Daily Archives: 2011年5月14日

有期労働契約19(ノースアジア大学(仮処分)事件)

おはようございます。

さて、今日は、雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

ノースアジア大学(仮処分)事件(秋田地裁平成22年10月7日・労判1021号57頁)

【事案の概要】

Xは、平成15年4月、Y大学の専任講師として、期間の定めのない雇用契約により採用され、その後、准教授となった。

Y大学は、平成19年3月、「大学の教員等の任期に関する法律」に基づき、専任教員の任期に関する規程を制定し、専任の全教員に任期制を導入した。

これに伴い、XとY大学との間では、任期2年の任期制雇用契約が締結された。

ところが、Xは、平成21年11月、懲戒処分となり、准教授から講師に降格され、基本給も減額された。

平成22年2月、Xは、Y大学から本件雇用契約が同年3月末をもって終了する旨の通告を受けた。

Xは、本件更新拒絶が不当な雇止めにあたり、無効であると主張し争った。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

【判例のポイント】

1 使用者と労働者の間で締結された期間の定めのある雇用契約が、期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態になったといえない場合であっても、当該契約で定められた期間の満了後にも継続して雇用されるとの労働者の期待に合理的な理由がある場合には、解雇権濫用法理が類推適用され、使用者による雇止めに合理的な理由がない場合には、当該契約の期間満了後における使用者と労働者の間の法律関係は、従前の労働契約が更新されたのと同様の関係になると解すべきである。

2 ・・・結局のところ、任期法は、各大学が規則を定めることによって、その実情に合わせた任期制の導入を可能としていると解するべきであって、Y大学が主張するように、任期法に基づく任期制教員について一律に解雇件濫用法理が類推適用されないということはできない。

3 Xは、当初期間の定めのない労働契約を締結しており、その職務内容も専任教員としてY大学の常用的な職務を行っていたことからすれば、XとY大学との間の労働契約は長期間の継続を予定していたものであって、Xが任期制教員となったとはいえ、職務の重要性は増加しており、通算約7年間雇用が継続し、任期制導入後も1度更新されていることなどにかんがみると、Xが任期付き教員となったことによって、即座に両社の関係が長期的な雇用継続を予定しないものになったとはいえない

4 任期制規程を総合考慮すれば、Xが任期制の下でも雇用継続の期待を有することには一定の合理性がある。

5 Y大学が任期制導入に際して行った説明は極めて簡単で、任期制雇用契約書の提出期限が1週間にも満たなかったことなどからすると、Xが大学教員であることを考慮しても、従前の雇用契約から任期制に切り替わることによる不利益を十分に認識して任期制雇用契約を締結したということはできない

6 再任用を希望した教員が再任用されずに任期満了となった例は必ずしも多くなく、また、再任用の可否の判断においては、任期制導入前の状況との継続性が考慮されていたことを併せ考えれば、Y大学における再任用の運用は任期制導入前からの継続教員について配慮したものであったといえる

7 再任用の可否は、職名ごとに任期制規程で定められた最長年限までの期間を全体的に考慮した上で決定されており、雇用の継続性を推測させる一要素となるなどとして、Xには、本件雇用契約における任期の満了後にも雇用が継続するという合理的な期待が存在したというべきであり、本件更新拒絶には解雇権濫用法理が類推適用されると認められる。

8 平成21年度において、Xの評価が大きく下がったのは、本件アンケート送付とこれに伴う本件懲戒処分が多分に影響したものと推認されるところ、準教授からの降格と減給という本件懲戒処分は重きに失するといえ、相当性を欠くものということができる。

非常にマニアックな論点ですが、知っておくとよいです。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。