Daily Archives: 2011年4月7日

解雇38(小野リース事件)

おはようございます。

さて、今日は、幹部従業員に対する勤務態度・飲酒癖を理由とする解雇に関する最高裁判例を見てみましょう。

小野リース事件(最高裁平成22年5月25日・労判1018号5頁)

【事案の概要】

Y社は、建設機械器具の賃貸等を業とする会社である。

Xは、Y社に雇用され、営業部次長、営業部長を務めた上、平成19年5月には、統括事業部長を兼務する取締役に就任した。

Xは、Y社に雇用された当時から、糖尿病に罹患していて、アルコールの分解能力が健康な人より低く、医師から飲酒を控えるように指導されていたにもかかわらず飲酒を続けていた。そのため、Xは、酒に酔った状態で出勤したり、勤務時間中に居眠りをしたり、同行訪問、社外での打合せ等と称し、嫌がる部下を連れて温泉施設で昼間から飲酒をしたり、取引先の担当者も同席する展示会の会場でろれつが回らなくなるほど酔ってしまったりすることがあった。

Xの勤務態度や飲酒癖について、従業員や取引先からY社に対し苦情が寄せられていたが、Y社の社長は、Xに対し、飲酒を控えるよう注意し、居眠りをしていたときには社長室で寝るように言ったことはあるが、それ以上に勤務態度や飲酒癖を改めるよう注意や指導をしたことはなかった。

Xは、19年6月、取引先の担当者と打合せをする予定があったのに出勤しなかった。

社長は、Xに代わって取引先の担当者と打合せをしたが、その後、取引先の紹介元であり、Y社の大口取引先でもある会社の代表者から、Xを解雇するよう求められた。Xは、同日の夜、社長と電話で話をした際、酒に酔った状態で「(自分を)辞めさせたらどうですか。」と述べた。

社長は、Xの上記発言を退職の申し出ととらえ、退職を承認した。

Y社は、Xが自主的に退職願を提出しなかったため、Xを解雇した。

Xは、本件解雇は、違法であるとして、損害賠償請求をした。

【裁判所の判断】

請求棄却

【事案の概要】

1 本件解雇の時点において、幹部従業員であるXにみられた本件欠勤を含むこれらの勤務態度の問題点は、Y社の正常な職場機能、秩序を乱す程度のものであり、Xが自ら勤務態度を改める見込みも乏しかったとみるのが相当であるから、Xに本件規定に定める解雇事由に該当する事情があることは明らかであった。

2 そうすると、Y社がXに対し、本件欠勤を契機として本件解雇をしたことはやむを得なかったものというべきであり、懲戒処分などの解雇以外の方法を採ることなくされたとしても、本件解雇が著しく相当性を欠き、Y社に対する不法行為を構成するものということはできない。

最高裁の判断は妥当であると考えます。

ちなみに、一審、二審ともに、Xの勤務態度は普通解雇事由に該当するが、Y社が解雇理由となり得ることを警告したり、そのことを理由とする懲戒処分をすることで改善が図れるか見極めることをすべきであったにもかかわらず、これらの手段を講じることなく本件解雇をしたことから、相当性を欠くと判断し、不法行為と認めました。

できることなら、下級審が示しているような手続をとるべきだったと思います。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。