おはようございます。
さて、今日は、不当労働行為に関する救済命令を見てみましょう。
萬世閣事件(北海道労委平成23年1月14日・労判1020号94頁)
【事案の概要】
Y社は、洞爺湖萬世閣、登別萬世閣等のホテルを経営しており、その従業員は544名である。
平成20年12月、Y社の従業員らは、X組合の結成大会を開催し、Aを執行委員長に選出した。
Aは、登別萬世閣の調理長を補佐する顧問職を命じられていた。
X組合はY社に団体交渉を申し入れた。
Y社は、登別萬世閣において就業規則変更のための従業員代表者選出手続の社員集会を開催した。
集会後、Y社が代表者から意見聴取を行っていたところ、Aが「ちゃんと確かめないでサインをしないのはいいのか」などと発言したため、Y社常務は、「意見があるなら、さっき質疑応答の機会に言えばよかったのではないか」と述べ、Y社社長は、「どのように思おうと自由であるが、正式な手続を踏んでいるのだから、手続を妨害するんじゃない」と発言した。
平成21年4月、Y社は、Aに対して、「顧問職というのは社長との信頼関係の上に成り立っているわけで、今、社長解任を訴えているAさんとはこの信頼関係が成り立たない。故に顧問職を解任します」と通告した。
【労働委員会の判断】
Aを調理長顧問解任により降格したことは不当労働行為にあたる。
社長らのAに対する発言は不当労働行為にあたらない。
【命令のポイント】
1 Y社側の発言が行われたのが、労働組合結成から間もない時期であるという状況を考慮しても、常務、社長の発言それ自体を、組合への威嚇ないし組合蔑視の発言と認めることはできず、法第7条第3号の不当労働行為には該当しない。
2 Aの顧問職は、直接的な人事権を持たず経営上の機密を扱うものでもないから、組合に加入して、組合活動を行うこと自体は、顧問職の立場と矛盾しない。したがって、組合対策をすべきところを行わなかったから信頼関係が破壊されたとするY社の主張は理由にならない。
3 以上からすると、降格には相当な理由が認められず、会社の組合嫌悪の意思も顕著であり、Aが組合の執行委員長である立場に鑑みると、Aの降格は、法第7条第1号の組合活動を故とする不利益取扱いに当たり、同時に法第7条第3号の組合への支配介入に当たる。
妥当な結論だと思います。
法的な対策が必要なところを感情的な対策をとってしまったために、このような結論になってしまったのだと思います。
組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。