労災43(富士通事件)

おはようございます

今日は、午前中は、裁判が1件入っているだけです。

午後は、掛川に移動し、離婚調停をし、夕方、事務所で1件打合せです

夜は、中・高の同級生であり、現在、税理士をしているH君と会食です

学生時代の友人と一緒に仕事ができるのは、本当に嬉しいことです。

多くの仲間が各方面でがんばっているので、僕も負けてられません

今日も一日がんばります!!

さて、今日は、いじめによる精神障害罹患に関する裁判例を見てみましょう。

富士通事件(大阪地裁平成22年6月23日・労判1019号75頁)

【事案の概要】

Xは、大学卒業後、Y社に入社した。

Xの職務内容は、主にパソコン操作の講師等を行う業務に従事し、顧客先に訪問してパソコン操作の講習を行うほか、社内でのインストラクター業務にも従事してきた。

Xは、自己の仕事の幅を広げようと考えて営業部の部内勉強会に参加した際、部内の全員が参加していたのに、同僚の女性社員から「あなたが参加して何の意味があるの」等と文句を言われた。

京都国際会議場で開催された会場の受付を担当した際、同じく受付支援にきていた京都支社の社員から悪口を言われたり、いやがらせをされる等のいじめにあった。

社内の女性社員らの間で、Xに対する陰口がIPメッセンジャーを利用して行き交い、同社員らはメッセージ授受の直後にお互いに目配せをして冷笑するなどしたことから、Xは、上記IPメッセンジャーによる女性社員ら間の悪口について認識していた。

Xは、Y社を休職し、病院を受診して自律神経失調症との診断を受け、精神科の専門医から「不安障害、うつ状態」との診断を受けた。

Xは、平成17年6月、「休職期間満了により、解雇する」旨の辞令を受けた。

【裁判所の判断】

京都下労働基準監督署長がした療養補償給付を支給しない旨の処分を取り消す。
→業務起因性肯定。

【判例のポイント】

1 業務と精神障害の発症・増悪との間に相当因果関係が認められるための要件であるが、「ストレス-脆弱性」理論を踏まえると、ストレスと個体側の反応性、脆弱性を総合考慮し、業務による心理的負荷が社会通念上、客観的にみて、精神障害を発症させる程度に過重であるといえることが必要とするのが相当である。

2 そこで、如何なる場合に業務と精神障害の発症・増悪との間で相当因果関係が認められるかであるが、今日の精神医学において広く受け入れられている「ストレス-脆弱性」理論に依拠して判断するのが相当であるところ、この理論を踏まえると、業務と疾病との間の相当因果関係は、ストレスと個体側の反応性、脆弱性とを総合的に考慮し、業務による心理的負荷が、社会通念上、精神障害を発症させる程度に過重であるといえる場合には業務に内在又は随伴する危険が現実化したものとして認められるのに対し、業務による心理的負荷が、社会通念上、精神障害を発症させる程度に過重であると認められない場合は、精神障害は業務以外の心理的負荷又は個体側要因に起因するものといわざるを得ないから、それを否定することとなる。

3 Xに対するB等同僚の女性社員のいじめやいやがらせであるが、個人が個別に行ったものではなく、集団でなされたものであって、しかも、かなりの長期間、継続してなされたものであり、その態様もはなはな陰湿であった。以上のような事実を踏まえると、Xに対するいじめやいやがらせはいわゆる職場内のトラブルという類型に属する事実ではあるが、その陰湿さ及び執拗さの程度において、常軌を逸した悪質なひどいいじめ、いやがらせともいうべきものであって、それによってXが受けた心理的負荷の程度は強度であるといわざるをえない。しかも、Xに対するいじめやいやがらせについて、Y社の上司らは気づいた部分について何らかの対応を採ったわけでもなく、また、Xからその相談を受けた以降も何らかの防止策を採ったわけでもない。Xは、意を決して上司等と相談した後もY社による何らの対応ないしXに対する支援策が採られなかったため失望感を深めたことが窺われる

社内におけるいじめ、いやがらせは、一般的に立証が難しいです。

今回は、IPメッセンジャーの履歴が残っていました。

勤務時間中に何をやっているんですかね・・・。

よほど暇なんでしょうかね。

Xが会社に対し、別途、損害賠償請求をする可能性もあります。

会社としては、社員間のいじめや理不尽ないやがらせに目を光らせなければいけません。

また、当事者から相談があった場合には、迅速に適切な対応をとる必要があります。

この裁判例を教訓にしてください。

会社の社会的評価を著しく低下させることになります。

会社にとって、優秀な社員を失うことほど大きな損失はありません。