましょう。
リコー事件(東京都労委平成22年12月7日・労判1018号96頁)
【事案の概要】
Y社は、事務機器の製造販売を営む会社である。
Y社は、定年退職者の再雇用に関する基準を改定することとし、労使協定を締結し、就業規則も改定した。
この再雇用基準では、(1)定年前の3年間の出勤率が平均で95%以上あること、(2)業務を遂行するうえで支障がない健康状態であると会社産業医が判断すること、(3)就業規則の「懲戒事由および区分」の各号に定められている行為によって懲戒処分を受けていないこと、あるいは服務規律違反を繰り返していないこと、(4)組織活動を円滑に遂行することができる協調性があることとされていた。
組合員であるXは、Y社の従業員であるところ、平成17年4月、配転をめぐり上司とあつれきが生じ、無断外出等を理由にけん責処分を受けた。
平成20年8月、Xは定年退職したが、Y社は、Xにけん責処分歴があることなどを理由に再雇用しなかった。
Xは、Y社がXを再雇用しなかったのは、不利益取扱いにあたると主張し争った。
【労働委員会の判断】
Xを再雇用しなかったことは不当労働行為にはあたらない。
【命令のポイント】
1 Xがけん責処分を受けたのは、同人の組合加入がY社に通知された日より半年以上前であるから、けん責処分自体が不当労働行為に当たらないことは明らかである。
2 Xが平成20年8月の定年退職後、再雇用されなかったのは、再雇用基準では少なくとも懲戒処分されなかったのは、再雇用基準では少なくとも懲戒処分を受けていないことが要件となっていたのに対し、同人は平成17年11月にけん責処分を受けていたことによるものである。また、会社が懲戒処分歴のある従業員を再雇用した例はない。
3 したがって、他の特段の事情がない限り、Xが再雇用されなかったことをもって、組合員であることを理由に差別した不当労働行為であると認めることはできない。
結論は妥当だと思います。
継続雇用制度について、不当労働行為という視点から争われたもので、参考になりますが、事案としては、不当労働行為にあたるようなケースではありません。
組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。